6.0 リノベを終えて考えた「リノベで大事なこと」

 リノベのBefore&Afterを書いているのだが、もうじぇんじぇん終わる気がしないので、スキップして、先に結論を書くことにした。

終わった直後は、色々と疲れ過ぎて、「もう二度とリノベなんてしないしっ!」と思っていたのだが、喉元過ぎれば........で、また別階のリフォームに手をつけ始めている。

ほぼ廃墟となっていた場所が、人間が手を入れさえすれば、ここまで生き返るのかという実例を見てしまったので、なんというか欲が出てきたというか。

いや、もっと言うと、6階建ての廃墟ビルのうち、生き返ったのはその6分の1。残りの階は、やはりまだまだ手を加えないと何ともならない状態なのだ。そうなるとやはり心はスッキリしないのである。やり残している仕事がまだあるという感じなのだ。少しずつ前に進めなければ。

これから私たちの様に、古くて廃墟と化した実家や親戚の家、または新たに取得した中古物件を、自分の好みにリノベーションする際に、何が最も大事なのかということについて、少しだけ書いておきたい。

リノベの方法論については、いくつも書籍があるので、そちらを読んでいただくのが良いと思う。まぁ、ぶっちゃけお金さえ出せば、デザイナーさんや工務店さんが大抵のことは実現してくれるので、その辺りには心配は無用だと思う。ただ、どうしても人に頼めない部分がある。それが、

「自分が住みたい家とは、どういう家なのだ」

を規定する、という部分だ。そしてそれ以外にも注意すべきことはある。

ということで、まず先にまとめておく。リノベで大事なことは、

1)自分の住みたい家がどういう家なのかを徹底的に問い続けること

2)自らも勉強すること

3)自分に合う工務店さんを見つけること

に尽きる。

1)自分の住みたい家を問い続けること

これが本当に難しい。私の場合は、数ヶ月の間悩み続けてしまった。

種々の条件(予算、居住面積の限界、その他の物理的な制限)の中で、どの程度までできるのかのイメージが全くつかめなかったのだ。

新しく住む家に対して、日々の不便を解消するような希望、例えば、二重窓にするとか、トイレは様式+ウォシュレットにするとかについては、簡単に思い浮かぶ。しかし、では自分が最も快適で住みやすいと思う居住空間とはどういうもので、具体的に何をどうすればそれが実現できるのかについては、全くわからなかった。ざっくりしたイメージはあるにはあるが、それをどう具体的なアクションにつなげていけばいいのか、そのプロセスがわからなかったのだ。

そこで気づいたことは、自分の住みたい家というものが、自分でもよくはわかっていなかった、ということだった。

一般的な日本の家に対する漫然とした違和感があったこと、長年海外に住んでいたので、日本とは違う生活様式の実例を見ていたこと、そして田舎に住むことになったこと、色々なことが脳内で絡み合った。中途半端に具体的なイメージがあったり、逆に全体イメージが描けなかったりと、なんでこんな簡単ことができないのかと苦悩する日々を送った。

リノベってすっごく楽しいことだと思ったのに、なんでこんなに苦しいのか、自分でもわからなかった。

そこでカナメと二人で毎日あちこちのカフェやレストランを見に行ったり、本を読んだり、pinterestで画像を漁ったりして、一つ一つ積み上げていくという時間が必要だったのだが、最終的にはなんとか、自分たちの脳内で描いた想像以上のものが手に入った。

人間というのは、知らず知らずのうちに「常識」や「普通」というものに発想が引きずられてしまうことがある。でも、断言して良いのだが、自分の住みたい家の解は自分の中にしかないし、それは時には世間の常識の範囲を越えることもある。だからどんなに他人の目から見て奇異に見えたとしても、そのユニークな選択肢を一度は具体的に実現可能かどうか、考えてみることが大事だと思う。そして自分たちの希望には濃淡があることも理解して、こだわるところにはこだわり、予算も多めに投入する。逆に、こだわりのない部分に対しては無駄なエネルギーやコストを使う必要はない。その辺りはプロのオススメにのるというのが得策ということも多々ある。

自分の住む生活空間で、自分たちの希望をどこまで実現できるかについては、予算も大きく関わってくるので、この辺りにも頭を使う必要がある。最終的にでき上がった居住空間に対する満足度は、この最初の段階で「家に望むもの」をどれほどしっかりと描けているかにかかっていると言っても過言ではない。

2)自らも勉強すること

リノベとは言え、そこそこの規模の工事にはそれなりのコストが発生する。それだけの高額の支払いをするのであれば、その内容について積極的に理解しようと努めることは決して無駄ではない。

実際には、工務店から送られてくるざっくりとした見積もりについて、最終的な金額だけを見て安易にOKを出すこともあると思う。普段の生活ではスーパーのセール品に対して敏感な自分が、例えば冠婚葬祭時にかけるコストについては、何故かどんぶり勘定でも許容してしまうのと似ている。業界についてよく知らないとそういうものだと思ったりするだろうが、今はネットで何でも調べられる。何をすればどのくらいの費用がかかるのか、この設備はぶっちゃけいくらで手に入るものなのかについては、ちょっと検索するだけで答えは出る。

