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【Wechat】ショートビデオチャンネルの成長:Tiktokより後発でも2年余りで急成長できた理由について

中国ではUGC(User Generated Contents。ユーザが作成するコンテンツで構成されるメディア全般)を語る際に、Wechatの右に出るものは、Tiktokができるまではいませんでした。しかし、2016年にTiktokがリリースされてから、ショートビデオの市場がどんどんとシェアを拡大していきました。そのためWechatも、2019年からWechat上に公式アカウントと類似した構成でショートビデオのチャンネル(视频号)というプロダクトがリリースされました。2年の間、激しい競争が繰り広げられ、かなりの規模まで成長してきました。今回Wechatの年に一度のカンファレンスで、Wechatを発明したプロダクトマネージャーから、その成長過程、後発者だからこそ取れた施策を説明してくれました。

プロダクト企画時の背景

文章をベースにしたWechat公式アカウント(订阅号)が2011年から存在して、年々文章の品質が高まっており、雑誌化にまで至っている。しかし、2017年Wechatチームで文章を上手にライティングできる人は少数派、ビデオ発信はWechatのモーメンツ=Timelineで投稿できるが、モーメンツは友達の領域なので、個人から大衆向けのビデオ投稿領域もWechat内で必要という意見が出た。しかしその機能追加では、ID体系にかなりの変更が発生するためプロジェクトが進行しなかった。しかし直近5年間でWechat内チャットでのビデオ送信が33倍増加し、モーメンツでのビデオ共有が10倍増加した。ショートビデオの生成、消費がかなり浸透している表れである。

次の10年は間違いなくビデオの時代となる。人類の文明における進歩を代表するものの1つに文章があるが、個人の意見表明や、消費効果を考えると、時代は明らかにビデオの方向に進んでいる。そのような中で、2019年からWechatのビデオチャネル(视频号)の開発が進んでいた。

Wechatの企業文化で流行るなら非常に大きな規模にまで変貌する。捉え方としても、会社からのタスクより、チームで挑戦的な目標を達成したいとしている。タスクはつまらない、タスクの心理で行動すると変な方向性へ進行してしまうので、チームの原動力を引き出すことが基本的な進行方法であった。

ID構成に関する思考

Wechatのビデオチャネル(视频号)は個人がコンテンツ生成のプラットフォームという位置付けである。Wechatアカウントは個人の身分証明IDとして決済ともよく連携できている。WechatアカウントはもっとSNS,IM=Instant Messageでの挙動を期待しており、もっとプライベートなものである。今回のマス(大衆)向け発信の場合は、新たなID体系が必要となる。
しかし、新しいID体系は既存の体系とうまく結合する必要がある。ユーザーの利用シナリオ次第で、このIDの位置付けが異なるため、かなり真剣に考えていた。そこで出した結論は、発信者が発進時にはWechat公式アカウントみたいに新たなIDを作成する。受信者がコメントを書くときにはWechatの個人アカウントIDを利用する。
この決断も後で正しいと証明できた。おかげで、その後Wechatにあるソーシャルグラフを活用して、レコメンドすることができた。

プロダクトの位置付け

PCが流行しておりスマホが到来する前の時代では、どの機関にもホームページ(HP)が存在していた。WechatはずっとそのHPとしての位置付けを提供し、進化し続けた。公式アカウントの時にHPとして利用して欲しい、Mini Program(1つのアプリの中に複数のプログラムが入る仕組み)でもHPとして使って欲しい。企業のHPは時代に伴って進化し続けている、Wechatもその進化に追いかけるように価値提供したいと思う。今回のWechatのビデオチャネル(视频号)もHPとしての位置付けがありつつ、Mini programとうまく連動して、価値提供したい。
私は冗談で言ったが、いつか交通機関の広告ポスターにWechatのビデオチャネル(视频号)のQRコードが載せられたら、このプロダクトが成功と言えるでしょう。

コンテンツ露出に関する思考

フェーズ1でリリースされたWechatのビデオチャネル(视频号)は下記2つの機能を提供していた。
1、ID体系の構築(Wechat公式アカウントと類似しているが、参入ハードルが低く、誰でも開通できる)
2、情報露出(フォロー、リアル友達の匿名いいね、システムレコメンド)
しかし、コンテンツ量がまだ低いため、レコメンド精度も低く、効果はあまり良くなかった。品質を高めるため、3つのアルゴリズムを作り、チームを作った。チームごとに十数名で、最適なアルゴリズムを探していた。小さいチームでスピーディーに進行していた。ほぼ2週間に一度のリリースがあった。
5月になって大きな発見があった、コンテンツ量が小さいため、AIレコメンドではうまくいかない。むしろ友達の匿名いいねでレコメンドしたコンテンツが大量に消費された。その気づきでレコメンドも友達の推薦をメイン、AIのレコメンドは補助的な位置付けにシフトした。
その時に個人的な解釈は私たちが読んでいる本、大半は友達から勧められて読んで、ネットショップで推薦したものはあまり読んでない。AIのレコメンドは見逃してももったいないと思わないが、友達からの推薦は見逃せないためだ。Wechatのビデオチャネル(视频号)の発展はソーシャル関係を活かせないと成功できない。
このシフトのおかげで6月になると数字がかなりよくなって、リテンション率が高くなって、死活ラインを超えられた。コンテンツの生成・消費の循環がうまく回し始めた。
6月に私は黒板で、ビデオ生成に関して最適な消費比率はフォロー、友達推薦、AIレコメンドが1:2:10である。つまり、一人平均10個のフォローコンテンツを消費、20個の友達推薦コンテンツを消費、100個のAIレコメンドコンテンツを消費する。
内容は二種類あって、頭を使って理解する知識と、エンターテイメントとして消費するコンテンツ。友達のいいねは知識学習コンテンツ、AIレコメンドはエンターテイメントコンテンツ。フォローはこの二種類のコンテンツが混ぜられている。
実際統計した情報はフォロー、友達推薦、AIレコメンドが1:2:9だった。時間を経つとAIレコメンド精度が上がって9はもっと大きくなると予想する。
こう言った数字的の仮説を立てて、検証することがとてもWechatスタイルとなっている。

