1.9 無職だと賃貸契約できないかも......

 長く海外に住んでいて日本に帰国すると、色々なトラップに引っかかる。いくら海外で真面目に働いていたとしても、日本国内にそれを証明するものは何もない。クレジットカードも簡単には作れないと聞くし、色々と驚くような経験もする。

 そう言えば、半年前に末っ子が大学の寮を出て一人暮らしをすることになり、不動産会社でいざ契約となった時に、「親が海外在住のため」という理由だけで、大家さんに拒否されるという経験をした。結果的に「日本国内に連絡先があり、かつ保証会社を通すこと」という条件でOKを出してくれた大家さんと契約できたのだが、当初の予算を大幅に上げざるを得なかった。他の物件について問い合わせをしている際には、「二年分の賃料を前払いすれば良いですか?」と聞いてみたことがあったが、その時の不動産会社のお兄さんの返答が衝撃的であった。彼は少々イラッとしたみたいで、

「お母さん、海外ではそういうのが通用するかもしれませんが、日本では大家さんが、国内ですぐに連絡がつく、身元のしっかりした人を好むんです。前払いすればいいとか、そういう問題ではないんです。」

という返事が返ってきた。彼とケンカする気もないし、社会システムと戦うつもりもない。でもカナメはその当時は会社員だったし、私は海外だが会社の登記もしている。それでも「身元の怪しい人」認定されるのだ。真面目に生きてきても、国内に何の足跡もないと、それは「ないもの」として扱われてしまう。

 イヤな予感がしてきた。

 クレジットカードを新規に申し込めないような私たちが、不動産契約できるのだろうか!?一人暮らしの末っ子のアパート契約の保証人にすらなれない私たちに、自分たちが住む、さらに高額の物件の契約ができるのだろうか?

そして今や、本人はアーリーリタイアメントしたと主張しているとは言え、日本に帰ればただの「50代なのに無職」のカナメ。フリーランスとは言え日本国内にそれを証明するものが何もない同じく50代のおばさんの私。怪しいにもホドがある......orz

 私自身は、クライアントから受け取った発注書や入金記録は持っているが、それはすべて英語表記でドル表示。そんなの見せても怪しいに拍車かけるだけやん。法人を作って法人契約すれば簡単にクリアできると思っていたが、実績の証拠もない&創業間もない会社も怪しすぎて、こちらのラインでの契約も無理っぽいことがわかった。

 ネットで調べてみたところ、色々と手を尽くしてみても、私たちの状況では、日本で賃貸契約を結ぶのは無理ゲーだということが漫然と理解できた。この状況で可能なのは「キャッシュで不動産を買う」くらいのものだ。

なんでこの歳になって不動産を買わなあかんねん!!!!

カナメの説得を聞くまでもなく、私は事実を受け入れざるを得ない。認めるしかない。

そう。私たちには「選択肢などないのだ」と。

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