経験値ってつまんないことの積み重ねよねw
父は関西にある家電メーカーに勤めていた。
「技術移転」という名目で世界中に出張にでかけていた。
父が初めて海外出張に行った時には、社内報に報じられたそうだ。草野原のような飛行場に、会社の同僚達が旗を振りながら見送っている写真も残っている。
彼の人生は、波乱万丈ではあったけれど、おそらく充実した人生だったのだろうなぁと、この歳になって思ったりする。
ある時、出張先の中東から、大きな紙の箱に入ったお土産を2箱持ち帰ってきたことがあった。
ピスタチオという名前のナッツだと言う。
そのナッツは、殻をむくと、一部が緑色と紫色が混在したような強烈な色を発していて、幼かった私の目には、それはそれは恐怖に映った。
一緒に持ち帰った金属製の食器や布なども、日本のそれとは違って異質なものに見えた。怖かったのだ。
そのため、家族中が美味しい美味しいと絶賛するそれを、私は断固として口にしようとはしなかった。異質過ぎて、体が受け付けそうになかったのだ。
1箱目はすぐに空になり、2箱目が終わりそうになった頃に、再度、母にオススメされてしまった。
母「だまされたと思って食べてみぃ。美味しいで。もっと買ってきてもらったら良かったと思うくらい。」
と。
幼い幼いバンリちゃんは、その母の言う通りに「一つだけやで」と言って目をつぶりながら、それを口にポンと放り込んだ。
濃厚なバターのような風味に塩味がついていた。
今まで食べたことのない味だったが、びっくりするほど美味しかった。
心底、驚いてしまった。
こんなに美味しいものが、世の中にあったのか、と思うほどに美味しいものであった。
そして、目前の紙の箱を見たら、そのブツは、端っこに少しだけしか残っていなかった。
私って、アホ過ぎる………….orz
バカバカバカバカ、私のバカ。なんで2箱もあったのに気づいたのが、2箱目の最後なの!?
ママさんも、もっと最初から私に「だまされたと思って」って言ってくれたらよかったのに!!!!(おそらく、何度も言っていたと思われるが。)
幼い幼い私は、このショックが大きすぎた。
それから、「出されたものは一度は口にしてみよう」と誓ったのであった。美味しいものに触れる貴重な機会を、逸してはいけないのである。
こうやって、私の経験値は一つあがった。
人間の経験値って、つまんないことに一喜一憂して、形成されるものなのよねぇ。
感情を揺さぶられる経験は、一つでも多い方がいいよね。それがどんなにつまんないイベントでもね。
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