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【マンション理事長インタビュー】全区画設置を全会一致で決定。住民からの反対意見ゼロの理由とは? プレステージ杉並(東京都)

築34年の都内マンション全区画にEV充電コンセント完備

2022年末、東京都杉並区のマンション「プレステージ杉並」の敷地内駐車場41区画すべての車室に、電気自動車(EV)の充電用200Vコンセントが設置されました。

まだEVに乗り換えているマンション居住者はほとんど居ない中、充電設備の全区画設置は全会一致で決まったといいます。

受益者負担のための課金認証には、電気自動車充電サービスWeChargeを採用。居住者の来たるべき未来の利便性の確保はもちろん、資産価値の維持と向上という集合住宅にとって重要な課題に向き合った、藤井利久理事長(導入当時)に話を聞きました。

なお、今回の取材は東京都環境局との共同取材となっております。

■物件概要
物件名:プレステージ杉並
種 類:分譲マンション
築年数:34年(竣工1989年3月)
場 所:東京都杉並区
駐車場:全41区画(地下38区画、地上3区画)
充電設備設置区画:全41区画(全区画設置)
充電設備種類:EV充電コンセント(200V)
EV充電用電源:別引込にて確保(WeChargeにて電気契約)

プレステージ杉並 外観

■今回お話をお聞かせ頂いた方

藤井利久 氏
プレステージ杉並 管理組合 理事長(当時)

─いつごろからEV充電設備の導入検討を始められたのですか?

一昨年から昨年の2022年まで、ちょうど私が理事長だったときです。ガソリン車から電気自動車に変わっていくという世界的なトレンドが確実なものとなり、クルマにとってのエネルギーというものが電気へと置き換わっていくことになりました。一戸建てであれば、車庫や庭などに容易に充電設備を設置できますが、マンションだとそう簡単ではないです。

特に電気契約まわりは頭の痛い問題でした。従前の管理組合が契約する電力でEV充電をすると、当然、共用部の電気基本料金が上がってしまいます。これがそのまま、管理組合の負担増になります。また、充電した分だけ課金するという受益者負担のための仕組みも必要となります。つまり、共有部の電気基本料金のコストと、充電に必要な電気代というランニングコストを、管理組合が負担しなければならないというのが大きな課題でした。

今後、マンションにEV充電設備があることは、当たり前になっていくことが予想されます。ディベロッパーは新築マンション販売では、EV充電設備完備が標準になっていきます。ガソリン車のように、スタンドに出向いていって充電するというのは本当に大変ですし、EVのメリットがなくなってしまいます。急速充電を使ったとしても、結構時間がかかりますからね。なので、EV充電設備の設置は必要という流れでしたが、さきほどの課金手段の問題など、実際に実施するとなると課題をどう解決するかで検討期間が続きました。

─電気代やランニングコストが問題になっていたのですね。最終的にどのように課題を解決したのですか?

約1年前に、ユビ電のWeChargeというサービスの仕組みについて紹介を受けました。WeChargeの仕組みは、管理組合とは切り離して運営ができることが決め手になりました。具体的には、EV充電した人に対して使った分だけアプリで課金できること、EV充電用の電力も別引込とすることで管理組合ではなくユビ電で契約してもらえることです。さらに、地上階にある来客用のゲスト駐車区画への課金対応もできることもメリットでした。

さっそく、ユビ電にマンション駐車場を現地調査をしてもらい、EV充電コンセントの設置に際し、問題がないことを確認しました。

設置されたEV充電コンセント(地上区画)

─設置に必要な費用等はいかがでしたか?

設置に必要なイニシャル費用は、全41区画設置で約1千万円でした。WeChargeというサービスの仕組みの良さや使い勝手はイメージできていたので、あとはこの費用をどう捻出するかが課題でした。もともと長期修繕計画のための支出計画には前向きに取り組んできたマンションでしたが、EV充電設備の設置費用は想定していませんでした。

そこで、国の充電インフラ補助金を活用することにしました。申請の結果、約8割が国の補助金で賄えることが判明しました。東京都の補助金(クールネット東京)も併用が可能なので、現在手続きを進めています。さらに実質負担額を抑えることができる見込みです。

─EV充電に必要な電気は、充電事業者(ユビ電)が契約者になっているのですか?

