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《イベントレポ》気持ちを言葉にするって、大人にとっても難しいよね/TOKETA発売記念トークイベント01「TOKETAって何だろう?〜TOKETAを通して里親家庭を知る〜」

2023年1月24日(火)。 
今季最大の寒波がやってくる!というニュースで日本中が持ちきりだった日、TOKETAの記念すべき初トークイベントを開催しました。

ゲストは大妻女子大学准教授で、「里親家庭で生活するあなたへー里子と実子のためのQ&A」の著書でもある山本真知子さん。
聞き手はTOKETAの企画者であり、福祉とデザイン理事の田北です。

告知が直前だったにも関わらず、予想以上に多く方にご参加いただき、寒波も吹き飛ばす?アットホームな暖かい雰囲気で終始イベントを進めることができました。ご参加いただいた皆様ありがとうございました・・!

ゲストの山本真知子さんは小学生から里親家庭の実子として育ち、
著書「里親家庭で生活するあなたへー里子と実子のためのQ&A」は、TOKETAの参考図書としてカードキット内の冊子でもご紹介しています。
TOKETA制作の際も、アドバイザーとしてご協力いただきました。

<トークイベント概要>
・TOKETAの説明(田北より)
・ゲスト自己紹介と著書「里親家庭で生活するあなたへ」出版の経緯
(山本さんより)
・山本さん、田北によるトーク
・参加者の方からの質問コーナー

イベントのテーマは「TOKETAって何だろう〜TOKETAを通して里親家庭を知る」でしたが、現状や課題など表面的なことに留まらず、そもそも言葉にすることについての難しさや子どもの声を聞くこと、子どもアドボカシーについての登壇者の見解などなど、広く話が及びました。

全てはお伝えできませんが、私が印象的だった部分をいくつかピックアップしてみました!

人と人との繋がりを作ることがアドボカシー

山本さん自身、子どもの頃を振り返ると気持ちをなかなか言葉にすることができなかったそうで、周りに実子の気持ちを理解してくれる人もいなかったため、ニュアンスが伝わらなかったり深い話ができないことに悩んでいたそうです。

※以下<>は山本さんの言葉をまとめた部分です。

<里親家庭で生活する子どもたちが初めて気持ちを言葉にできたと感じる瞬間は人によって様々で。同じ環境下にいる子ども同士で話をする中で言葉を獲得していくこともあるし、大人になって実子や里子同士で関わる場を通して言葉にできることもあります。結婚や子どもが生まれた時に改めて気づくことがあったりも。
初めて言葉にできた時に、話をただただ聞いて受け止めてくれる人が社会のどこにいるのか、長い目で見たときに応援団がどこにいるのかなと。
その人が「生まれてきてよかった」と思える社会を作るためには、年齢で区切ったり、措置が切れたらそのような応援団がいなくなる、という仕組みでは違うと思う。制度という枠組みではなくて、人と人とのつながりをつくることがアドボカシーだと思っている> 

私は正直、子どもアドボカシーを「社会的養護の子どもの声を聞く」ことだと安直に捉えていたところがあったような気がします。
措置されている・保護されている時期に目が行きがちですがもっと長い目で見て、子どもの声を聞くことを普遍的なものと大きく捉えていくことが必要なんですね。「その人が生まれてきてよかったと思える社会を作る」という部分にも、ハッとさせられました。

気持ちを言語化するって大人でも難しくない?

<TOKETAを見て思ったのは、子どもとする前に、まず夫婦でやってみるとか大人同士でやってみてほしい。ちゃんと自分の言葉で気持ちを言語化できてるって本当にそうかな?って。質問されて答えられない人だっていると思う。そんなことを子どもに聞けばいいとずけずけとやってしまうのはおかしいのではないか(笑) 自分に問いかけるために「こんにちはカード」を使ってみたり、「おうえんカード」でエコマップを作ったりしてどんな応援者が自分の周りにはいるのかなとか、困った時に誰に相談できるのかなと気づくべきです。まず、大人側、支援者側が使ってみてほしいと思いました>

ここは私「確かに・・・」と深く頷いてしまいました。TOKETAで子どもの声を聞こう!と(ずけずけ)言っている自分自身はどうなんだと(笑)。自分の気持ちや、何が好きとか、どうしてそう思うのとかって、大人でも言葉にするのが難しい時ってありますよね・・。
まずはTOKETAを使って言葉にすることを自身で体験することで、次に子どもと一緒に使った時に自分が発する言葉や聞き方など、向き合う姿勢が変わったり、相手と目線を同じにすることが今より少しできるようになるでは・・と思いました。
やってみよう!

支援の選択肢を広げる!

山本さんは里親会などの活動の中で感じた仲間同士の支え合い「ピアサポート」の場の重要性についても言及されていました。それもユースの活動ではなく、幼児や小学生などもっと早い時期から集える場所を提供していくことが必要だということです。

<子どもたちだけで、気持ちを言葉だけじゃなく、遊びや他の方法で自由に表現したりできる場所の提供を第三者の大人がやっていくことが大事だと思っています。それが「ピア」から「セルフアドボカシー」につながるのではないか。人によっていろんな環境がある中で今は支援のメニューが少なすぎます。提供できる支援の選択肢を広げていくことがこれからの支援で大切なポイントではないか。また、障害があったり、年齢が小さかったり、どんな子どもでも機会の保障ができることも大事ではないかなと思います>

ピアの場を提供することは、支援者側に高い調整能力が必要だったりと、環境設定にハードルもあるようですが、子どもの力を信じること、諦めず取り組んでいくことで、子どもの年齢や背景など個々のニーズにあった支援ができる「選択肢を広げる」ことの実現につながっていくのではないでしょうか。

私は今回のイベントを通し、里親家庭の現状や課題を知ることだけでなく、子どもアドボカシーについて向き合う姿勢や、制度化や実践を考える中で狭くなりがちな視点を改めて広く捉え直すきっかけになった気がします。

正直、初のオンラインイベントということで緊張もしていましたし、専門用語も出てきたり、話についていくことに必死ではありましたが(汗)最後にはアドボケイトや里親さん、里子経験者の方など様々な立場から意見を聞けたこともあり、とても充実したあっという間の1時間半でした。

次回のテーマは「子どもアドボカシーとデザイン」です!

トークイベント2回目のテーマは「子どもアドボカシーとデザイン」です。

1回目で私なりに深めた子どもアドボカシーについての理解を前提に、次はデザインの観点からどのようなお話が聞けるのか・・とても楽しみです。(というか、もはや私の学びの場にもなっていることはお気付きでしょうか。)

オンライン配信もありますので、皆様奮ってご参加ください。乞うご期待です!

<文責:福祉とデザイン 新開>


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