見出し画像

営業先に乗せられ起業 もがき続けて見つけた内装工事|【さらばリーマン】逆境を乗り越える編

☆逆境を乗り越える画像(1280×500)背景黄色 (1)

イラストレーション
木原未沙紀(Misaki Kihara)

東海道・山陽新幹線のグリーン車に搭載されている月刊誌『Wedge』の人気連載「溝口敦のさらばリーマン」。勤め人を辞めて、裸一貫で事業を始めた人、人生の窮地を起業で乗り越えようとした人、趣味を仕事にしてしまった人、自らの事業で社会課題を解決しようとした人など、起業家たちの人生や日々奔走する姿をノンフィクション作家の溝口敦氏が描きます(肩書や年齢は掲載当時のもの)。

文・溝口  敦(Atsushi Mizoguchi)
ノンフィクション作家、ジャーナリスト
1942年東京都生まれ。暴力団や新宗教に焦点をあてて執筆活動を続け、『食肉の帝王』(講談社)で第25回講談社ノンフィクション賞などを受賞。

澤口貴一さん(600×400)

澤口貴一さん(Takaichi Sawaguchi)
エス・ビルド代表取締役(43歳)

      (※肩書や年齢は掲載当時のもの)

 人が事業を起こして、その事業が成功する要因とは何だろうと、あらためて思わせるのが澤口貴一さん(43歳)の場合である。

 澤口さんは2003年、大阪でオフィス向け専門の間仕切りなど内装工事の会社を創業。現在は年商約24億円、従業員数74人の会社に育て上げた。

 支社が東京都台東区にもあり、施工実績が年2000件というから、経営は安定していよう。親からの相続とか、親類縁者の援助とかはいっさいなく、裸一貫で出発して18年。今は「建築の電卓」と名づける内装工事向け計算ソフトまで開発、内装業者や資材メーカー・商社に販売している。

 圧倒的多数の起業家が道半ばで討ち死にする。そうした中、なぜ澤口さんの会社はうまく行っているのか。大阪・道修町の本社で澤口さんにインタビューしたが、社長としてはごくふつうの応対で、成功を頷かせるきらめきは示さない。

 であるなら、それまでの育ちや生き方に成功要因があるのか。ぼつりぼつり話を聞いてみることにした。

ここから先は

2,383字
この記事のみ ¥ 100

いただいたサポートは、今後の取材費などに使わせていただきます。