見出し画像

熊本で物流拠点開設・増設の動きが活発化、TSMCの工場新設で

半導体受託生産の世界最大手・台湾積体電路製造(TSMC)が熊本県菊陽町に建設している新工場(JASM)の建設が着々と進んでいる。

新工場はTSMCが過半数を出資する子会社で、ソニーととデンソーが少数株主として参画するJASMが手掛けている。熊本県菊陽町のセミコンテクノパーク隣接地(敷地面積21.3ヘクタール)に建設されており、昨22年4月に着工、年内に完成、2024年末までの生産開始をめざしている。

新ファウンドリーでは、12/16ナノ、22/28ナノプロセスの半導体製造が行われ、約1700人の先端技術に通じた人材の雇用を創出し、月間生産能力は5万5000枚(300mmウェーハ)となる見込みとしている。

熊本県はソニーグループの半導体工場や東京エレクトロンの半導体製造装置工場などがあり、日本有数の半導体産業の集積地となっているのは周知のとおり。TSMCの新工場設立に伴い、半導体関連企業の工場新設や増設計画が次々と発表されているが、この半導体に関連する貨物の取り込みを図るべく、物流(倉庫業含む)業界でも拠点新設・拡充の動きが活発化している。

物流大手のNippon Expressホールディングスのグループ会社である日本通運はことし3月、TSMCの新工場が建設される菊陽町近郊の益城町の熊本支店総合物流事業所益城センター内に半導体事業所を開設したほか、来年3月には半導体専用倉庫の熊本ロジスティクスセンターを開設する予定。

またNRS(旧日陸)はこの8月、熊本県大津町に総合物流拠点の熊本支店を開設、原材料の温度管理化学品や高圧ガスなど化学品の物流需要に対応する狙いで、保管や配送から、国際複合一貫輸送までワンストップで物流サービスを展開する。

このほか、郵船ロジスティクスが昨22年4月に熊本営業所を開設、鴻池運輸もことし4月から熊本事務所を開設するなど、物流各社の動きが活発化している。

さらにTSMCの進出に伴い、阿蘇くまもと空港(以下、熊本空港)を活用した国際物流や地域周辺との物流サービス需要も急速に高まっている。

ことし3月には熊本県と熊本国際空港が主催する熊本〜台北間の国際航空貨物の実証輸送が行われた。実証には、航空キャリア1社(チャイナエア)/荷主企業3社(日本電子材料、高橋酒造、ロアッソ熊本)/運送事業者3社(西日本鉄道、日本通運、郵船ロジスティクス)/グラハン2社(西鉄エアサービス、日本航空)が参画した。同空港にはこれまで国際貨物輸送の実績がほとんどなく、恒常的な輸送路を築くには課題も多いが、県は熊本発のチャーター便を中心に今後も実証を継続的に行うとしている。

ことし3月23日に行われた熊本〜台北間の国際航空貨物実証輸送(出所:西日本鉄道)

旅客便ではスターラックス航空が9月1日から(週5便)、チャイナエアが9月18日から(週2便)、熊本と台北(桃園)を結ぶ定期便にそれぞれ就航する予定で、同空港は旅客と貨物の両面で「国際空港化」に動いているところ。

TSMCを呼び水に半導体関連企業の大型投資が相次ぐ中で、原材料や製造装置、部品などの輸送需要も今後さらに増大する見込みで、物流業界では各社がこれらの新たな商機を掴むべく、急ピッチで体制作りに取り組んでいる。

2023年9月1日

※ジャパンプレスの発行するメールマガジン登録(無料)をすることで、最新の航空貨物ニュースを受け取ることができます。
ご登録はこちらから

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?