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超富裕層に生まれたら、親ガチャ当たり!なのか?

 アジアのインターナショナルスクールに子供たちを通わせていると、友人達の多くが「マジのセレブリティ(著名人や芸能人の子供)」や、超ド級の富裕層だったりする。セレブ達は、自身の子供を地元の市井の人々と交わらせずに、外国人の集まるインターナショナルスクールにを入学させることが多い。

ちなみに我が家はヘルパーさんも雇っていない一般Pで、家計の最大支出が「インターナショナルスクールの学費(4人分)」で、彼ら富裕層との経済的な差というものは、もう筆舌に尽くし……….(以下略)。

とはいえ、うちの子供達がそんな超絶富裕層との格差に嘆き悲しんでいたわけではなく、そろって「別に金持ちになんかなりたくない」などと言っていた。理由を末っ子のバクに聞いてみたら、

「お金持ちの子って、性格悪いし。あんなのになりたくない。」

だそうで。

ちなみに超富裕層のママパパ友もいたけれど、彼らがクソみたいなヤツかというと全くそうではない。「金持ちケンカせず」といった感じで、ご自身については努力し続けて成功者となったわけで。むしろ余裕ありまくりで他人に優しく……というタイプの方が多い。例外は芸能人(汗)。

ところが、自分の成功の秘訣を子供に伝授しようとするあまり、教育熱が過熱沸騰しているファミリーも多々いらっしゃった。

そういう家庭で育った子供達は、育つ過程でどうなるかという話をしてみたい。

ちなみにインターナショナルスクールの主な対象者である「外国人駐在員子女」は、ほぼ小中学生にしかいない。高校以降は帰国するか、ボーディングスクールに入学することが多い。そして外国人駐在員は高額所得者ではあっても、超富裕層……までは行かない。ここで言う超富裕層とは、ほぼ現地のアジア人の話である。

私が海外で出会った「超絶富裕層の子供たち」は、ざっくりと以下の3パターンに分かれる。

1、セレブの子供に多い、周囲に害を撒き散らす放蕩二世タイプ
2、尋常ならざる期待と使命を背負わされる高ストレスタイプ
3、超リベラル家庭で、自分探しに時間をかけられる自由放任タイプ

超絶富裕層の子供達の性格が悪いとみなされてしまう理由は、その育ってくる環境に起因しているのではないかと、私は疑っているのである。

以下、カッコ内の数字は、アジアのインターナショナルスクールにおけるざっくりとした発現率である。

1、セレブの子供に多い、周囲に害を撒き散らす放蕩二世タイプ(10%)

 親から自由に使えるクレジットカードを持たされていて遊び放題な放蕩タイプ。彼らは夜な夜なクラブ通いし、ブランド品を買い漁る。ほぼ成績は底辺だったり、素行が悪すぎて退学経験があったりする。学校側からも目をつけられていて、抜き打ちでドラッグ検査を受けさせられたりもする(が、入学時に提出する「ドラッグ検査についての同意書」を、親が不同意することも可能)。

パーティ好きで、ホテルのフロアを貸し切ってお誕生日会などを開き、その際にめちゃくちゃやらかし(ペンキで室内を汚しまくる等)、想像を絶する素行の悪さを発揮するが、親のセレブもネジがずれていて、自分の名前の力でそれらの醜聞をもみ消そうとする(が、大体めちゃくちゃウワサが広がる)。

周囲には、同じようなセレブの子供達と「超はつかないけれど、まぁまぁ富裕層」の子供達が取り巻きのようにひっついていたりするので、学校生活をそれなりにエンジョイするが、有名大学に進学したりするような子はいない。その後の進路は謎である。

2、尋常ならざる期待と使命を背負わされる高ストレスタイプ(85%)

 アジアのインターナショナルスクールにおいて典型的なのがこのタイプ。とにかく親からのプレッシャーが凄すぎて、ストレスを溜め込んでいる。プレッシャーの理由はひとえに「米国名門大に合格するため」である。他罰的になるタイプと自暴自棄&自虐的になるタイプに分かれる。

稀に、プレッシャー度合いよりも高い自分自身のモチベーションを維持できる子もいて、そういう子は決まってStudent council(生徒会)で会長などの役付きになり、スポーツクラブの部長になったりする。教師ウケも良く熱のこもった推薦状を書いてもらえて、複数のキラキラ名門大からの合格切符をゲットする。

 ところが、多くの子達は親から「バーシティチーム(スポーツクラブ)のキャプテンになれ」「生徒会長に立候補しろ」「トップスチューデントをとれ」「スカラシップ(奨学金)をとれ」とありとあらゆる側面からプレッシャーをかけられる。趣味を完全否定されて「そんな時間があるなら勉強しろ」となじられ、成績が落ちると家庭内でクラブ活動禁止令が敷かれ、時には体罰もある。成績向上のために金銭的な支援は惜しまないので、拒否権なく高額な家庭教師を強制的につけられてしまう。

 多くの場合、それなりの有名大(米国)に進学することで、親元を離れて自由を得るが、母国に住む親から成績を監視されているため、とりあえず真面目に授業を受けて卒業し、米国での就職が叶わずに母国に帰ることが多い。結婚しても子供が生まれても親の干渉は続く。

3、超リベラル家庭で、自分探しに時間をかけられる自由放任タイプ(5%)

