見出し画像

人間失格大学生、旅に出た④【小食と市場はミスマッチ】

2日目、朝一番で大浴場に向かった。普段はしないけれど、旅行の時は朝風呂をするという人も多いのではないだろうか。窓から入ってきた朝日が水面をきらきらと照らしていて、最高の日になることを暗示しているようだった。

少しゆっくり目にホテルを出て、最初に向かったのは近江町市場という有名な市場である。観光客から地元の人まで、多くの人々が集まるこの巨大な市場は、魚介はもちろん肉屋や野菜、お菓子など様々な食品が集まる。

同行している友人はとにかくいろいろなものを買い、食べていた。スムージーやコロッケ、鰻の肝串。お土産もたくさん買い込んでその時点で3000円ほど買っていた。その姿を見ながら、こいつ終わったなと私は思った。実はこの旅行は初め2日間の予定だったが、初日の午前がつぶれるとわかった時点でもう一つ宿をとり、2泊3日の行程になっていた。そして金沢市内からこの日宿泊する旅館までは死ぬほど遠い。旅館を予約したのは私なのでそのことをこいつは知らない。次々に商品を手に取る友人を見ながら私は哀れに思っていた。

とはいえ私もせっかくなのでいろいろ食べたいと思ってはいた。しかし私は自他共に認める小食である。寿司屋に行っても7皿が限界だし、学食のカレーも残す。この長い1日をここで終わらせるのはもったいない。そして今回の旅の目的の一つ、海鮮丼を食べる時間がやってきた

金沢に来て新鮮な魚介類を食すことは長い間の私の夢だった。私たちは文字通り市場の端から端まで歩きすべての店を吟味し、ある店に入った。そこで食べた海鮮丼は、お世辞ではなく人生で一番おいしかった。惜しむらくは自分にそれを伝えるまでの能力がない。ただ、何回でも食べたいと思える味だった。




この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?