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【マンション理事長インタビュー】ランニング費用ゼロが導入の決め手! 朝日プラザ郡山セントラルステージ(福島県郡山市)

設置後も設置前も、住民とEVとの「ふれあい」を重視

2022年7月、福島県郡山市のマンション「朝日プラザ郡山セントラルステージ」の敷地内駐車場に電気自動車(EV)の充電用200Vコンセントが設置されました。また、敷地内ではなく外部の契約駐車場を利用する住民向けに共用充電設備として6kWの倍速充電器も1基設置されました。

EVやEV充電について詳しくない住民の方々が理解を深めたり、興味をもってもらうことを重視され、EV充電設備の設置についての合意形成を丁寧にかつ着実に推し進めていったといいます。そのために、設置前の丁寧な説明はもちろん、設置後にも地元のカーディーラー協力による独自試乗会の開催や、災害時のEV活用について知ってもらうためのV2Hの体験会など、さまざまな取り組みを積極的にされています。

また、本物件へのEV充電設備の導入は、電気工事会社が最適な充電機器や充電サービスの選定や提案、説明会、理事会や総会対応、補助金申請の代行などを主体的に行い、設置後の住民向けイベントも企画されております。現地調査や設置工事だけでなく、設置検討からアフターサポートまで、ワンストップで電気工事会社がマンション管理組合に対して対応されたモデルケースとしても大注目です。

今回、同マンションへのEV充電設備の導入を推進された、上石憲弘 理事長、桑原基士 副理事長(導入当時)、そして、電気工事会社である株式会社遠藤電気通信 取締役 遠藤隆太氏に、話を聞きました。

■物件概要
物件名:朝日プラザ郡山セントラルステージ
種 類:分譲マンション
築年数:34年(竣工1989年7月)
場 所:福島県郡山市
総戸数:106戸
駐車場:全37区画(居住者用36区画、来客用1区画)
充電設備設置区画:7+1区画(合計8区画)
充電設備種類:EV充電コンセント(200V)、6kW倍速充電器
EV充電用電源:別引込にて確保(WeChargeにて電気契約)

朝日プラザ郡山セントラルステージ 外観

■今回お話をお聞かせ頂いた方

【右】上石憲弘 理事長、【中央】桑原基士 副理事長、【左】遠藤電気通信 遠藤隆太氏

─EV充電設備の導入検討のきっかけは?

【桑原氏】もともと個人的に電気自動車(EV)に対して興味を持っていました。日産のSAKURAやテスラのEVが巷を走っている様子を目にすることが多くなり、いてもたってもいられず、SNSや動画投稿サイトなどをチェックして、EVそのものやEV充電について情報収集していました。

ただ、いざEVを所有しようとすると、充電環境の問題に直面することも分かりました。一戸建てであれば自分だけの意思で設置を決めることができますが、マンションだとそうはいきません。勝手に一住民が導入することはできないですからね。

106世帯もあるマンションで、いったいどうやって合意形成したらよいのか?途方に暮れました。
そんななか、2021年9月に開催された理事会の終了間際に、EVが当たり前の世の中になる「未来の話」をしてみたんです。すると、理事会に同席していたマンション管理会社の大和ライフネクストの担当から「ちょうどこの前、電気工事会社(注:株式会社遠藤電気通信)主催のEV充電に関する勉強会に参加したんです!」という発言があったんです。

桑原氏

─理事のみなさんの反応はいかがでしたか?

【桑原氏】その理事会には7名くらい参加していましたが、その時点では特に目立った反応はありませんでした。あ、そういえば、上石さんは反応してくれました。

【上石氏】はい、導入には、実はネガティブでした(笑)。当時、ディーゼル車に乗っていて燃費にも不満もなく、EVはピンと来ませんでした。それどころか、近隣にある日産でカーシェアのサービスもあったし、公共交通機関をメインで使うようになっていたこともあり、クルマそのものを手放すことを考えていたくらいです。それなのに、なぜか今、テスラのModel 3に乗っています(笑)。

理事のなかに、すでにEV(日産リーフ)に乗っている人がいたんですよ。その方にいろいろと教えてもらって、理解が深まりました。そうした経緯から、「よし、具体的に検討を始めてみよう!」となりました。