 親が修士博士卒のインテリ層に時々いるのだが、びっくりするほど子供の進路に口を出さないタイプがいる。GAP YEAR(学歴的には空白期間)をとらせることが多く、何年かかっても「将来についての進路は自分で考えて結論を出せ」というスタンスである。ある程度のアドバイスでもしてあげたらいいのにと思うほどに何も口出しせず。子供の方は、本当に進路が決まらないまま高校を卒業したりもする。

 親が高所得者であっても、結果的にコミュニティカレッジに入って、そこから将来の仕事につながる専攻を決めればいいと考えて、そうする人が多いように見えた。欧米系の親に多いタイプである。

 子供側には一切のストレスはないように見えるが、幾多ある選択肢の中のたった一つを選ぶ苦悩を味わい、ふらふらとアレコレと手を出しては辞めて、何年も費やしてしまうこともある。

 親からの愛情に疑念を抱いたりはしないので、自己肯定感は低くない。が、プライドは高いタイプと低いタイプと色々ある。遅咲きであっても、それなりの進路を自由に選んで自立していく。意外にも最後まで親に寄生することはない。

 さてさて。

 富裕層に生まれるということは、単に「経済的な悩みがない」というだけのことで、他の悩みのすべてを払拭できるかというとそうではない。世の中の悩みの多くは、お金で解決できることが多いのであるが、例えば欧米の名門大に入学させようとするならば、それは「自分の名前のホールが建つほどの寄付をすれば可能かも」と言われるほどに、容易ではないのだ。

 性格が悪いとみなされてしまう(要するにワガママに育つ、他者への思いやりに欠ける)のは1と2の半数くらいに見られて、「お金持ちのほとんどが性格悪い」と思い込んでしまうのも無理はない。ちなみに2の残り半分くらいが多かれ少なかれメンタルに闇を抱えている。日本の教育ママの比じゃないから、そのプレッシャーもすごいのである。

そんな友人達は、とてもじゃないけど幸せそうには見えなかったのだろう。

では、親ガチャというものが存在していないのかというと、それは絶対にあるなと思うのである。マイルドヤンキーの方が幸せそうに見えるとか、ド田舎に生まれたら文化資本がなくてハズレだとか、色々と言われるが、そんな次元のぬるいガチャではなくて、富裕層に生まれても幸せではない、圧倒的に不利に作用する「家庭環境」というものがあると思うのである。

それを言いたいがために、延々と富裕層の話をしてきたのであるが、それは、

衛生要因が満たされない
AND/OR
自由意志が尊重されない

家庭環境である。

衛生要因が満たされない家庭の典型例は、子供を虐待する親がいる場合。食事が与えられないなどのネグレクトがあったり、衣食住が足りていても家庭内で親に常に無視されているような場合も含む。

自由意志が尊重されないというのは、進路や将来の職業、習い事やクラブ活動、友人などの選択において、親が選んだものを強制され、自分が選んだものを全否定されるような場合。親が高学歴で、高所得者や資産家であっても、子供の一挙手一投足に口をはさみ、常に評価をかませる親は存在する。

「貧しくとも不幸ではなかった人」も「超富裕層に生まれたけど幸せではなかった人」も存在していて、要は「親から直接に過剰なストレスを与えられたか否か」が最も大きな要因かなと思ったりするのだ。

最後に、韓国で出会ったK-POPアイドルの卵(練習生)の男の子の話をしたい。

彼は、中国系米国人で四人兄弟の中で唯一の男の子で、他の三人の姉や妹も超美形。かなりの富裕層に育った。某有名芸能事務所に所属しており、デビューを約束されていたはずなのだが、最終的には素行の悪さから、事務所から解雇されてしまった。

実際、私の方も思わず説教してしまうほど、舐めた態度をとり続けていたのだが、一度だけ急に真剣な眼差しで思いの丈を語ったことがあった。

確かに、父親はオレに多くのお金を費やしてくれた。
海外にある寄宿舎付きの学校の学費も払ってくれた。
でもそれだけだ。
彼(父親)は、子供にお金を使うことが愛情だと思っていたかもしれないが、それは違う。
それは、愛情ではない。
父親がすべきことは、それじゃない。
彼は、オレを愛していない。

練習生Hくんのセリフ

チャラくて超絶イケメンくんの目が潤んだ。

彼に確かめたわけではないが、おそらく当時から素行の悪かった彼のことに手を焼いて、遠い外国の寄宿舎つきの学校(ボーディングスクール)にぶち込んだんだろうなと思った。それを彼は「見捨てられた」と思ったのかもしれない。

彼は高身長のイケメンで、歌も上手くてダンスもそこそこだったので、事務所のオーディションに合格してしまったのだろう。練習生になってからは、韓国語などの外国語も覚えようとしており、演技の練習ではこんなことをやってるんだと、その録音した音声を聞かせてくれた。

それなのに、事務所のルールを何度も何度も破ってしまった。

一度しかない人生の大半を、親の愛を求めて迷子になるなんて、そんなの辛すぎるやん。

子供の自由意志は、かようにも尊い。
親であっても立ち入ってはいけない境界がある。

だから富裕層ガチャでハズレだったとしても、それは大きな問題ではないのだよ。お金がないなら自分で稼げばいい。解決策はあるのだ。

でも親を取り替えることができないから、「親ガチャ」とみなされるようになったのだろうな。

家庭におけるお金の問題は、実際のところ最優先事項でもないのだ。

富裕層を羨ましく思う気持ちは分からないでもないけれど。

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