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JobCopass(ジョブコーパス)始動!〜難民と企業を繋ぐ、就労伴走事業部・統括山本が見据える未来〜

その華奢な姿からは想像できないパワフルさで、WELgeeに明るさと活気をもたらす、就労伴走事業部統括の山本。趣味は友人を訪ねる旅で、次の行先はルーマニアと北マケドニア、年内に絶対に行きたいのはウガンダかシリアだそうだ。

山本はここ2年間、日本にやってきた難民の若者と国内の企業を繋ぎ、雇用の機会を創出する就労伴走事業の事業づくりに専念してきた。そして今年2月、『JobCopass(ジョブコーパス)』というサービスとして正式にローンチ。

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「難民人材と、企業パートナーの皆様とともに、日本社会に変革をもたらす。」現場の最前線で奮闘している山本に、生の声を聞いた。(聞き手:PR部 森川)

"難民キャリア支援"の情熱が生まれた、高校時代の経験。

山本は元々「難民問題」に強い関心があったわけではないが、高校生の頃の経験が今のキャリアに影響を与えているという。小中高のほとんどを海外で過ごした山本は、社会的マイノリティのエンパワーメントに興味を持つようになった。

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山本  「高校時代はドイツのインターナショナルスクールに通っていたんですけど、学年にアジア出身の生徒は自分だけ。自分が自分でなくアジア人として括られて心ないことを言われることがある。そこに何か負い目を感じていました。

そんなある日、ボランティア活動でネパールに行き現地の山岳民族の若者と出会ったんです。当時、『アジア最貧国』と言われていた国で、出身地域に学校がなかったり、経済的に厳しい家庭出身で、一家で高校に行けているのは自分だけ、という生徒たちが多かったのですが、自分自身の夢の実現と同時に自分のコミュニティとか社会をもっと良くしていきたいっていうビジョンをしっかりと持っていました。

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△ネパールの山岳民族の若者たちと

これがきっかけで、社会の逆境に立たされたとき、マイノリティであることをコンプレックスに抱くことも、その経験をバネにして社会を良くしてゆく原動力にもなれるんではないかと感じました。」

この経験がきっかけで大学進学後も、民族、ジェンダー、ルーツ、言語、など多様なアイデンティティを活かすまちづくりを学びにカナダ、バンクーバーへ留学。その後、国内でも、多様な背景や個性をもつ「移住者」に光を当てたまちづくりを推進する北海道・下川町で、一年間、産業振興・地域活性インターンシップに従事。そして下川町への移住前に、代表渡部と出会ったことが「難民」と呼ばれる人たちの課題感、そしてそのソリューションとなるJobCopassのサービスへと繋がったようだ。

山本 「下川町でのインターンに行く前、知人の紹介で渡部に会う機会がありました。確か第一回目のWELgeeサロンでしたね。

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△第一回目のWELgeeサロンの様子(プライバシー保護の観点で、一部画像を加工しております)

そこで会った難民の方達の『僕たちも日本社会に貢献できることがあるんだ。そのことを証明するチャンスが欲しい。』という言葉がとても印象的でした。その後下川町にインターンに行ったわけですが、そこで目にしたのは、移住者が活躍する先進的な地域でさえ、産業界全体で働き手の減少が進むのと同時に、会社や産業の未来を担っていけるような、ビジョンとガッツのある若手が不足していることに気づきました。

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そこで難民の青年の言葉を思い出したんです。日本にやってきた難民というマイノリティを日本社会でエンパワーメントする仕掛けができれば、彼らが今の日本社会が抱える問題を解決する同志になるんじゃないかと。」

こうして2017年にWELgeeに参画した山本は、様々な仮説検証を経て、現在の就労伴走事業部での活動に至っている。10代の経験と日本で出会った難民の言葉。これらが現在の山本を形作ったといえる。

現在、就労伴走事業部では、3名のスタッフを中心に事業を展開している。難民人材の雇用という、前例のない取り組みは、難民・企業双方にとってチャレンジもある。だからこそ難民の人材と企業双方に寄り添った丁寧な伴走を展開していくという。 

JobCopassの特徴は、「難民人材の厳選と長期的な伴走」

JobCopassを一言で言えば、難民人材と企業のマッチングである。しかし企業にとっては「難民」と呼ばれる外国人を採用することは未知の領域で、不安もあるはず。JobCassには、その不安を取り除き、人材の価値を発揮してもらうための2つの特徴がある。それは難民人材の厳選難民人材・企業様双方への長期的な伴走だ。

