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文字書きの私が創作をする上で大切にしている4つのフロー

みなさんは同人誌を作るとき、どんなことを考えて作っているでしょうか。
私は2年前まで、ほとんど何も考えられていませんでした。

自分の好きなものを、好きなように作る。
それが誰かに響いてくれたら、それだけで良い。

そう思って二次創作の本を全力で作っていましたし、それがまちがっていたとも思いません。
でも、一次創作で本をつくるようになってから、考えを改める必要がでてきたのです。

なぜ考えを改めることになったのか?

私は今、文字書きとして二次創作で小説を書く活動と並行し、
『SILFANY』『Nia』という、オリジナル企画の運営・発行をしています。

・SILFANY(シルファニー)
短編小説誌。
素敵な小説を書かれる作家さんをお招きし、雑誌として発行する。
目的は、素敵な文字書きさんのことや物語のおもしろさを世に広めること。

・Nia(ニア)
コラム雑誌。
文字書きさんにとってすぐに役立つ基礎的かつ具体的な情報を特集する。
目的は、文字書きさんの創作活動を少しでも楽しく、おもしろくすること。

二次創作での勢いそのままに、上記の一次創作活動を始めようと思った時、大きな壁にぶつかりました。
率直に言って、一次創作は手に取っていただくことそのものが、なかなか難しい現実を目の当たりにしたのです。
このことが、考えを改める大きなきっかけとなりました。

個人的に、二次創作と一次創作には下記の違いがあると考えています。

二次創作
自分が好きなキャラクターを同じように好きだという方がこの世界に存在している。
需要が初めからある程度存在する

一次創作
0ベースの制作。
初めから自分の作るものを好きだと言ってくれる方は基本いない。

つまり、「私の好きなもの」を、好きなように書いて作っていた二次創作を始めたての頃とは違い、一次創作では「届けたい誰かに届くようなもの」を作る必要がでてきたのです。
目的語が自分から他者に、明確に変わった瞬間でした。

そうなったとき初めて、

・私はどんなものを届けたいのか?
・そのためにはどんな内容が必要か?
・具体的には誰に届けばいいのか?
・その届け方は?
・届けた後は、どうしたらうまく伝わるのか?

といった様々な疑問が湧いてくると共に、このままではだめだ、と思いました。
「どんなに良いものを作っても、伝わらなければ意味がない」という、
あたりまえのことに気づいたのです。

そんなわけでこの記事では、普段私が同人誌をつくる上で、

届けたいものを届けるために、何を意識してどのようにつくっているのか?

という、本質的なノウハウの部分を、

フロー①:考える
フロー②:つくる
フロー③:届ける
フロー④:伝わる

という4つのフローに分けて説明していきます。

フロー①:「考える」

i 何を作るか考える:制作物の整理
まず初めに、作りたいものを明確にします。
大分類からいくと、オンライン/オフラインどちらで発行するかの整理からスタートします。

・短編なのか長編なのか
・表紙はイラストをお願いするのかどうか
・特殊装丁にするかどうか

など、基本的な情報を整理していく作業です。


ii 誰に届けるか考える:伝達先の整理

何を作るか決めたら次は、「誰に届けるのか?」を考えます。
これは③の「届ける」で考えることなのでは?と思う方も多いかもしれません。
ですが、①の段階でこれを考えることが重要です。
なぜならそもそもの「届ける人」を間違うと、「届け方」がどんなに素晴らしくとも響かないためです。

ピザが食べたい人に対して最高のパスタを最高の方法で届けても、「僕が食べたいのはピザなんですが…」となり、困惑させてしまいますよね。
よってここでは、「何を」で決めたものを、「誰に」届けるのか、確認しておくことにしています。

