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いじめっ子の転生

薄暗い意識の中で、藤原泰次郎はゆっくりと目を開けた。

「お目覚めかな?」

目の前には、白く光る球体が1つ。
泰次郎は何が起こったのか理解できず、戸惑った表情を浮かべた。

「君はどうやら悪ガキだったようだね。でも最後の最後で、同級生を救おうとして命を落とした」

球体が若い男の声を発した。

球体の言葉に泰次郎は先ほどの出来事がフラッシュバックした。
彼は確かに悪ガキだったが、いじめていた同級生と、その同級生を助けようとした別の同級生を助けようとして、自らも命を落としたのだった。

「結局、みんな死んじまったのかよ……」

1人呟く泰次郎に球体の声が続ける。
「さて、僕が誰なのかは検討がついているんだろう?」

泰次郎は混乱しながらも、かすかな理解が浮かんできた。

「捨てる神あれば拾う神あり、というわけだよ」

球体の声からは微かな温かさが感じられた。

「さて、泰次郎。君には別の世界で生まれ変わる権利をあげよう。そのままの姿で転移するのがいいか、それとも全く新しい姿で転移するのがいいか、もしくは赤子として生まれ、大きくなったら今の姿になるのがいいか、はたまた大きくなったら別の姿になるのがいいか」

「口調が多くて回りくどいかな? もう少しだから我慢してくれたまえ」
と球体は冗談めかす。

泰次郎は考え込んだ末に、自分の心の中に秘めていた願いを口にした。

「俺は……!!」

「そうか泰次郎、君はそんな願いを秘めていたんだね。新しい世界では様々な危険があるかもしれない。しかし、全て自由だ。どう生きるか何をするかは、君次第」

泰次郎はまだ混乱していたが、決意を固めた。

「生き返らせる理由? ただの暇つぶしだよ。僕はたまに刺激が欲しいのさ」
球体はフッと笑っているようだ。

「ありがとう、神様。俺はもう間違えない!」
泰次郎は力強く、球体に礼を告げるのだった。

「さて、それではよい人生を」

次の瞬間、泰次郎はまばゆい光に包まれ、意識が飛んだ。


新しい世界に目を覚ましたとき、泰次郎は完全に異なる風景を目の前にした。古代のような建物が立ち並び、奇妙な生物が行き交っている。彼は自分が選んだ新しい姿に慣れるため、少し時間がかかりそうだと感じた。

「ここから俺の新しい人生が始まる」
と泰次郎は心の中で呟いた。
彼は過去の過ちを反省し、新しい人生でより良い人間になることを誓った。

そして前世の夢であり、叶わなかった「多くの人に希望を与え、笑顔にする」という夢を今度こそ叶えることも、自分に誓うのだった。

顔を洗おうとして水面に映った自分に微笑む泰次郎。

そして、近くに見える町にスキップしながら向かうのだった。
「さぁて! これから俺……いや、わたしが世界中のみんなを笑顔にしちゃぞ♪」

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