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【巷の名言】テコンドーの館長先生「考えろ」

 前回、小さい頃から頭を使う環境を与えられた米国人の男の子の話を以下に書いた。

そして、私自身は日本で生まれ育ち、批判的思考なるものを獲得することなく成人し、バブルの時代には「24時間戦えますか」を体現したかのような毎日を送ることとなる。組織の要求に対して従順に仕事を遂行し、プライベートの時間を優先することなく、ワーカホリックそのものであった。そしてそれが正しいことだと心の底から信じていたのだ。

子供の頃の私は、自他ともに認めるお転婆で、将来は水原勇気になると本気で考えていたことがあるほど野球にのめり込んでいた時期があった。

「下手の横好き」という言葉は私のためにあるのかと思うほど、本人の情熱とは関係なく、アレコレと手を出したどのスポーツもプレイヤーとしてはパッとしなかった。

スポ根アニメが大好きで、再放送の度にセリフを丸暗記するほど食い入るように画面を凝視し、限界を超えた長時間トレーニングが上達への王道だと信じていて、とにかく毎日ヘロヘロになるまで練習したものだ。

そんな私がなぜ、どのスポーツもイマイチだったのかの理由を完璧に理解してしまったのだ。40代も半ばになってから。

テコンドー道場の館長先生の一言で。

彼は言った。「一蹴りごとに考えろ」と。

当時、韓国のソウルに住んでいた時に、子供の習い事として、週5〜6回ほど、テコンドー道場に通っていた時期があった。最初は通訳のつもりで入ったのだが、なぜか私自身もドはまりしてしまった(汗)

「合法的に本気で人を蹴れる.........」

ということに気づいたからだ。自分でもどうかと思うけどさ。

そして40代の大人になって、大声で気合を入れられる環境があることに心地よさを感じてしまったのだ。そして熱血漢の館長先生に煽られたり、罵倒されつつ体育会系のノリで数百本の蹴りを入れる日々にドMメンタル全開でうっかり興じてしまい、黒帯三段までとってしまった。あと数年ソウル居住が長引いたら、四段師範までとってしまうところだったよ......。

とはいえ、ここでも私は生来の「下手の横好き」モードを炸裂させてしまった。熱心に練習する割には、子供達に比べて色々と飲み込みも悪く、上達も遅かったのだ。

テコンドーの練習時は、館長先生ではなく、ほぼ他の若い師範先生の指導を受けることが多く、館長先生は時々しか練習を見てくださらなかったのだが、来られる度にいつも同じことを仰っていた。それが前述の、

「考えろ」

という言葉だ。

正確に言うと、

「一回蹴るごとに、次は具体的にこうやってみようと考えてから蹴って、うまく行かなかったらまた一回ごとに考えて、うまくいったらそれをもう一度やってみてうまくいくことを確認するなど、一回ごとに仮説と検証をしなければならない。一回ごとにだ。何も考えずにただ蹴っても、それは全く意味がない。」

と.........。

初めてその言葉を聞いた時には、そりゃもう衝撃を受けたわけよ。

私自身、スポーツでそんな指導を受けたことなどないし、他の師範先生にも言われたことがなかった。

他の師範先生からは、こうやってはいけない、ここに力を入れてみてと色々とアドバイスはもらい、見本を見せては頂いたけど、一回ごとに自分の頭で考えて仮説と検証を繰り返せ、それをしないなら練習は無意味だとまで言われたのは初めてだった

私自身は、スポーツで頭角を現したことなどほぼないのだが、それでも運動音痴側にいた事は記憶にない程度にはフツーにできていたはず。スポ根アニメが大好きな私としては、スポーツの上達の秘訣は限度を超えた長時間トレーニングありきだと思っていて、実際にある程度の時間練習すれば、何でもとりあえずはできるようになっていたので、そういうものだと思っていたのだ。

何度も何度も練習しているうちに、偶発的にできるようになり、そのコツをなんとなく覚えて身に叩き込むことが「練習」だと思っていたので、

「考えろ」

と聞いた時に、びっくりしちゃったのだ。そしてガッテンしたのだ。スポーツで上達が早い人は、一回ごとに仮説と検証を行い、有意義な練習時間を過ごし、闇雲に長時間練習をすることで訪れる偶発的な成功を待つようなことはしないということを。

それを今頃になってまた思い出したのは、最近読んだこのマンガの中で、プレイヤー自らが「考える」という状況が多々表現されていたからだ。

誰も、教えてくれなかったのよね。

そして、トッププレイヤーにいるようなアスリートは、そもそも練習の密度も違えば、集中力も思考も違うし、練習の方法論すら違ったりするということを、一般Pの子供であった私は、考えたことすらなかったのだ。

そもそも身体能力がレベチな人なのに、かつ一回ごとにフルに思考をめぐらしトライ&エラーを重ねて経験値も上げてくるような一握りのアスリートの中で、私が水原勇気になれるわけはなかったのだが、それでも闇雲な試行錯誤は意味がないと、小学生くらいの頃に教えてくれる先生がいたらなぁと思ったりもする。

もし子育て中の親御さんのヒントになればと思い、我が身のアホさを晒しつつもメモっておいたよ。

何事も、一回ごとに、仮説と検証だよ。

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