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人間失格大学生、旅に出た。②【駅のラーメンと冷えた加賀棒茶】


駅に着いたのが確か3時。列車の発車時間が3時48分だった。このタイミングで友人はラーメンを食おうと言ってきた。まだ切符も買っていない。私だったら先が見えないこの状況で、ラーメンを食べるという不確定要素を足したくない。やはり時間感覚というのは人それぞれなのだなと痛感した。

とはいえさすがというべきか、駅構内の店というだけあり慣れているのだろう、一瞬でラーメンを提供してくれた。結果20分前には食べ終わり無事に列車に乗り込むことができた。自販機で飲み物を買う時間すらあった。

そのまま列車に揺られ2時間ほどたった時、ある駅で列車が止まり、私たち以外のすべての乗客が立ち上がった。え?くっそ人気やんこの駅。俺らもおりてみようかしら。しかしどこか様子がおかしい。全員立ってはいるが降りる気配がない。私が不思議に思っていると友人は、「座席回転させなきゃなんじゃない?」といった。「なるほど!!!!!」

どうやらこの駅から進行方向が変わるようで席を回転させる必要があるようだった。にしてもこれは初見殺し過ぎる。もし一人だったら今頃後ろのおじさんとこんにちはしている。私は心底こいつが一緒にいてよかったと思った。

そんなこんなで私たちは金沢駅に降り立った。全く知らない土地の知らない駅に私は今立っている。何の変哲もない駅のはずなのになぜだか輝いて見えた。一人では何もできない私をここに連れてきてくれた、友人に感謝するとか言う前にくっそ寒かった

時間は18時49分。かつ北陸である金沢の気候を、私はなめていた。冬みてーな恰好している人々の間を夏みてーな恰好をして通り抜けながらホテルに向かった。ホテルは一般的なビジネスホテルのツインルームである。ただそのホテルは今年5月にオープンしたばかりらしく、どこもかしこもピカピカだった。ウェルカムドリンクの死ぬほど冷えた加賀棒茶を飲みほし、震えながらホテルを出た。

もう7時である。いくら緊急事態宣言が出ていないとはいえ、早いところ食事場所を探さなければどの店も閉まってしまうかもしれない。私たちは夜の金沢にくり出した。それがこの日最後の地獄の始まりだった

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