二次創作であれば、本の中で取り扱うキャラクターやカップリングが好きな人が「届ける人」になります。
オリジナルの場合はさらに細かく、

・小説に興味のある人/ない人
・普段小説を買う習慣のある人/ない人

など、分類を進めるようにしています。

オリジナルの場合は二次創作と違って、自分という作家の作るものに0ベースで興味を持っていただく必要があるので、より厳密に届けたい人を整理しています。
「③届ける」フェーズでは厳密に言うと、ここで考えた抽象的な考えや情報を、具体的な手法に落とすかたちになります。

ⅲ どのようなものを届けるか考える:価値の整理
何を、誰にが整理されたら次は、「どのような」について考えます。
具体的には、お手に取ってくださった方に「どんな気持ちになって欲しいのか?」「どんな行動をしてほしいのか?」を考える作業です。

小説本であれば、読了後に感動してほしいのか、驚いてほしいのか。
Niaのような技術書/コラム系であれば、それを読んで自分の創作にすぐ活かせるレベルの行動ができるようになってほしいのか、創作のモチベーションがあがってほしいのか、ということです。
つまり、「自分のつくるもので、どのような価値を届けたいのか?」を考えるフェーズです。


ⅳ どのように届けるか考える:手段の整理

どのような価値を届けるかを整理したら最後に、「どのように」届けるのか考えます。

作品を公開する場所はツイッターなのか、Youtubeなのか、Pixivなのか。
発信するツールはツイッターを使うのか、何を使うのか。
頒布方法は、イベントのみなのか、自家通販するのか、書店さんに委託をお願いさせていただくのか。

など、手段を整理していきます。

フロー②:「つくる」

**思考と実行を明確に分ける
「つくる」段階に入ったら、
「思考フロー」と「実行フロー」を必ず分けるようにしています。

わかりやすく言うと、小説であれば、

プロットを作る=「思考フロー」
小説を書く=「実行フロー」

です。

プロットがあれば、物語の全体観や設定、どのようなことを書いていく必要があるのかが事前にわかります。
考えながら手を動かすのは非効率ですよね。

小説を書きながら先の展開や設定を考えながら進めると、論理破綻に書いている途中に気づいてしまうことになりかねません。
そうすると、一生懸命書いていたものを書き直さなくてはならず、大幅に手戻りしてしまいます。

一方で、プロットで事前に塾考しておくことができれば、あとはそれに沿って黙々と手を動かしていくのみ、ということになります。
もちろんプロットを必ず作るべき、と言っているわけではなく、小説の中長編のような、何を書くべきかを事前に整理しておいた方がうまくいきやすいと思う場合の一例です。

フロー③:「届ける」

**「知ってもらう」ための回数を増やす
「届ける」フェーズでは、いわゆる「告知」や「お知らせ」の部分を行います。

私はこのフェーズにどうしても、昔から苦手意識がありました。
具体的には、自分のお知らせを何度もリツイートしたり、ツイートしたりすること。
私の気持ちを見てくださる方に押し付けてしまっているようで、なんだか申し訳ないことのように感じる気持ちが拭えなかったからです。
一方で今は、お知らせ、つまり「届ける」ための行動は非常に重要なことだなと考えが変わってきました。

マーケティングでは「AIDMA(アイドマ)」という言葉が使われます。
これは、人間の購買行動は下記の5フェーズに分かれるという、
サミュエル・ローランド・ホール氏によって提唱された購買行動モデルです。

A…認知・注意(Attention)
I…興味・関心(Interest)
D…欲求(Desire)
M…記憶(Memory)
A…行動(Action)

このモデルにのっとって考えると、
まず「認知(Attention)」がないと話が始まらないことになるのですね。

たとえば、ツイッターでのお知らせについて。
最初の告知が21時だったとして、そのときツイッターにログインしていない人には物理的に目に入らず、認知されないことになります。
よって、翌日の20時にリツイートしたり再度お知らせすることは、初回のお知らせを見逃してしまった方に届けるためには有効なことと考えられます。

