夢とイギリス #1

日本を離れるのが10代の頃の私の夢だった。念願叶ってイギリスへの正規留学を果たした私は、気が付けばまた岐路に立っている。今22歳の私は、今度は日本で小説家になりたい、と大切な恋人と友人達をイギリスで得ながらもそう思ってしまった。

今日から、「夢とイギリス」と題してとことん自分と向き合ってみようと思う。先ずは私にとって日本と、イギリスってそれぞれどんな場所なのか。

私にとって日本は、挫折と中退と鬱が、記憶というよりかは概念のようにいつまでも居座り続ける場所である。「記憶というより概念」と言ったのは、よく覚えていないからである。何歳の時に不登校になったとか、家で引きこもっていた間何をしていたとか、何年何月何時にオーバードーズで救急車で病院に運ばれたとか、はっきりと覚えていない。最後のに関しては水曜日だったということだけは覚えている。当時の私は朝が来ることと日曜日が終わることがこの上なく憂鬱で堪らなかった。だから週が明けてしまった月曜日に、2日後に死のうと決めたのだ。だから覚えている。

いきなり暗い話になってしまったけど、鬱を経験したことは私にとってもう隠すことでも濁すことでもないから。現在の私は、鬱だった時の自分が「こんな人に側にいて支えて欲しい」と思うような人間にきっと成れているはず。

さて、それでも私にとって日本は故郷で、実家があって、家族がいる(愛猫もいる)。何よりも私は日本語の美しさが好きだ。季節を由来とする言葉や、日本らしい侘び寂びが垣間見える語彙は英語には無いと思う。だから小説を書くならば日本語が良かった。

一方でイギリスは心機一転、再起を果たした地であり、そして現在進行形で大学生活を送っている場所である。高校を中退した私は学歴と言うよりも何かに取り組んでいる、或いはやるべき事があるという状態にしばしば固執する。過去に自分で自分を、何をやっても長続きしない無能と卑下していた事があったからかもしれない。順調に進級し遂に最終学年になった私は、いわば成功体験をここイギリスで積み上げている。友人もいる。たくさん。卒業した後も一緒にロンドンに住もうと実際に計画を練り上げるほど大切な友人だ。私は日本に友人と呼べる人は1人しかいない。恋人もいる。日本にはもちろんいない。

家族と恋人と友人と、成功と失敗と挫折と再起、英語と日本語。小説家という職業に就く為、かけがえのないものを得ながらも孤独を求める自分。一方で一人で生きていくのは余りに厳しく悲しいとちゃんと分かっている自分。

人か場所か。日本かイギリスか。本当に得たいもの、もしも失ってしまったら涙が枯れるほど悲しい思いをするのは一体どっちなんだろう。

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