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△JobCopassの事業スキーム図

山本  「私たちはJobCopassを通じて、難民の人材をご紹介するにあたって、何度も面談を行い、WELgeeが提供する様々な機会でチームメンバーとして協働する経験を重ね、ビジネスシーンで活躍できる人材を厳選していきます。

例えば、WELgeeサロンへの参加回数、私たちが企業様に対して行っている研修、そのほかのイベントなどで、どのくらい日本の人たちと積極的にコミュニケーションをとっているかといった側面を、定量的・定性的に判断しています。その中で日本のビジネスシーンにおけるマナーやコミュニケーション方法を身につけたり、自分の強みを発掘し言語化できるように、実際にマッチングまでその人をエンパワーしていきます。

リーダーシップ、コミュニケーション能力、強みや個性を見極めた上で、企業様に紹介しています。

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△WELgeeの企業研修では、難民の人材が「アンバサダー」として登壇する機会がある。自己の経験を内省したり、人に伝えるためのコミュニケーションを行うことが、人材一人ひとりの就職にも役立つ。

また、彼らとの深い信頼関係と相互理解も、必要不可欠な要素です。難民の人材に限らず、人材が会社の文化や目指す方針にいかにフィットするかを考えるときに、本来はその人をより深く知っていることが重要だと思います。マッチングしてからの定着率にも繋がっていきますからね。」

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△昨年末の年越しで集まった様子。WELgeeでは一人ひとりの難民を「人材」として見ているだけではなく、家族のような存在として接している。

最後にも述べられていたが、採用後の定着率は採用する企業にとっても一つのハードルになることが予想される。そこでWELgeeは難民人材・企業双方への長期的な伴走を通じて、人材が社内で能力を発揮できるように徹底的にサポートしていくという。

山本  「私たちは人材と企業をマッチングさせて終了ではなく、そこからが本当の大事な部分だと思っています。人材は難民申請者という以前に外国人であり、一人の個性ある人間です。新しい人間関係や、職場のコミュニケーションスタイル、企業文化に定着し、パフォーマンスを発揮できるように伴走することが重要です。そのために私たちは難民と会社さん、双方に寄り添った、サポートをします。

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具体的には、月一以上の頻度で難民の人材と面談を行い、企業さんとも少なくとも半年間はフォローアップのための面談を、月1以上で行ったり、必要になったらグループやチーム全体が参加するセミナーも企画・開催します。

例えばある企業の社長さんが強い想いを持っていて、難民人材を採用したとします。とはいえその新しい社員と一緒に仕事をするのは現場のマネージャーさんや社員さんなので、マッチング後のフォローアップは、現場の方々を中心にやっています。うまくいっている部分だけでなく、コミュニケーションのズレや心配事、人間関係などいろいろな話を聞いた上で、難民の人材にも働きかけて、会社さんにも第三者目線でアドバイスをさせていただき、良い方向性を一緒に模索します。

実際にこれまでの事例では、難民の人材が、部署がフィットしないということがわかった際、他の部署だったら彼の持ち味がもっと活かされるんじゃないかという話をして、違う部署でお互いに納得感をもって働けている。といったこともあります。」

逆境の中でゼロイチを生み出してきた、25人のグローバル人材たち

では実際に日本やってきた難民の人たちは実際にどのような『人材』なのか。企業にとって『難民を採用する』ことにどんなメリットがあるのだろうか。山本には現在、日本の企業に特に推薦したい25人の難民人材がいるという。

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山本 「現在、いろいろな方との面談を重ねていく中で、日本企業に繋げたい難民の人材は25名います。まず、出身はアフリカ8割、中東・アジア2割といった感じですね。その多くが20代・30代で、彼らの持つ背景は多種多様です。

ビジネスコンサルティングの経歴もあれば、科学研究施設でのキャリアがある人もいます。医者、弁護士、教師、社会起業家、銀行員、ジャーナリストなどの本当に多様な職歴のある人材がいます。

