スタッフインタビューVol.3:駆け出しデザイナーの2年間、リアルレポート。
今回の週刊GRAPHはスタッフ紹介インタビューの第3弾!
これまでは経験豊富なスタッフに話を伺ってきましたが、今回はGRAPH東京オフィスの最若手! デザイナーの加藤大貴さんに登場していただきます。
GRAPHでは現在、一般的な新卒採用はおこなっていませんが、加藤さんはほぼ新卒でGRAPHに入社し、2020年2月で3年目。デザイナーとして多くのプロジェクトに関わっています。
代表の一成さんからしたらちょうど息子のような年齢でもある加藤さんに、GRAPHに入社するまでのこと、そして入社してからの2年間についてお聞きしました。
人を動かすデザインに惹かれ、富久錦のCIに衝撃を受けた学生時代
▲3年目の加藤さんのデザインに大いに期待!
加藤さんは2017年3月に大学卒業後、東京のデザイン事務所でのアルバイトを経て、翌年2月にGRAPHに入社しました。
「もともと美術が好きで、高校でも美術部に入っていました。アートに興味をもつうちに、“デザイン”ってすごいなと思うようになりました。
デザイナーが意図してつくったデザインによって、手に取らせたり、行動を起こさせたりと、人を動かすことができますよね。
アートも人の心を動かすことはありますが、パーソナルな表現としてではなくて、受け手に対してのデザイナーの意図が介在している、というところに強く興味を惹かれました。
そうして、デザインが学べる美大に進学したのですが、大学時代の最初の2年間は“グラフィック”や“プロダクト”などの特定のジャンルではなく、より根源的な、“デザインとは何か”といったことについて学んでいました。人とデザインの関係とか、環境から自然と生まれ、形作られるデザインとか。
大学3年生のときにビジュアルデザインに転科してから、グラフィックデザインに取り組むことになりました」
そして大学の授業で出された課題に取り組むうち、出会ったのがGRAPHのデザインでした。パッケージデザインの事例をピックアップしていく中で、Pinterestに挙げられていた「富久錦」のCIデザインを目にしたそう。
「すごく素敵なデザインだなと目に留まりました。そしててっきり最近つくられたものだと思っていたら、調べていくうちに1990年代にデザインされたものだとわかり、大きな衝撃を受けたんです。
もっと昔からあるようでもあるし、今の時代でもまったく違和感のない新しさも感じましたし、すごいなあと」
▲富久錦のCIについてまとめた画像。今見ても古さを感じないデザイン
北川一成さんが「富久錦」のCIデザインをしたのは、20代のとき。
ちょうどいまの加藤さんと同じ年代でした。
「そうなんですよね。それはいまもよく言われます。お前くらいの年齢の頃にはなぁ……って。 笑 」
兵庫本社勤務から、東京事務所へ
大学卒業後は東京のデザイン事務所でアルバイトを経験。その中でGRAPHの人材募集を知り、入社しました。
GRAPH入社後は、兵庫県の本社にデザイナーとして配属になりました。
とはいえ、最初は東京とはまったく異なる環境の中で、生活の基盤をつくるのに精一杯な日々でした。
「本社は田舎だよ、と言われてはいましたが想像していたよりもさらに田舎で、大自然の中にポツンと本社工場があり、びっくりしました。
最寄りのコンビニまで徒歩30分かかりますし、どこへ行くにも車が必須なのですが僕は免許を持っていなくて。ネットスーパーを利用して食材を確保していました。
台風が来たときにサービスが止まってしまって、青ざめたこともあります。先輩社員にもよく助けて頂きました」
工場ではデザイン業務のアシスタントをしながら、特別勤務として、印刷工場や製版部、工程管理部と、デザインだけではなく、様々な仕事を体験しました。
▲兵庫県加西市のGRAPH本社工場。
「本社工場では、パソコンに向かうだけではない、地に足が付いた経験ができたと思います。
ひとつの仕事はいろんな工程を経てできていること、いろんな仕事をするスタッフがいて、それぞれの仕事が集まってようやくひとつの仕事がまわっていくのだということを確認できた、貴重な時間でした。
たくさん怒られることもありましたけど、自分だけが関わっているのではない、という意識は今でも生きていると思います」
そうして数ヶ月がたち、念願の東京オフィスへ。
