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モチベーションは矛盾をはらむもの

先日、「先生のためのコーチング」という記事を書きました。今回は、その続編にあたる記事です。

わたしは、現在、高校や大学等、教育機関の先生方に教育設計のサポートを提供する事業を開発する仕事についています。そのため、どうしたら先生方に効果的な教育実践のサポートを提供できるかということに興味があります。

先の記事でも書いたように、大人の学びを支援するためには短期間の「研修」で知識を伝授するだけでは十分ではないと思います。研修後もコーチングなどを通じて、フォローアップをしながら、より良い教育のあり方を一緒に考えるというようなサポートが必要ではないかと思っております。

そうした関心を改めて強く感じていたら、先の記事中で解説した本の著者であり、教育におけるコーチングのサービスを提供しているジム・ナイトさんがワークショップを開催していることを知り、一念発起して申し込みました。ワークショップは3ヶ月以上も続く長丁場になるようなのですが、自分の振り返りにもなるので、定期的にそこでの学びを投稿していきたいと思います。

Instructional Coaching Group

まず、どんな企業がワークショップを提供しているかを紹介します。主催はInstructional Coaching Groupという米国の企業です。20年以上の研究や実践の結果、コーチングを取り入れることが教育実践のサポートには有効であることがわかったそうで、そこで明らかになった知見を取り入れながら教育機関向けのコーチングサービスを提供しているようです。米国の教員の10人中4人が中途離職してしまう現状があるようで、その課題解決のために事業に取り組んでいるようです。

具体的には、学校向けのカスタマイズされたコーチングプログラムの開発などのコンサルティング業務や、校内の推進者がにコーチングの手法を学べる専門講座(ワークショップ)などを提供しているようです。ほかに、資格認定や年に一度のカンファレンス、書籍出版事業などもてがけているようです。

「先生のためのコーチング」ワークショップ

受講登録すると、すぐさま8冊の書籍が郵送で届きました。Zoomでのライブセッションと読書課題で構成されます。まるで大学院の授業みたいに、かなりの宿題が出ます。

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コースは16週で構成され、コーチングとは何か、対象者とのパートナーシップをどう築くか、介入の効果をどう検証するかといったトピックを順に学んでいきます。

タイムゾーンの関係で、残念ながらZoomセッションにオンデマンドで参加しているのですが、書籍を読んだ感想を参加者同士で交換したり、講師の話を聞いたりしたながら、理解を深めていきます。いまの情勢もあって、コロナ以後の環境を踏まえて、どう学びを支援するかといった話題になることが多い印象を受けました。

4つのビッグ・アイデア

初回のセッションは、先生のためのコーチングとはどんなものかを参加者で議論する、ウォーミングアップのような位置づけでした。

その中で紹介されていた、コーチングの基盤にすえるべき4つのビッグアイデアが印象に残りました。

1. モチベーションは矛盾をはらむものである
2. 学びは実生活の中で起こる
3. 感情を動かすゴールは学びをリアルにする
4. 内側からの学びは外からの押し付けとしての学びを打ち負かす

どの言葉も研修講師として、知識をいかに頑張って伝授しても変化を起こすことは難しいと知っている自分にとっては、とても腑に落ちるものでした。ノールズの成人学習理論などにも通ずるものがあるような気がします。

モチベーションは矛盾をはらむ

特に、「モチベーションは矛盾をはらむ」という言葉は深いと思いました。自分の将来に役立つから、この課題を解消することは人のためになるからと思っても、短期的に取り組むことが多くなかなかモチベーションを維持することが難しかったり、とても大事だと思っていても自分の所属する組織からは評価されないので取り組むのに二の足を踏んでしまったり。モチベーションにはいろんな要素が絡みついており、「やるべきだ」→「やる」になかなか移せないという状況があると思います。

「できないこと」それ自体が決してだめなのではなく、そうした矛盾や複雑さがあることを前提にして、支援者として何ができるだろうか、そしてその困難な状況で前を向くためにどんなことを相手と一緒にできるだろうか考えるのが大事なのだなと思いました。

行動を変えることに対するモチベーションを維持・喚起することの難しさや矛盾を抱えた上で、われわれはどう振る舞うかといった視点を大事にしていきたいと思います。

次回からは少しずつ詳細な内容に入ってくると思うので、また随時、この場で報告したいと思います。

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