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「おいちちょう!」 【邪悪な笑み】

春のある日、森でニーナちゃんに出会った。彼女は私を見つけた瞬間、その瞳に驚きと喜びが広がった。

「大丈夫?」と声をかける彼女に、私は微笑んで答えた。
可愛らしい赤ちゃんとしての私に、彼女はすぐに心を奪われたようだった。
天使の翼を持つ私に、彼女はキュートという名前を付けた。

「可愛いなぁ」とつぶやきながら、彼女は私を抱き上げた。

ふふ、まんまと引っかかったな。

言葉を話せるだけでなく、頭もすごくいい私に気づいたとき、彼女の驚きは隠せなかっただろう。

彼女との旅は楽しかった。
ニーナちゃんは、私の不思議な力に助けられてばかりだった。
困ったことがあれば、私が奇跡を見せて解決してあげた。
だから、私の力で彼女を魅了するのは簡単だった。


ある日、ふとした思いつきで、「ニーナちゃんの故郷に行きたいな」と呟いてみた。
彼女の反応は予想通りで、嬉しさと懐かしさがその顔に表れていた。

私の言葉一つで動かされる彼女を見て、内心笑いが止まらなかった。

町へ戻ると、みんなが私を驚いた目で見つめていた。
ニーナちゃんのママは私を、彼女の子供だと勘違いしていた。
でも、それは好都合だった。町の皆に可愛がられ、信頼を得るのは重要だからね。


そして町に来て数日経ったある夜、私の計画がついに実行される時が来た。

私がいないことに気づいた時の、ニーナちゃんの慌てた顔が目に浮かぶ。


そして彼女が私を探しに出た時、彼女にとって信じられない光景が広がっていた。

私は
「やぁ! この町の人はみんなおいちちょうだから、僕もう我慢できないや!」
と宣言する。

それと同時に、私の分身たちが次々と現れた。
たくさんの私が、白い歯をむき出しにした不気味な笑顔で笑っていた。

「おいちちょう! おいちちょう!」
と首を左右に高速で振りながら、不気味に笑う私の大群。
その数は100や200どころじゃなかった。

彼女の驚きと恐怖の顔を見て、心底楽しんだよ。

「君のことも早く食べたかったけど我慢してたんだ」
と言って、彼女が私のために見繕った服を脱ぎ捨てた。

私たちの体躯に似つかわしくないモノを取り出すと、ニーナちゃんは叫び声を上げて逃げ出した。

町中で悲鳴が響き渡る。
「ごめんなさい、私のせいでこんなことに……」
と彼女は言っていたが、全て遅い。
私の計画通りだ。


「おいちちょう! おいちちょう!」
という他の私の声が響く中、彼女を追いかけた。
そして、ついに背後から強い力で彼女を押さえ込んだ。

「捕まえた! おいちちょう! おいちちょう!」
と、私は嬉しそうに耳元で囁いた。

「いただきま~す!!」
そう言って、私とたくさんの他の私は彼女に襲い掛かるのだった。


ニーナちゃん、君はただの道具だったんだよ。
これが私、キュートの真の姿だ。
君を利用してこの町を支配することは、初めから決まっていたんだよ。

ありがとう、そしてさようなら。


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