「最初は正式な異動ではなく、特別勤務というかたちの、短期間の東京勤務の予定でした。いざ行ってみたら、僕の席は一成さんの隣だったんです。それまでは本社で何度か見かけただけでまともに話をしたこともなかったので、ものすごく緊張したのを覚えています」
そこから始まった、デザイナーとしての日々。
「初日から、『ぜんぜんあかんやん!』と怒られました。
そこからはもうひたすら怒られながら、どんどんやってくる仕事を必死でこなしていきました。そのうちに、『これもやってみるか』と、いろんな仕事に関わらせていただけるようになりました」
現在は主に一成さんのデザイン作業のサポートを担当。少しずつ、関わる仕事の範囲も広がってきているといいます。
「UTokyo Go」に関わって、仕事の範囲が広がった
加藤さんが関わるようになり、現在も広がりつつあるプロジェクトがあります。
東京大学コミュニケーションセンターで販売されているオリジナルブランド「UTokyo Go」。
2019年4月に第一弾商品として消しゴムとノートを発売。その後に鉛筆、ボールペンと、続々と新商品が開発されています。いずれも評判が良く、複数のメディアでも取り上げられるようになりました。
現在販売されているもっとも新しい商品は、東京大学での研究成果が応用された「セルロースナノファイバー」が配合されたゲルインクのボールペンです。
▲「これ、本当に書きやすいんですよ〜!ぜひ使ってみてください」と加藤さんが紹介してくれた、セルロースナノファイバー配合のボールペン。本当にスラスラ書けて、私も取材で使わせていただいてます。おすすめです!
UTokyo Goは一成さんやPMの若狭さんが中心となりスタートしましたが、加藤さんもデザインの一部を担当しています。
さらに、鉛筆の開発では、たくさんのサンプルを集めて検証し、もっともふさわしいものを選んだり、軸色の着色具合を複数検証したりといった、企画そのものにも関わるようになっているそう。
▲UTokyo Goの鉛筆の開発段階における、軸色のサンプルチェック。ネーミング秘話や開発にまつわるストーリーは次回ご紹介!
セルロースナノファイバーのボールペンについても、パッケージや店頭POPなど、デザインしなければならないアイテムは多岐にわたっています。
ひとつの商品が世に出るまでに、実にたくさんの作業が発生するため、作業スピードも求められます。
※「UTokyo Go」のネーミング意図や開発秘話については、次回記事でまとめる予定です。お楽しみに!
忙しさの中にある、新しいことを学び挑戦する楽しさ
GRAPHに入社してからきっと忙しく、初めてのことだらけだと思いますが、大変に感じることはありませんか?
「次から次に幅広いジャンルの仕事が出てくるので大変さもありますが、そのこと自体はとてもおもしろいと感じています。
もともと学生時代に学んでいたのも、“デザインとは何か”という幅広いものでしたし、なにかひとつの商品だけをデザインするというよりも、商品の周辺や環境も含めて全てに取り組んでいくことで、よりよくできるのではないか、と思っていました。
GRAPHにいることで、いろんな仕事に関わることができるので、そのような本来自分が興味のあったことにも通じていて、今は何でも楽しく取り組めています。
一成さんやADの吉本さんを見ていると、案件に取り組みながらいろんなことに興味をもって調べたり、過去の別案件で蓄積したものとつなげたり、外部の人と協働したりして理解を深め、コンセプトをつくって提案しています。
PCでの作業だけではなく、もっと広い意味でとらえてデザインを考えていかなければならないんだと実感しています。
僕もそんな姿勢をもって、さまざまな仕事に積極的に取り組んで、自分の中に蓄積していきたい。どんな話がきても応えられるようになりたいです」
もともと、手を動かすことだけでなく、デザインとは何か、ということについて考えることが好きだったという加藤さん。GRAPHでの仕事を通して自分の幅を広げ、新しい扉を開き、さらに成長していくのではないでしょうか。
ちなみに加藤さんは写真が趣味。学生時代から撮り続け、GRAPHのホームページにあるオフィスや本社工場の写真には、加藤さんが撮影しているものも多いんです。
▲師匠のこんなシーンも、加藤フォト。笑
先輩たちから「加藤ぉ〜〜!!」とどやされながらも、日々楽しみながら頑張っているようです。
いつも黒い服を身にまとい、ランチ時には必ず「デザートとコーヒーで締める」という、自分の世界をもった若手、加藤さん。
これからもいろいろ面白いお話が掘り起こせるんじゃないかと、期待しています!