大和ライフネクストの紹介で、株式会社遠藤電気通信(注:電気工事会社)さんに提案を依頼し、2021年10月にさっそく現地調査を行ってもらいました。そして11月の理事会に参加してもらいました。

上石氏

【桑原氏】もともとは、マンションでのEV充電における理想形と言われている「全区画設置」を実現したかったのですが、残念ながら、いろいろと制約があって、その理想は未来へ先送りにすることとなりました。

このマンションの住戸数は106ですが、敷地内駐車場は100%ありません。区画数が足りない。全世帯が駐車できないという本質的な課題があるなかで、いきなり全区画へ専用充電設備を設置するというのは難しいと思いました。

かといって、1〜2区画をEV充電のための共用区画にして予約システムなどで運用するのも現実的ではありません。そもそも駐車区画が足りないのに、さらに区画が減ることになりますからね。そもそも普通充電のスピードは、交代交代でクルマを出し入れして充電するような運用には向きませんから。

そこで、専用区画へのコンセント7基設置、来客用区画への6kW倍速充電器1基設置という構成になりました。実際に遠藤電気通信さんに車載の充電ケーブルの実物を見せてもらって、長さを確認して、住民同士で柔軟な運用ができることを確信しました。また、敷地内駐車場ではなく外部の契約駐車場にEVを停めている住民もいらっしゃいますので、そうした方向けに、来客用区画の6kW倍速充電器を活用してもらっています。

設置されたEV充電コンセント
来客用区画の6kW倍速充電器(敷地外の契約駐車場利用住民向け)

手厚い補助金もあると聞いたので、それを活用すれば、今なら負担を軽く設置ができて、未来に繋がる一歩が踏み出せると思いました。

EV充電設備って、EVを持っていないから関係ない!っていうモノではないと思うんです。マンションには欠かせないエレベーターだって一緒です。頻繁に利用する上層階の人もいれば、ほぼ使うことのない1Fの住民だっているわけです。1Fの方が「私は使わないからエレベーターはマンションにはいらない!」という話にはならないですよね?宅配ボックスだって、常に全員が利用するものではないですが、みなさん便利に使っていると思います。そしてなにより、2035年にはガソリン車の販売が禁止になるという国策もあるわけですし、未来を見据えた意味ある判断を行うことが大事だと考えています。

─設置決定までのプロセスを教えて下さい。

【上石氏】まず住民にアンケートを配りました。どんな車を乗っているか、EVの購入意欲はあるか?など。その結果をもとにして、2022年1月に遠藤電気通信さんに協力してもらって住民説明会を行いました。

説明会では、住民の方からいろいろな意見が出ました。もちろん反対意見もありました。EVを買う予定はない、と断言される方。費用負担の心配をされる方。時期尚早だという方。そうした意見も貴重です。説得しようとするのではなく、地道に傾聴して、EVやEV充電の具体的なイメージを思い描いて頂けるように努めました。

一方で、住民のなかには、実はEVにすでに乗られていて、理解がある方もいらっしゃいましたし、それが追い風にもなりました。

そうしたさまざまな意見や課題に対し、遠藤電気通信さんにも協力してもらい、丁寧に対応や回答をしていきました。

【遠藤氏】やはり充電インフラ補助金の存在は大きかったですね。弊社でのこれまでの申請実績などから「かなり多くの補助金が見込める」ことをお伝えし、その申請業務もお手伝いすることを説明しました。

QRコードとスマート分電盤を活用したWeChargeならではの「受益者負担」の仕組みも好評でした。充電利用者にとってはスマホによる簡単操作で充電ができますし、充電した分だけ費用が発生します。ランニング費用もゼロなので、EVを持たない方にとっての負担はありません。EV充電用の電気も特別措置を活用して別系統で引き込みますし、その電気代は充電事業者が負担する契約です。

すぐにEV充電される予定の無い方にとって負担のない、受益者負担の仕組みが実現できることをしっかりと説明させて頂きました。

遠藤電気通信 遠藤取締役

【桑原氏】充電設備というとやはり急速充電器のイメージが強いので、住民のなかには、そうした大規模で大掛かりな装置がマンションに設置されると誤解して不安になる方もいらっしゃいました。