その中で彼らを選んだ共通点は、『自分でゼロからイチを生み出した経験』です。社会情勢やが不安定だったり、困難な状況にいるという事実があったとしても、その中で自分のビジョンや志を抱き、ビジネスや様々な活動を通じて想いを形にしている、といったところですね。例えば、アジアに留学経験があり、そこから自動車をアフリカに輸出入するようなビジネスをフリーランスでにやっていた方や、銀行員をやりながらwebメディアを立ち上げた方、医者でありながら政治活動でリーダーシップを発揮していた方もいます。そういった意味で自分らしい人生を切り拓いてきた25人を推薦しています。」

新たな挑戦を考えている企業さんへと伴走したい

とは言っても、「難民」という背景のある若者たちを採用することにハードルを感じる点もあるかもしれない。どのような企業さんたちにこのサービスを利用していただきたいのか。山本はこう話す。

山本 「以下の4つのうち一つでも当てはまった企業様は、一度是非お話をさせていただきたいです。先ほども話しましたが、私たちが紹介したい人材は、こうした目標達成に貢献できる能力を持っています。」

①海外進出したい。(特にアフリカ大陸)   
②既存のサービスをアップデートしたいもの。
③新規事業開発。 0→1 事業を立ち上げたい
④社員の意識改革をしたい。

これまでの事例において、企業さんたちがそのようなビジョンや想いを持って難民人材を採用してきたのかも話してもらった。

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山本  「これまでに7人の難民の人材が、様々な業界や職種で活躍するに至っていますが、企業さんとのマッチングでの共通点としては、難民の人が『かわいそうだから雇います』ってところではありません。

『これから社会で新しいサービスやビジネスをしていきたい』、『自社の経営の体制をこれからどんどん新しくしていきたい』、『今の社会に合った形でアップデートしていきたい』という会社様より興味を持っていただくことが多いです。

その中で、ヤマハ発動機様は、採用した人材の『異国での起業経験だったり、教育者としてのキャリア、そして彼が醸し出していた人徳、人柄』を評価してくださいました。ヤマハ発動機様がこれから異文化や新しいマーケットで01の新規事業を立ち上げていくという、困難な状況の中でも信頼を勝ち取りながら、着実にビジネスを前に進めていけるキーマンになれるんじゃないかと期待されています。」

日本社会が見逃してきた可能性と、共創(Co-Creation)できる社会へ。

まだ開始したばかりのJobCopassではあるが、山本はこのサービスを通じてどんな日本を夢見ているのだろうか。

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△多国籍な若者たちと作業するWELgeeメンバー

山本 「これまで日本社会が取りこぼしてきた才能を拾い上げて、難民の若者たちもその一員として一緒に新しい社会を作っていけるっていうのが今後10年の大きな目標ですね。

難民の人だけが生き生きと働いているのではなく、会社さんにとっても、自社で思い切った変革を生み出していくきっかけとして、難民の人たちの存在を活かして欲しいです。

自分らしく活躍できる社会というのは、様々な苦境を強いられている若者たちも活躍できる職場になるんじゃないかなと思っています。そういった仕掛け作りをNPO や自治体、地域の中小企業、行政、他業種のコラボレーションとそれによって出会っていく今まで社会が見逃してきたユニークな可能性溢れる人たち、そういう人たちとのCo-Creationの状態が理想の状態だと思います。」

最後の言葉として、山本はこう語った。

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山本 「JobCopassを通じて企業さんに紹介するのは、時期尚早だけれども、時間をかけてスキルアップしたり、成功体験を重ねて意欲が高まれば、もっと活躍できるようになる人たちっていっぱいいるんだよね。

そもそも紛争のせいで、安定して学歴やキャリアを積み上げる環境がなかった人とか、女性であるがゆえに周囲からずっと『あなたになんてできない』って言われ続けた人とか...社会的に優位な立場に生まれて、経済力もあって学歴やキャリアを積む余裕もあった人とはスタートラインがちょっと違うっていうだけ。

逆境のなかで自分らしい道を切り拓いてきた経験や、元々持っている個性に光を当てて、そこを伸ばしていくことで、活躍できる人たちももっといます。だから日本企業での就労に向けて『I am ready(もう活躍できるよ!)』という人だけでなく『I am getting ready(そろそろ活躍できそう!)』という人も、時間と工夫を重ねてエンパワーして、活躍の場面を広げていきたいと思います。 」

ようやくスタートラインに立ったJobCopass。真摯に難民の人たちと向き合い、この事業に全力に取り組んでいるからこそ出てきた言葉なのだろう。いかにも山本らしい言葉だった。

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