このように、作るってなんだろう? 届けるってなんだろう? 
ということを突き詰めていった結果、
むしろ、自分が「良いものを作っている」という自負があればこそ、
「良いものの存在を知らないまま終わっていく人がいる」という状況を避けるべきという考え方に変わりました。

たとえば、

「良いと思えるものを作ったのに、手にとってもらえなかった」

という状況があったとします。
そのとき、

「それは多くの人にとっては良いものではなかったのかもしれない、自分に改善の余地がある」

と思うのと同時に、

「手にとってもらえなかったという現実は、何の要因によって起きたのか?」

ということも考える必要があると思うのです。

手にとって頂けなかった要因は、「作品の質」なのか「告知の手段」なのか「視覚的要素」なのか。
要因を決めつけるのではなく、冷静に判断していくのですね。

そしてその要因が、「告知の手段」や「告知の頻度」だった場合。
「届ける」フェーズをしっかりと考えることで、「良いものを作ったが、知られることがなかった」という状況を避けることができるということです。


フロー④:「伝わる」

**共感を作る
自分の作りたいものを一生懸命作って手取っていただけたとしても、伝わらなければ意味がないですよね。
では、「伝わる」とは何か? という話になるのですが、

「伝わる」とは、相手にとって「理解/共感できること」

だと考えています。
要するに、一方的ではない、双方向的なコミュニケーションです。

「伝える」は、

「伝える」= 私が、私の思いをあなたに伝える

一方的なコミュニケーションになりますが、

「伝わる」は、

「伝わる」=私の思いが、あなたに伝わる

となり、主語が「私」から「私の思い」に変わります
文章を言い変えると、

「伝わる」=あなたが、私の思いを理解/共感する、受け止める

となり、双方向的なコミュニケーションに変わります。
よって、創作を行うときは、「理解や共感」を大切にしたいといつも思っています。

人間の脳は基本的に、神経と神経の繋がりでできているそうです。
神経同士の繋がりが記憶や理解の源だとすると、共感も既知の情報同士に繋がりを持たせることで得られるのではないかと考えています。
こいつは突然なにを言いだすんだ? という話かと思うのですが、
「理解も共感も、ある程度意識して作れる」ということを言いたいのです。

私たちは何かを理解するとき、

・関連性
・共通性
・普遍性

といったルールを見つけると理解や共感が速く、深くなります
たとえば、「ZINE」という言葉を初めて聞いたとき、

「ZINEは、個人で作る雑誌のことで、語源はmagazineからきてて〜」

と説明されるよりも、

「ZINEは同人誌みたいなものだよ」

と言われた方が、理解も納得も速いですよね。
これは、「共通性」のルールにもとづいて、脳が「同人誌」という既に知っている知識と「ZINE」という新しい知識を結びつけて起きていると考えられます。
よって、何かをお伝えするときは「理解/共感」を呼び起こすために、

・私がつくったものと届けたい方の中に「共通」する部分がないか
・「関連」する部分がないか

などを探し、そのエッセンスを伝え方に混ぜ込むということをしています。

まとめ

■創作をする上で大切にしている4フロー

①考える
・何を作るか考える:制作物の整理
・誰に届けるか考える:伝達先の整理
・どのようなものを届けるか考える:価値の整理
・どのように届けるか考える:手段の整理
②つくる
・思考と実行を明確に分ける
③届ける
・「知ってもらう」ための回数を増やす
④伝わる
・共感を作る

以上です。

長々述べてきてしまいましたが、
このようなかたちでいつも私は、Niaや自分の小説を作っています。

もちろん、時間がなくて考えきれないとき、詰めきれないときもあります。
自分の思考や技量が足りずに、伝えきれないことや伝わらないこともあります。

でもいつでも、「伝わるものをつくりたい。そして、伝わるそれが、お手に取ってくださった方にとって良いものであるように」と思っているので、日々精進しているのでした。
創作に活かせそうなエッセンスが、少しでもありましたら幸いです。


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最後までお読みくださいましてありがとうございます!