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勇者ファブリス一行の動向 その2

再びマクロフへ ファブリス怒りのダンス!?

「新たな希望 カルロッテの迷い」の続き


翌日の早朝、4人は待ち合わせて港に向かう。そこにはすでにビブルスと彼の率いる帝国軍の姿があった。

「皆さん! おはようございます!」
ビブルスがファブリスたちを見つけて手を振っている。

「おう、おはようさん!」
「おはようございます」
4人は挨拶を返すと、早速船に乗り込んでいく。

「では出発しますぞ」
船はマクロフに向けて出港したのだった。

4人が船に揺られること数時間後、ようやくマクロフの町がある小島に到着した。

港に降り立った4人は、懐かしそうに辺りを見回す。
「帰ってきたわね……!」
エレーナが感慨深げにつぶやくと、他の3人も頷く。
4人はしばらくの間、島の風景を眺めていた。

「前にここに来たときは、アイツも一緒だったな。つい最近のことなのに、随分前に感じるぜ」
ファブリスが呟くと、他の3人も同意するようにうなずく。

4人が思い出に浸っていると、ビブルスが声をかける。
「皆さん、そろそろ行きましょうか?」

「ああ、そうだな!」

ビブルスたちは、帝国の公務で遺跡を調査することになっていた。
遺跡付近は、若矢たちが解決した事件の主要な現場となった地点だ。

「我々は遺跡の調査に向かいますが、ファブリス殿たちはどうしますか?我々と共に行きますか? それとも……」
ビブルスが尋ねると、ファブリスは迷わず答えた。

「その脈導師に会うにしても、今から押し掛けるのは迷惑かもしれないしな。今日のところは、いったんそっちを手伝うぜ」
4人はビブルスと共に、遺跡付近の調査を行い、夜になったら町の酒場で聞き込みをすることを決めたのだった。

ファブリスたちはビブルスと共に、遺跡の調査を行っていた。しかし調査は難航しているようだった。
「……う~ん、やっぱり酷い……。ガレキの山ですね……」
ビブルスがため息をつく。彼の部下たちも落胆していた。

「まあ仕方ねぇさ! この間、ここで戦闘があったばかりなんだし」
ファブリスがビブルスの肩を叩きながら励ますと、彼らは観念したようにガレキの撤去作業に取り組み始めた。

数時間後、大人数での撤去作業により遺跡の入り口まではたどり着くことができたファブリスたちと帝国軍。
だがその時点で日も暮れ始めており、一行は一度マクロフの町に戻ることにしたのだった。


夜、ファブリスたちは酒場で聞き込みを行っていた。
若矢のことはこの町の人たちも知っているが、彼の姿を見た者はいないという。
町の女性たちは彼のことを心配し、涙を流す者もいた。

一方で、脈導師という人物についての情報はある程度情報を得ることができた。

脈導師は、高齢の男性で魔法使いのようなローブを纏っているという。
人の脈動を探知し、その者の現在地や生命活動状態を探ることができると自称しており、数年前にこの島にやって来て、マクロフの町から少し離れた山小屋に暮らしているのだそうだ。

最初の頃は、胡散くさい宗教家が来た、と町の人たちは相手にしなかったが、魔王ムレクの死や、魔物の増加、魔妖妃クレフィラの潜伏を言い当てたことから、彼の言うことを信じる者も次第に多くなったとのことだ。

彼に尋ねれば、若矢の脈動を探知して居場所を特定することも可能ではないか、というのがビブルスたちの意見だった。

「明日、その人に会いに行ってみようぜ。噂が本当なら、若矢がどこにいるのかわかるな!」
ファブリスの言葉に他の3人は賛成し、その日は飲みながら帝国兵たちと情報交換をすることに。


「確かにあのマリナ、という人は最初から高飛車な感じがしましたからね! 例え自分が強くても、仲間に対してそんな言い方をするなんて、さすがに酷いですよ!」
酔ったビブルスは、同じく酔ったファブリスから聞かされたマリナたちに腹を立てる。

エレーナ、リズ、カルロッテは何か思うところがあるのか、浮かない顔でグラスをあおっていた。

「俺だって最初からあのネズミが分裂するって分かってたら、他にいくらでも手は打ってたさ! な、リズ!?」
ファブリスはよっぽど腹が立っていたのか、ベルフェゴールのあの実験を思い出しながら、一緒に戦っていたリズに同意を求めた。

「えっ? そ、そう……ですね」

リズはファブリスの剣幕に驚きつつ同意するが、内心ではもうあの戦いを思い出すことすら嫌だった。
今では普通のネズミにさえも恐怖を抱いてしまうほど、リズの心に深い傷が刻まれてしまったのだから。

「だろ~? だから俺は、あんな言い方をしたマリナが許せないんだよ!」

ファブリスはさらに怒りながら酒を煽ると、突然踊り出した。
「あああ!! マリナの野郎ぉ~!!」

ファブリスのダンスに、ビブルスたち帝国軍は大爆笑する。そして酒場にいた人たちも、それぞれの嫌なことを忘れるために踊り出すのだった。

「カルロッテ殿、一緒に踊りましょう」
ビブルスが不安そうなカルロッテの手を取る。彼の優しい笑顔に、カルロッテは頬を赤らめた。

「え、ええ……」
カルロッテが頷くと、ビブルスは彼女をエスコートしながら踊り出す。そしてダンスが終わるとカルロッテは、ビブルスに微笑むのだった。


~続く~

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