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韓国のSMAP・1990年代を代表する国民的アイドルグループ『H.O.T』について。

H.O.T』は、1996年にデビューした韓国の男性アイドルグループ。SMエンタテインメントで出した最初のアイドルグループでソテジワアイドゥルが解散した後、不在していた10代のアイドルのポジションを埋めたのが彼らである。グループ名は当時、世界的に大人気を得ていたアメリカのガール・グループの“TLC“から取ってH.O.Tと名付けられた。High-five Of Teenagersの略で「10代の勝利」という意味が込められている。日本の男性アイドルグループであるSMAPの全盛期と同時期の1996年にデビューしたため、日本のメディアでは「韓国のSMAP」と紹介されていたこともある。

テレビ番組でSMの創設者であるイ・スマンと共演するH.O.Tのメンバー(1996年)

H.O.Tは、1987年にデビューした消防車のアイドル的な部分と1992年にデビューしたソテジワアイドゥルのK-POPの部分を融合し、K-POPを歌うアイドル = K-POPアイドルという定義を完成させた存在だと言えるだろう。当時、韓国で彼らを知らない人がいないという程の人気ぶりであり、まさに日本で例えればかつての光GENJIやSMAPのようなポジションだった。音楽、メンバー構成、ファッション、活動方式、ファンクラブなどすべてが流行となり韓国歌謡界を変え、社会現象を巻き起こした。

デビュー当時、日本のテレビ番組に「韓国のSMAP」として出演したH.O.Tのメンバー(1997年)

SMの創設者であるイ・スマンは、事務所の第1号歌手だったヒョン・ジニョンが麻薬使用による検察のアルバム押収騒ぎに巻き込まれ、大きな痛手を負ってしまった。この影響を受けて多くの所属芸能人と職員が会社を退職するなど危機的状況の中でソロ歌手だったユ・ヨンジンとJ&Jなどをデビューさせたが、ブレイクできなかった。そこでイ・スマンは10代の女子中高生たちに「どんな音楽が好きか?」、「どういう歌手が好きなのか?」とアンケート調査を行ったところ、10代(同世代)の歌手+ダンス+ヒップホップ・ダンスミュージックといった意見が多く挙がった。当時、韓国でも人気を博していたアメリカの5人組ボーイ・バンド"New Kids On The Block"やソテジワアイドゥルが大人気となるなど10代の消費力が音楽市場を席巻しつつある状況に注目し、『韓国版のNew Kids On The Blockが必要だ!!』として5人組のアイドルグループを企画する。実はイ・スマンは、ヒョン・ジニョンとワワを売り出した際にボーイ・バンドのNew Edition出身だったBobby Brownを参考にしていた。そしてそのNew Editionの白人版がまさにNew Kids On The BlockでH.O.Tはこれをそのままベンチマークしたわけだ。さらにニュー・エディションとニュー・キッズ・オン・ザ・ブロックはどちらもアメリカのレコードプロデューサーであるモーリス・スターが作ったアイドルグループである。

New Kids On The BlockとH.O.Tの練習生時代のレッスン風景

SMの練習生制度は、ジャニーズ事務所のジャニーズJr.をお手本にしたと言われるがこれは間違いである。SMおよびK-POPアイドルの練習生制度は、キム・ワンソンの影響とアメリカのボーイ・バンドの練習生システムを導入したものである。まず1つ目は、1980年代を代表する女性ソロ歌手のキム・ワンソンが1983年から約3年間のトレーニング期間を設けて1986年にデビューした。イ・スマンがキム・ワンソンのマネージャーだったハン・ベクフィ(キム・ワンソンの祖母)と知り合いだった縁で「あなたの会社(SM所属)の歌手もちゃんとトレーニングをさせた方が良い」とアドバイスを受けて、SM第1号歌手のヒョン・ジニョンに約2年間のトレーニング期間を費やしてデビューさせた。そして2つ目は、アメリカやイギリスのボーイ・バンドやガール・グループの場合、レコード会社のオーディションでメンバーが選抜され、グループを結成した後、歌手デビューするまでに1~3年間程のレッスン期間とイベントやショーに出演するなどして歌手(練習生)を育成する。また国内よりも他の国で先にデビューしたり、曲をリリースしたりする例もある。K-POPアイドルの練習生制度と海外進出はこのやり方をお手本にしたものである。

アメリカのレコードプロデューサー「モーリス・スター」 / 韓国のプロデューサー「イ・スマン」
5人組のボーイズグループ / New Kids On The BlockとH.O.T

H.O.Tの総売上枚数︰約700万枚
当時の韓国では自己の音楽的アイデンティティーを反映させるのではなく、芸能プロダクション等他者がつくったコンセプトに基づいて結成され活動をする大量消費を前提としたアイドルグループというのは珍しかったが、10代の女性たちから熱狂的な人気を獲得して韓国ポップス界をアイドル中心に一変させる一大ブームを巻き起こした。

音楽番組でパフォーマンスを披露するデビュー当時のH.O.T

のちにSMP(SMミュージック・パフォーマンス)とも呼ばれる、社会問題をテーマにした歌詞にラップコア調の曲と派手なダンスを融合させた独特のスタイルを確立する一方、1998年にリリースした3集からはメンバーらが直接楽曲制作に携わり、2000年の5集ではリード曲も含め全曲の作詞・作曲・編曲を手掛けるなど、次第に他のアイドルグループとは異なる「独自性」をコンセプトとして打ち出したマーケティングにシフト転換した。H.O.Tのグループの構成は後に登場する世代のアイドルグループにも大きな影響を与え、他の第1世代の男性アイドルグループもH.O.Tの影響を受けました。

アメリカのガール・グループ「TLC」 / 韓国のガールズグループ「S.E.S」
アメリカのボーイ・バンド「Backstreet Boys」 / 韓国のボーイズグループ「SHINHWA」
韓国の女性ソロ歌手「キム・ワンソン」と「BoA」

H.O.Tの成功の後、SMエンタテインメントはH.O.Tの遣り方を応用しながらアイドル育成の芸能会社となり、多くの人気K-POPアイドルを世に送り出します。1997年にデビューしたS.E.Sは当初、「女性版H.O.T」として5人組で売り出す予定だったが、5人→4人→3人と人数が減っていき、最終的にTLCをベンチマークして3人組になった。1998年デビューのSHINHWAは、Backstreet Boysをベンチマークした「H.O.Tのアップデート版」的なグループとして6人組で結成され、歌手だけでなく個人活動やバラエティなどにも出演するなどして最長寿アイドルと呼ばれた。そして2000年デビューのBoAは、「歌って踊れる少女歌手」といった点でキム・ワンソンをベンチマークした。特に日本ではSPEED以降、Folder5やEARTHといった歌って踊れる女性ダンスグループが多く出てきたが、どのグループもブレイクできなかった。BoAはそのポジションを埋めたという評価もあり、韓国ではもちろんのこと日本でも人気を博した。

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