そうです、それがとても重要なんです。管理組合として電気契約をしたくない、となると、マンションの管理会社に契約してもらうことも検討しましたが、それは困難でした。かつて、マンションの敷地内にある管理室・管理棟を、管理会社が所有権を持ち登記する取り組みがありましたが、結果的にこれは問題になりました。管理会社が所有権を持つことで、「不動産を管理する」という本来の役割からかけ離れてしまいました。

─全区画設置は最初から決まっていたのでしょうか?

当初は、5〜6台程度のケーブル付充電器の設置を想定していました。ですが、EVが本格普及した際、共用充電器ではキャパオーバーが容易に想像できます。使い勝手や利便性を考慮し、全区画へのEV充電コンセント設置こそがベストだと考えました。そもそも地下駐車場がメインなので、充電器だとスペース的に厳しいという問題もありました。
また、居住者それぞれが、いつEVを迎え入れるかは予想できないし、一方的に決められるわけではありません。WeChargeの仕組みなら、そもそも電気代の基本料金も発生しないばかりか、充電しなければ、ランニングコストも一切かかりません。今どき、スマホで便利なアプリをインストールしても月額300円とか発生する時代ですが、WeChargeは管理組合のランニングコストがゼロ円。なので、現状ガソリン車に乗っている人にとってデメリットがありません。全区画設置することで、EVへの乗り換えも加速していくのではと思っています。

設置されたEV充電コンセント(地下区画)

─導入にあたって充電サービスの比較検討はされましたか?

うちのマンション管理組合員、つまり居住者のなかにはそれぞれの業界のスペシャリストが居ます。設計士や医師、不動産業界、自動車業界の関係者もいらっしゃいます。そうした個々のスペシャリストがそれぞれのネットワークを活かして、各サービス事業者の情報も入手し、比較検討しました。うちの管理組合は管理会社に任せっきりにせず、それぞれのスペシャリストが独自に研究分析しました。
また、地下駐車場は携帯電話の電波が届かないため、WeCharge以外のサービスでこれを解決できるものが見つかりませんでした。WeChargeでは、全区画の充電制御を行うスマート分電盤自体が通信できればよく、アプリからの充電開始の操作は電波が届く地上部や居室などからも操作可能なので助かりました。

─設置に際し、反対意見はありませんでしたか?

まったくありませんでした。各駐車区画に専用コンセントがあれば、マンションの資産価値も上がり、もし物件を売却するときにも当然、価格が上がります。いまガソリン車に乗っている、または車を持っていない住民にとっても、マンションの資産価値が上がるので反対する理由がありません。実はすでにマンションの価格が上がっています。想像してみてください。もし新築マンションだったら、そもそも、いまどきEV充電設備がない物件なんて、人気がでないですし、魅力的に映りませんよね?

─実際の工事の様子はどうでしたか?

工期はだいたい2週間でした。今回、EV充電用の電源は別系統で新規に引込を行っていますが、地上引込支柱を新規に建てて、植栽内に配線配管しています。すべて、問題なくスムーズに進みました。本当に、いつの間にか終わっちゃってたっていう感じです。一部のマンションでは受電設備の増設に際し緑地面積が減って建築基準法に抵触することが課題になっているようですが、このマンションはもともと緑地も潤沢にあるのでまったく問題にならなかったですね。

EV充電用に新規設置された引込電柱
プレステージ杉並 地下駐車場でEV充電

─サービス開始後の状況はいかがですか?

まだEVに乗り換えをしている住民は多くありませんが、さっそく1月末の時点で、利用を開始している方がいらっしゃいます。問題なく便利に使えているようです。おかげさまで、いつでも充電できる環境がすべての車室にご用意できたので、今後、EVへの乗り換えもいっそう促進されていくだろうと想像しています。

─藤井理事長はEVに乗り換えられますか?

ゆくゆく持つでしょう。EVは乗り心地もよく、馬力もすごいみたいですね。EVの良いところは、モーターを1つ、2つ、3つと増やせる。エンジンだとそういうわけにはいかない。すべての車室に専用コンセントが付いたので、住民の皆さんも、次はEVにしようと考えているでしょう。

─本日はありがとうございました。


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