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「難民」がつくる恩送りの世界 〜"This Month's Feature 今月の特集" Vol.1〜

今月からスタートする"This Month's Feature 今月の特集"

この企画は月に1度、WELgee活動の最前線でどんなことが起きているのかをお伝えするコーナーです。難民の方々の個々の物語や、WELgeeに関わる様々なステークホルダーの方々の声を含め、私たちの日々の活動の様子をお伝えしてゆきます。

第一回となる今回は、就労伴走事業部の山本に8月から始まった新たな取り組み"Senpai Session"についてお話を聞きました!

Senpai Sessionとは
すでに日本で就職しキャリアを築きはじめている"先輩”の難民の方々が、現在日本で新たなキャリアに向けて頑張っている難民の方々へ、自身の考えや経験を共有するセッション。"先輩"によるプレゼンと、先輩・後輩の活発なQ&Aセッションから構成される。2020年8月にスタートし、毎月開催している。

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▲1回目のSenpai Sessionの様子。就職した先輩Sさんの話を聞くために、就職活動中の後輩6名が参加した。

1人の「難民」のアイデアから生まれた

山本「Senpai Sessionは、WELgeeと長年共に歩み、JobCopassを通じてヤマハ発動機への就職を果たしたしたSさんが、何かWELgeeへ貢献したいとの思いで提案したアイデアから実現したプロジェクトです。」

▲JobCopassについてはこちら。

日本での新しいキャリアを築き始めた難民の"先輩”たちがどのような考えを持ち、どのような道のりを経て、現在に至ったのか。その経験を、現在就職活動に励む人たちに共有するセッションをしたらどうかとSさんが提案したそうです。

山本「難民の方々がWELgeeともっと関わってくれるようになって就職活動も増える。企業さんとのマッチングも増えて信頼関係も築ける。難民の方々にとっても、企業さんにとっても、WELgeeにとっても素晴らしい提案だ!と感じました。」

そうして始まったSenpai Session。
続いて、現在までに開催された2回のセッションについてリポートしていきます。

"先輩"からもらった勇気

第1回のセッションは、発案者のSさんが登壇者となって2020年8月にオンラインで開催されました。そこで山本が感じたのは参加者同士のエンパワーメントでした。

「8ヶ月待ってやっと就労許可が得られた。でもハローワークでは自分の日本語力とビザでは安定した仕事に就くのは難しいと。そう言われて1週間すごく落ち込んでいたんだ。」

これはQ&Aセッションの際に参加者から寄せられた声の一つです。

「自身も13回以上仕事を断られた。でもそこを経てからじゃないと見えない景色があった。」そう語ったのはSさん。他の参加者からも同意する意見が多く挙がったそう。

▲ヤマハ発動機に就職をしたSさん。Sさんの採用を決めた上司や同僚の方々のインタビュー。

山本「諦めたほうがいいという人たちに囲まれていた時よりも、その悩みを共有しながらもキャリアに向けて頑張っている人や、実際に困難を乗り越えて就労した人たちと交流したことが、質問をした参加者にとってとても励みになったようです。「本当に日本でのキャリア構築が実現可能なんだと知れてよかった」と最後にはとても笑顔になっていました。」

"You are an inspiration."(Sさんに対して、あなたのおかげで励みになった、感激した。)

参加者がこぼしたこの言葉から参加者がセッションで得た勇気を感じ取ることができます。

「チャンスに飛び込む」参加者が得た新しい可能性

第2回のSenpai Sessionは、2020年9月に開催されました。

登壇したRさんは、母国で中国語教授法を学んだ文系のバックラウンドから、エンジニアとして採用された異色な経験の持ち主。WELgeeと共に活動する中で、あるベンチャー企業からプログラミングを学ぶチャンスを得て勉強し、それが認められてそのまま正社員として採用されました。

「難民というバックグラウンドがあっても、できることがあると証明するチャンスをもらった。誰かがチャンスをくれたら、その条件等を交渉する前に全力で自分を認めてもらいなさい。」(Rさん)

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▲現在Rさんは、バックエンドからフロントエンドまでさまざまな案件をこなせるフルスタックエンジニアとして活躍しています。

