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ときに「大胆」で「したたか」な外国人労働者の〝実像〟に迫る|【特集】日本を目指す外国人労働者 これ以上便利使いするな[Part2]

“人手不足”に喘ぐ日本で、頻繁に取り上げられるフレーズがある。
「外国人労働者がいなければ日本(社会)は成り立たない」というものだ。
しかし、外国人労働者に依存し続けることで、日本の本当の課題から目を背けていないか?
ご都合主義の外国人労働者受け入れに終止符を打たなければ、将来に大きな禍根を残すことになる。

折々、声を上げ、自由で、怠惰で乱暴な一面を見せる外国人労働者たち。紋切り型の〝かわいそうな弱者〟では決して語ることができない彼らの実像とは。

文・安田峰俊(Minetoshi Yasuda)
ルポライター
広島大学大学院文学研究科博士前期課程修了。『八九六四「天安門事件」は再び起きるか』(KADOKAWA)で第5回城山三郎賞・第50回大宅壮一ノンフィクション賞をW受賞。近著に『「低度」外国人材 移民焼き畑国家、日本』。


 「ひどい会社でした。労働内容が雇用条件と違い、退職を申し出たら数十万円の損害賠償を請求されて」

 兵庫県神戸市内にある、逃亡した技能実習生らを保護する外国人労働者のシェルターで話すのは、インドネシア東ジャワ州出身のリサさん(仮名、30歳)だ。母国の実家は、6人家族の世帯月収が5万円程度という厳しい経済環境にあり、日本での仕事に期待をかけていた。だが、勤務先のあまりのひどさに〝反乱〟を起こしたのである。

前職時代の劣悪な労働環境を語る、インドネシア人労働者のリサさん (SOICHIRO KORIYAMA)

 彼女は過去に技能実習生として働き、いったん帰国。今春から在留資格「特定技能」で再来日した。この在留資格は2018年末に新設されたもので、それまで問題点が多く指摘されてきた技能実習制度の不備を事実上補う制度として、日本での長期滞在や自由度の高い就業形態を認めた、新しい在留資格だ。

 もっとも、この新制度も明るい話ばかりではなかった。リサさんが22年4月から勤務した愛知県内の大葉おおばを栽培する農家は、コンプライアンスの面で非常に問題のある会社だったのだ。

 2人1部屋で入居する寮の部屋の家賃を、1人あたり月6万円以上も請求され、抗議すると半額以下に下がった──。という一事からも企業体質が垣間見える。そして、労働の内容もひどいものだった。

 「就業契約で決めた拘束時間は朝7時~午後3時で、実働7時間です。でも、社長の奥さんから〝練習〟だからと、大葉の袋詰め作業を残業として指示されました。1袋あたり40円という賃金なのですが……」

 この袋詰めは、同じ大きさの大葉をよりわけて、100枚ずつ袋詰めにする作業で、慣れた人でも1時間に10袋程度しか作れない。

 当時、会社にはリサさんのほかインドネシア人の特定技能労働者が数人、さらにカンボジア人やベトナム人の技能実習生が10人ほど働いていたが、……

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