【遠藤氏】そこで、設置予定のEV充電コンセントや車載充電ケーブルの実物をお持ちして、実際に見て触ってもらい、まるでスマホのような感覚で手軽に使えるものであることをご理解頂きました。

充電設備というとなんだか大仰な感じがしますが、「ただのコンセント」なんです。

【上石氏】EVに乗っている人や関心のある方だけでなく、あまり関心の無い方もいるという今回の合意形成においては、「資産価値の向上」という、すべての住民に共通のテーマこそが、合意ためのキーワードだったと思います。

今後、東京都をはじめとして設置義務化が始まると、新築マンションのEV充電設備完備は当たり前の時代がやってきます。その時に既築のマンションは資産価値が維持できなくなってしまう。とても分かりやすい課題です。EVやEV充電に関心がなくても、資産価値向上は全住民にとっての関心事ですからね。

でも、実際のところ、合意形成に至った最大の勝因は、桑原さんの各住民とのコミュニケーション力だったと思いますよ!

【桑原氏】それは、どうでしょうか(笑)。そんなわけで、2022年3月の通常総会で無事議決されまして、さっそく充電インフラ補助金の申請を行いました。

5月には補助金の採択決定がなされ、工事の具体的な準備が始まりました。7月に着工し、約2週間で竣工となりました。とてもスムーズに進みましたので、遠藤電気通信さんには感謝しています。

─イニシャル費用について教えて下さい。

【上石氏】約450万円です。そのうち7割以上が補助金で賄うことができましたので、実質負担額は100万円程度に抑えることができました。

おそらく補助金がなかったら、今回の設置は実現できなかったと思います。補助金制度はぜひ活用されることをオススメします。

なお、イニシャル費用は、当マンションの場合は、長期修繕積立金のなかから捻出しました。

─充電設備の設置後はいかがですか?

【桑原氏】私個人の話になりますが、現在、EV2台持ちになっています。ちょうど妻のクルマを買い換えるタイミングだったので、日産のSAKURAを購入しました。半年間待ちましたが、12月に納車されました。

そして、私自身もEVを買おう!と思い、すでにテスラModel 3を乗られていた遠藤さんにも乗り心地などの感想をお聞きしながら、検討を重ねました。テスラが値下げを行ったこともあり、最終的にはModel Yを購入しました。購入後に板橋で妻も同行して試乗を行い、納車が待ち遠しくなりました。3月に有明で納車がありましたが、レンタカーの貸し出しのごとくあっさりとした納車でちょっとカルチャーショックでした(苦笑)。

【上石氏】さきほど「車を手放すことを検討していた」とお伝えしましたが、なぜか今はModel 3に乗っています(笑)。もともと新しいもの好きで、ブロックチェーンやビットコインにもいちはやく興味を持ちました。今回の一連のEVシフトの流れは、世界的な潮流として世の中を大きく変化させる契機になるのではと確信しています。

テスラやヒョンデ、BYDなど、日本でも買えるEVが増えてきましたし、実はテスラ株も持っていたりします。なにより、マンションへEV充電設備を設置するうえで、それを推進してきた理事長としてのプライド(?)もあるかもしれません。私自身はもともと敷地内駐車場を利用していなかったのですが、抽選に申し込んだところ、ついに当選して駐車場を借りることができました。しかも、その当たった区画がなんと充電コンセント付きという!もうこれは運命としか言いようがないですね(笑)。

たまたま仕事で訪れていた大阪で、宿泊先のホテルの隣にテスラ心斎橋がありました。試乗の機会があり、高速道路で体験した加速力に痺れてしまい、購入意欲に火が付きました。9月には購入手続きを終えていたんですが、ちょっと紆余曲折があり、結果的に納車は12月になりました。

やっぱり、自宅で充電できると、電欠の心配がないので安心ですね。EV所有前は充電というと急速充電のイメージが強かったですが、実際にマンションでのおうち充電を体験したうえで「コンセントで十分」だと実感しています。逆に、急速充電やスーパーチャージャーでの充電だけを頼りにしたEV運用は大変だろうなぁと想像します。今はお守りとして他社の充電カードも持っていますが、WeChargeさんにはマンション以外への設置もぜひ頑張ってもらいたいです。

【桑原氏】テスラと比較すると、軽車両であるSAKURAは電池容量は少ないですが、だからこそ、電池残量を気にすることなく外出先からそのまま自宅に帰ってこられる安心感は、おうち充電ならではですね。