山本「難民の方々の中には、学位や国際的な資格などの証明を得ようとする人が多いです。政治的・社会的に不安定な環境にいた経験から、証明書という心理的な安心を求めているのかもしれません。でも、日本での就職では証明書よりも経験や実践が重視される傾向にあります。Rさんが証明書ではなく、真剣さと集中力をもってチャンスに取り組み自己実現をした経験は、セッション参加者があたらしい視点を見つけるきっかけになったと思います。

セッション参加者にとってはすぐにピンと来ないかもしれません。でも今後そういうチャンスに彼ら自身が直面した時にどう反応するのか、一つの可能性になったと思います。」

就職活動中に出会う様々なチャンスにまず飛び込む。仕事や学業の実践を通して自分自身の能力を証明する。参加者の間にそんな新しい可能性を広げた第2回目の開催となりました。

日本でも、もっともっとできることがある

山本自身が感じるSenpai Sessionの魅力についても聞きました。

山本「私が開いているZOOM画面の中で、コンゴ、ナイジェリア、アフガニスタン、シリアと国籍もバックグラウンドも多様な方達が、どうやったら日本でキャリアを作れるかと話している光景自体が相当すごいことだなと思っています。」

故郷を追われなくてはならない状況になっても、日本でもう一度挑戦していく気概を持つ彼ら。そんなグローバルなチェンジメーカーのエコシステムが今日本に生まれつつあります。

山本「Senpai Sessionに参加して、日本でももっともっと難民や多様性の課題に参画できるし、いろんな国出身の若者たちとより深く関わっていきたいと感じました。」

山本は大いに目を輝かせてそう語ってくれました。

▲就労伴走事業部の山本の原点ついての記事はこちらから。

恩送りの輪を広げる

次回のセッションは2020年10月に開催予定です。山本にSenpai Sessionの今後の展望について聞きました。

山本「一つは今、頑張っている人たちへのキャリア教育。自分自身を見つめ直して、自分が何をしたいか、自分が実際に何ができるのか、市場における自分の相対的な価値を考えられる場所にしたいと思っています。日本社会の仕組みについて学べる場にもしていきたいです。」

実際に日本で仕事を得た難民の方々の体験談以上に充実したコンテンツはない、と言う山本。また、Senpai SessionはWELgeeが現在抱える課題解決へのアプローチにもつながると語ります。

山本「WELgeeが今関わっている人は、学歴や職歴があり人柄も良い人が多いんです。でもこんな質問をよくいただきます。自分の可能性を信じられなくなったシングルマザーは見捨てるのか、と。学歴や職歴などのリソースのピラミッドの頂点に近い難民の方々としか動けていないことに課題を感じています。

今WELgeeでは、難民の方々が人材として活躍して日本社会や世界に貢献するという、これまでの日本になかった事例を作ろうとしています。最初にそれを一緒にできるのは、やはり若くてリーダーシップの経験があったり、学歴があったりする人に限られてしまっているのが現状です。

でも彼らが成功してロールモデルになれた時、Senpai Sessionは今頑張っている人、まだ彼らほど就職のための準備ができていない人にペイフォワード(恩送り)する場になります。一緒に突破口を切り開いてきた難民たち自身がWELgeeの仲間となって次世代の人たちをエンパワーする環境を作っていきたいです。」

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▲就労伴走事業部の山本

境遇にかかわらず私たちは同じ

「難民」と呼ばれる人たちと自分は全然違う。その気持ちは誰しもが経験してしまうことだと思います。

しかしSenpai Sessionのお話を聞く中で、私たちの根底に流れているものは同じだと感じることがありました。

Senpai Sessionに登壇している難民の方々の根底にある想い ー 「恩送り」をしたいという気持ち。

この記事を読んでくださっている皆様の中にも同じような想いを抱いたことがある方も多いと思います。

例えば、体調が悪い時に電車で席を譲ってもらったように、今度は自分が誰かに席を譲ろう。例えば、自分が先輩に教えてもらったように、今度は自分が後輩の支えになりたい。

そんな「恩送り」を続け、未来をつくっているのは、自分も「難民」と呼ばれる方々も同じ。

「自らの境遇にかかわらず、ともに未来を築ける社会。」
WELgeeのビジョンを体現する企画"Senpai Session"から今後も目が離せません。

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