【コロナ禍の健康管理6】人的資本が経営戦略として注目される理由
前回の記事では、ESG投資をキーワードにしながら、投資のトレンドが、健康管理のしくみを整備して企業体制の再構築を図るなど人的資本を強くする企業活動に注目していることをみてきました。
本記事では、具体的な人的資本の確保戦略として経営層が今すべきことを、ISOなど世界情勢を踏まえながら解説していきます。
米国上場企業はすでに人的資本の情報開示にシフト
2020年8月、米国証券取引委員会(SEC)がレギュレーションS-Kの改訂を発表し、上場企業に対し人的資本の情報開示を義務付けることを明確にしました。
レギュレーションS-Kは、財務諸表以外の情報開示に関するSECの要求事項で、8月の改訂により人的資本の状況説明を求める旨の記載が追加されました。ビジネスを理解する上で必要な範囲で目的や措置の内容を開示することが求められています。
例を挙げると、雇用する従業員数の開示に加え、ビジネスを理解する上で重要な場合、人的資源の説明や経営者が重視する手段または目的――人材の誘致、育成、維持定着に関する対応や目的などの開示が要求されています。
これらの規定は義務ではなく、具体的な開示内容が指示されているわけではありませんが、SECの方針が明確になったことを受け、人的資本の情報開示が経営の指標として必要不可欠な要素と認識されていくのは、今後の世界の流れとして明白になったといえます。
ISO30414 国際指標も人的資本マネジメントへ拡張
もうひとつ、経営者・人事トップへ人的資本に関する情報開示を求める動きが加速していることを示す例を挙げましょう。
国際標準化機構(ISO)の動きです。
非財務情報の開示のうち、特に人的資本のガイドラインとして注目されているのがISO30414です。
ISO30414は、ISOとしては初の人的資源マネジメントの規格で、2018年12月に公開されました。
人事・組織に関する情報開示(Human Capital Reporting:HCR)に盛り込むべき内容として、組織文化、健康経営、コンプライアンスと倫理、採用、離職、生産性、スキルと能力、リーダーシップなど、幅広く人材マネジメントに関する基準を設けています。
ISO30414は海外ではすでに浸透しつつあり、日本国内においても、対応する動きは加速しています。今後、最低限の人的資源に関する情報開示の基準としてISO30414が機能していくと予測されます。
ISO30414の項目すべてに対応しなければならないわけではなく、業種や企業規模など状況に応じて変わります。
ただし、どの項目においても客観的なデータを伴って説明する必要があり、ISO30414の中で、各項目について開示すべきデータの意味と方法が解説されています。
SECのレギュレーションS-Kが具体的な開示の項目や基準を示していないため、ISO30414は企業が頼る重要な指標のひとつとなっていくことは間違いありません。
日本の企業はどう対応すべきか
このような海外の動きを踏まえ、今後日本においてはどのような対応をすべきでしょうか。
現在の日本をけん引する企業はグローバルに活躍する企業であるともいえますから、関連するすべての企業に向けて、人的資本の情報開示が重要視されてくる流れはもはや止められません。
経済産業省が2020年9月にまとめた「持続的な企業価値の向上と人的資本に関する研究会報告書」、いわゆる「人材版伊藤レポート」では人的資本に焦点を当て、経営陣に対して次のような取り組みを促すとともに、投資家にも積極的な働きかけを促しています。
・企業と人材の関係性の見直し
・経営戦略と同期した抜本的な「人財」戦略の見直し
・現状とあるべき姿のギャップの定量的な把握
・多様な人材の活用に寄るポートフォリオの構築
人事担当取締役は、日本の企業では財務担当より地位が高くないのが通例ですが、今後は世界の流れのように重要な位置付けとなり、人材戦略が企業価値の向上に不可欠な開示情報となっていくことは明白です。
新型コロナウイルス感染症への対応もあり、働き方の変革を含めた人材戦略をどのようにしていくのか、企業の姿勢が改めて問われ、加速しています。
先の読めない現在、かつての成功体験にとらわれることなく持続的な企業価値の向上を目指し企業の強靭化を図る鍵は、人材戦略にあるのです。
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株式会社WellGoでは、ESG/SDGs時代における人材への投資戦略としての健康経営について、ウェビナーを開催いたします。
開催日時:2021年1月25日(月)12:00~13:00
開催方法:Zoomウェビナー(無料/事前登録制)
タイトル:ESG/SDGs時代におけるWell-being経営とは
~次世代の経営人材と産業保健人材の連携に向けて
第一部 笹原英司 氏 講演
第二部 石川善樹 氏 講演
第三部 パネルディスカッション
ESGが市場を席捲する中、米国では「人的資本情報の開示」が上場企業の義務となった。国内でも昨年「人材版伊藤レポート」が公表されたことが記憶に新しいが、今後の経営人材に求められるアクションとは何か、欧米のヘルステック事情に明るい笹原英司氏を講師に迎え、欧米企業の取組事例を基に迫ってゆく。
また、予防医学研究者として有名な石川善樹氏も参加。ポストSDGsも見据え、ダイバーシティを生かすWell-being経営について、独自の切り口で提唱予定。
講師プロフィール
笹原英司氏
在日米国商工会議所 ヘルスケア委員会副委員長(デジタルヘルス担当)
欧米の最新ヘルスケア・テクノロジー情勢に詳しく、ヘルステック領域での講演実績多数
石川善樹氏
予防医学研究者、公益財団法人 Wellbeing for planet Earth 代表理事
近著は『フルライフ』(NewsPicks publishing)、『考え続ける力』(ちくま新書)など
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URL:https://zoom.us/webinar/register/WN_AyHamkF0Qn-D_pv_ilCYww
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