ショートビデオと長いビデオに関する思考

ショートビデオと長いビデオに関してもWechat内で悩んでいた。最初は二つを別コンテンツとして分けて、コメント、いいねの形式も異なるように設計していた。ただ、深く考えるとショートビデオと長いビデオの違いは利用時の状況が異なるだけで、ショートビデオはもっと隙間時間で消費されているだけ。この問題を簡易化して、現状1本以内のビデオはそのまま見せて、1分以上のビデオは最初の1分はビデオの概要、カバーと考えて、もっと見たい人はリンクを押すと消費できる。その解決方法でショートビデオと長いビデオがWechat内で両立できた。将来的にはWechat内でもっと長い良質のビデオが生成され、検索される世界を作りたい。

情報露出デザインに関する思考

情報の表示数と的中率は逆相関関係と考えている。例えば、10個のメルマガで1個しか見ない場合、的中率は10%となる。例えば、モーメンツで友達のものは全部見たいわけではなく、的中率が低いため、1画面でたくさん露出している。友達数が増加すると的中率はもっと低い、あなたが友達の発信を見る理由もコンテンツが面白いより、その人との関係性次第で、システムでは判断不可能。
フォローしているアカウントも多くなると的中率が低いため、1スクリーンで複数表示している。Wechatの公式アカウント(订阅号)で的中率を上がるため、一番上の欄によく利用しているアカウントを常設した。
Wechatのビデオチャネル(视频号)も最初的中率を高めるため、1スクリーンに2つのビデオを表示した。徐々に品質が高めた半年後にはフルスクリーンにシフトした。

Liveに関する思考

インターネットの発展歴史上、個人発信の仕方が進化し続けた。HTML→Blog→Weibo(中国版Twitter)→画像とショートビデオといった進化でもっともっと普通の人が生成・消費しやすい方向になっている。
ショートビデオよりもっと消費やすいコンテンツは何だろうと考えた時にLiveにたどり着いた。Liveはビデオよりもっと手軽もっと直感的、日常会話でも成立する。こんなリラックスした表現の仕方はもっと生成され、消費されると思う。この前Wechatのビデオチャネル(视频号)で流れ星のLiveを一回で100万人以上の観客がきた。これはソーシャル関係でモーメンツ投稿、チャット内の共有でなり遂げた成果となる。ソーシャル関係を活用しつつ、機械でもこんなコンテンツを推薦できるように進化したい。
WechatのLive機能はMini Programともよく結合されていて、ぜひ、ご活用を。
もう少し来る旧正月の新年挨拶でもぜひ、Live機能を使って挨拶してみて。

創作者支援への思考

現在中国のコンテンツプラットフォームで発信者への金銭的な支援がたくさん提供されている。ただし、Wechatのビデオチャネル(视频号)は情報のハブであり、プラットフォームである。コンテンツ生成機関ではない。Wechatでは情報流通のルートをたくさん用意しているため、情報流通には課題にならないはず。Mini Programなどと活用してWechatならではの価値提供ができると自負する。
初めの時に有名人をハンティングをしたが、契約費問題が聞かれた。私たちの希望は有名人がプラットフォームにきて、自分のコアファンを蓄積して、最終的にマネタイズできるように価値提供した。プラットフォームからコンテンツを購入することは戦略として入れないつもり。今やらなくて、今後もやるつもりはない。お金を節約したいより、健全なエコシステムを構築したいと思う。一般的な発信者のクリエーティブは購入したコンテンツよりもっと魅力的だと思う。
Wechatの発展歴史上には運用がメインではない、だからこそ、中立な立場で、高い価値提供ができた。いくら小さな個体でも自分ならではのブランドがあるはず。そのブランド形成に私たちは価値提供したいと思う。

この戦争はまだ始まりで、2018年からTiktokがWechat内でリンクの共有ができなくなり、Tiktok本社がWechat本社に独占法を訴訟したり、Wechat本社がTiktok本社にユーザデータの悪質利用を訴訟したり、3年後の今もまだ落ち着いてない。強者の二社は最終的にどんな結末を迎え、どんな過程を経るかとても興味深く、今後も注目して、みんなに届けたいと思います。

参考ビデオ: https://v.qq.com/x/cover/mzc00200uxq58qn/f0035gsy22r.html



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