そして、日々、マンション駐車場のコンセントで充電をしていると、他の居住者から声がかかることが増えてきました。やはりEVを持っていない人にとって、どんなふうに充電できるのか?その利便性などは関心があるようです。

そんなときに、遠藤電気通信さんから、居住者向けのイベント開催の提案がありました。せっかくEV充電設備を設置したのだから、その価値を居住者のみなさんに伝えていこう!という取り組みです。

日産SAKURA / 日産ARIYA

【遠藤氏】居住者の方々はもちろんですが、EV充電設備の設置という先進的な取り組みをされた朝日プラザ郡山セントラルステージをしっかりと地元の方々にも知ってもらおうという試みでした。

日産自動車や管理会社の大和ライフネクスト、そして、ユビ電にも協力を頂き、有意義なイベントになりました。マンションには、日産SAKURAやARIYA、テスラModel 3など複数のEVが一堂に会し、住民向けの試乗会も行われました。さらにPower MoverというV2H(外部給電器)を活用した、災害時のEV搭載電池からの逆潮流(車両から電気を取り出して活用すること)のデモンストレーションも行いました。おかげさまで、イベントは大好評でした。

今回のデモに使用したPower Mover

【桑原氏】マンションというのはさまざまな価値観を持つたくさんの方が住む集合住宅ですから、「EV乗る人、EV乗らない人」というように二分したり、分断したりしないようにする必要があります。

ですので、設置前もしっかりとアンケートを実施して意見に耳を傾けたり、導入検討の進捗状況を見える化したり、住民向けの説明会をしたりと、丁寧なコミュニケーションを心がけてきました。これは設置後も同じで、EVの試乗会を開催したりと、積極的にEVの価値を訴求していきます。駐車場で充電しているときも、積極的に他の住民に声をかけるようにしています。

─マンションへの導入を検討している読者へコメントをお願いします。

【上石氏】EVというのは、本当に未来に向けた夢のある領域だと感じています。EVもEV充電も、乗ったり、実際に使ってみて初めて分かることがあるので、そのへんをどのように伝えていくかかが課題ですね。個人的にも、EVに関連する業界が今後、どのような伸びをみせていくのかに興味があります。WeChargeも、今後のアップデートでさらに使いやすいサービスに進化していくことを期待しています。

【桑原氏】WeChargeは、実際に自分のEV充電に使ってみたからこそ分かることですが、「マンション居住者のQOLを向上するためにはどうしたら良いか?」を常に考えているサービスだと思います。EV充電用の電気を施設側に頼らずに別系統で引き込んでくるという柔軟性(しかも電気代はすべて事業者負担)、完全なランニング費用ゼロ、補助金活用によるイニシャル費用の大幅圧縮、受益者負担の実現まで、真にマンションにおけるEV充電にまつわる課題解決と管理組合のことを考えているサービスだと思います。ガソリン車に継続して乗られる方も少なくないですから、共存しても問題のないサービス設計というのは不可欠です。また、充電料金も良心的で非常に使いやすく、感謝しています。

【上石氏】WeChargeは「ランニングコストが一切かからない」というところが、他の充電サービスと比べても大きな違いですね。ここが一番大きい。導入を決心した最大のポイントです。

【桑原氏】また、遠藤電気通信さんは、型にはまった画一的な提案ではなく、各マンションごとに最適な個別提案をしてくれる繊細なコンサルティングを提供してくれました。EVやEV充電というのは、まだ詳しい人が世の中に多くないので、丁寧な説明や啓蒙活動が不可欠な領域だからこそ、そうしたキメの細かい対応をして頂けたことに満足しています。

正直なところ、昨今の電気代の高止まりの傾向もあり、日本でのEVシフトは諸外国と比べると比較的ゆっくり進むと思っています。ただ、ゆっくりでも確実に進んでいくことは間違いない。そういう意味では、東京都独自の補助金制度や義務化などのEVシフトに対する積極性は羨ましく感じており、地域格差を感じています。そうした地域格差も解消されることで、当マンションでも、今後EVが増えてくる時期に備えて、全区画設置についても継続して取り組んでいきたいと思っています。

─本日はありがとうございました。

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