そういう数字を知りつつ見積書を読むと、色々と業界のお金の流れについても想像が及ぶようになる。ネットで調べた金額を突きつけていやらしく値下げをするのは、その後の相手との関係性を傷つけることにもなるのでオススメしないが、こちらが勉強しているという雰囲気を漂わせるだけで、その後の先方からの話も変わってきたりする。例えば、「この設備はこちらでネットで購入しますので、その設置だけお願いできますか?その時はいくらくらいですか?」と聞いてみるのも良いかもしれない。

ちなみにびっくりするほど大型の設備も、ネットで買うことができるが、自分が準備した設備の設置だけをお願いできるかどうかは、その工務店さんの考えにもよる。また、その設備の設置に伴い、表から見えない資材が必要になることもあり非常に注意を要するので、工務店さんにお願いする方が安心ではある。

ちなみに我が家はシャワーユニットとトイレは工務店さん経由で購入したが、細かい仕様についてのリクエストは一切なしで「一番安いやつねw」とお願いしたら、本当にめちゃコスパの良いものをセレクトして頂けた。洗面台とキッチンは自分で準備したのだが、設置に際しては、特に問題はなかった。IKEAキッチンの設置については、日本のメーカーとの違いがあったそうで、多少時間はかかったみたいなのだが、無事に設置することができた。

また勉強するのはコストだけではない。工務店さんから提供されるサンプルやカタログの類は、日本において手に入るすべての設備、すべての資材を見せてもらえるわけではない。なんとなく「この範囲内から選んで」と言われれば、素直にその中から選ぶしかないと思ってしまうが、そんなことはない。念のために色々と調べてみると良いと思う。その工務店さんが入手しやすい資材の範囲外のところに、あなたの求める何かがあるかもしれない。

この様に一つ一つについて疑問を持ち調べていくことで、徐々にそのリノベが、他の誰かの作ったものではなく、自分による、自分のための、自らが希望する生活空間を実現するための一大プロジェクトであると実感できるようになってくるのだ。

3)自分に合う工務店さんを見つけること

自分がリノベを行う物件について、プロジェクトマネージメントをやってくださる工務店を探すというのが、多分最も難しいことではないかと思う。リノベしたい人と、それを支える工務店をマッチングするサイトでもあれば良いのだが、現在のところはない様に思う。

大手の工務店は安心感があると思うが、ユニークなリノベについてのノウハウがあるのかどうか疑わしいし、そもそも営業利益を上げるために色々とふわっとした予算の引き上げを提案してくることも当然とある。これから、日本いやいや世界のどこにいても、経済的に厳しい時代がやってくる。そういう時期には、できるだけ手元に現金を置いておきたい。要するに、リノベにがさっと資産を突っ込むよりは、ある程度現実的な予算内で収めておいた方が良いと思う方も多々いらっしゃると思う。そういう人間の本能的な感覚は大事にすべし、である。

どうやって探すのかというアイデアまでは持っていないのだが(私の場合は、昔から実家の改装などでお世話になっていた方が、まさに私たちにとって最高の工務店さんだったので)、経済的に問題がなければ大手で良いのだが、そうでないのであれば、ぶっちゃけの予算と、自分の希望をしっかりと聞いてくれる人と組んだ方がいい。そして過去に経験のないことに対して、面白がって一緒に知恵を出してくれるような向学心のある人がいい。何を言っても、既存の高額な設備を取り付けるように誘導してくるような人は、避けた方がいいかもしれない。ある程度の融通の効く小さな工務店の方で、ユニークなリノベ にも対応している様なところが良いかもしれない。ただし費用については正直言って良くわからない。

もし自分が契約した工務店さんとの話し合いの中で、何か違和感を感じた場合は、いきなり怒って契約破棄!となるのではなく、相手にどう思われようと、自分の希望を伝える努力を続けてみた方がいいと思う。キチンと伝えられたら、相手もプロなので、何とか顧客満足を取り付けるために奔走してくれると思う。


以上、リノベについて大事なことについて書いてみた。

文中にも書いたのだが、白いキャンパスにいきなり自由に描くというのは、かなり難しいことなのである。なぜかというと、想像とは過去の経験と知識(記憶)の組み合わせでしかないからだ。つまり、脳内のイメージが空なら、そこからは何も出てくるわけがない。誰かのマネを恐れる必要はない。色々と素敵な空間を見て、写真に撮って(一言ことわれば、大体のところで写真は撮らせてもらえる。「リノベを計画していて、こういうのが素敵だなと思って....」と言うと、色々と教えて頂けることも多い)、本をたくさん読み、ネットで画像を集めて、圧倒的な情報収集をすることで、漫然としたイメージから具体的なイメージを描けるようになってくる。そして実際にリノベを始めると、思いもよらなかったトラブルや想定外のことが出てくる。その度に落ち込んだりせずに、面白がってアイデアを出すような柔軟性があれば、きっと想像以上の結果が得られると思う。

リノベを考えてらっしゃる方の、何かのヒントになればいいなぁ。

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