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顧客データ活用の始め方

みなさんこんにちは。
マーケティングディレクター兼データサイエンティストのtohari.です。

昨今、流通・小売系の大企業だけでなく、メーカーや中小企業においてもEC・ネットビジネスの参入が進んできたり、D2Cブランドが増えてきたり、顧客データを自社で保有するケースが非常に増えています。同時にCRM、MA、BIなど、企業のデータ活用を促進するツールも増加し、少し前に比べ企業が顧客データを活用しやすい環境がより整ってきています。

そのため、顧客データ活用を始める際「どのツールを選ぼうか」というツール選定から着手する企業様が多いのですが、ちょっと待ってください!

ツール導入してもうまくいかないケースが非常に多いのをご存知でしょうか?

もしあなたが、あなたのビジネスにとって本当に価値ある成果を見つけたい、その仕組みを作りたいとお考えであれば、ツール導入の前にぜひしていただきたいことがあります。
これをするかどうかによって、顧客データ活用の有効性が非常に大きく変わってきます。

そこで今回は、筆者が実際にお手伝いをして顧客データ活用を効果的にスタートさせた事例をご紹介してまいります。
これから顧客データ活用して自社ビジネスをもっと拡大したいとお考えの企業様のご参考にして頂けたらと思います。

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顧客データ活用の目的とは?

まず最初に顧客データ活用の目的について簡単に触れたいと思いますが、ここはさすがに皆さんお分かりですよね。

マーケテイングとしての顧客データ活用の目的は大きく2つしかありません。
このどちらにするかによって、活用できるデータも展開施策も変わってきますので、社内外に関わらずこのテーマについて討議される場合は、まず最初に確認・共有されることをお勧めします。

ちなみに今回は、「2. リピート促進」としての顧客デーや活用にフォーカスしてお話ししていきます。


ツール導入してもうまくいかないのはなぜ?


さて、冒頭で「ツール導入してもうまくいかないケースが多い」とお話ししましたが、
まずはその理由について少し触れていきます。

多くの企業様が持つツール導入してもうまくいかない根本的な理由として
「ツールがやるべき内容を教えてくれる」という意識の問題があると思います。

確かにデータ活用ってちょっと難しいですし、特に文系の人にとっては苦手分野かもしれません。
そのような場合、自社がやるべきことをあまり考えず、「ツールでできることを始めてみる」とお考えになるのは無理もないことかもしれません。

ですが、ツールでできることが自社にとって価値の高いこと、優先順位の高いこととは限りません。

ツールは確かに便利でいづれかのタイミングでは導入されることをお勧めしますが、少なくともやるべきことの検討が進んでいない状態での導入はお勧めしません。

「顧客データの有効な活用」には、自社ビジネスにとって価値の高いこと(やるべきこと)とそれを実現するやり方(できること)の検討が必要です。


やるべきことの見つけ方


やるべきことを見つけるには、大きく2つあります。
1つ目はリピート促進施策そのものに対する考え方を正しく持つことです。

このポイントはあくまで意識の問題ですので誰でもできます。
そしてやるべきこととしての施策を考える際にとても重要な要素ですので、ぜひ頭の中に入れておいて
頂けたらと思います。

やるべきことの2つ目は、(簡易的な)分析の実施です。

自社ビジネスの可能性にはどんなものがあるのかは、やはりデータを触ってみないとわかりません。
でも精緻にそれをやろうとすると時間・コストが嵩み、多くの場合現実的ではなくなりますので、自社ができる範囲・やり方でそれを試して見ることがとても大切です。

そしてその時の注意点ですが、トライアル分析に関して「誰がどのように」を考える前に「何を」という視点がとても重要になります。

「何を」とは、「明らかにしたいことは何か」ということです。
この規定がクリアであるほどトライアル分析の有効性が増しますので、以下の図の内容も参考にしていただきながら、皆さんのビジネスをよくイメージした上で規定してみていただければと思います。



トライアル分析(初期分析)事例


トライアル分析に関わらず、顧客データ分析でコンサルタントがよく道いる分析手法を少しご紹介します。

大きくは、以下の2つです。

  • 自社の顧客構造はどうなっているのか =顧客構造分析

  • 自社の顧客はどのような成長過程、衰退過程を辿るのか =顧客成長分析

この2つの視点と時間・費用などの制約条件を考慮して、トライアル分析の内容を設計していくことになります。

それでは実際のトライアル分析の事例をご紹介していきます。


<TV通販企業様の場合>

某TV通販企業様のケースでは、上記にようなことが前提にありました。

検証期間は3ヶ月間でしたので、その中でできることとして、以下の2つの検証ポイント(=明らかにしたいこと)を設定し、そのための分析手法を組み上げています。

この内容を検証するために、3ヶ月というプロジェクト期間で行った主な分析作業は以下の通りです。

  • 時系列での売上、顧客数の把握

  • 新規・リピート構造の把握

  • 量層分析(顧客と売上の相関分析)

  • リピーターの深堀分析など


そこからどんなことがわかってきたかと言いますと・・・

  • 単年度でのリピート購買はほぼない状態(ある程度予想通り)

  • ただし3年単位で見ると、リピータの存在を明確に確認できた(予想外)

  • そしてそのリピーターの中でも購買量や購入金額に大きく差があることが確認できた(予想外)

など、プロジェクトを始める前のクライアント様の予想と大きく違う結果が最初の1ヶ月程度でわかってきました。

そこで、リピート行動の内容をより詳細に見ていきました。
以下の図はその1つで、初回購入商品とその次に購入した商品の関係を相関図で示したものになります。

図の中の解説文にもあるように、同事業のリピート促進のフックとなり得る商品の存在が見えてきました。
これは非常に意味のある発見でした。

この結果を受けて、以下のような施策の検討に入りました。

さらに上記と合わせて、各施策の実装や顧客分析を継続的に実施するためのツール選定に繋げています。
以上が、およそ3ヶ月で行ったトライアル分析の概要とその結果になります。

この結果をご覧いただいて「たまたま良い結果がでた事例を紹介しただけでしょ?」と思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、トライアル分析を行うことで、有効度の違いは多少あるものの、「全く有効な発見がない」というケースは経験上ほぼないです。

ちなみに有効な発見の可能性を高めるものは、分析前の初期仮説です。
トライアル分析は基本的に短期間で行いますので、後戻りできる範囲が限定的です。ですので、可能性があるだろうと仮説されるもののうち、さらに優先順位をつけて高いものから作業に組み込んでいくことをお勧めします。
そうすると何かしら引っかかってきます。


最後に

いかがでしたでしょうか?
顧客データ活用って確かに少し敷居が高い作業ではあると思いますが、そこから得られる発見は今後の事業拡大に非常に重要なものばかりです。

ちなみに、これらの分析は外部に委託するだけではなく、エクセスを使って普通の社員の方が行うことも可能です。
エクセルで行う場合、処理できるデータ数には限りがありますが、トライアル分析であればサンプルデータを抽出しその範囲でやってみるのもアリだと思います。全くやらないより全然いいです。

筆者では、このような業務をまるっと請け負うことも可能ですし、クライアント様の社員の方がエクセルで実施するそのためのご支援をさせていただくこともできます。

最後に、CRM・リピート促進としての「顧客データ活用の始め方」として重要な2つを改めてまとめておきます。

  • 顧客に、リピート購買なり、関係継続を求めるということは、「顧客が関係を継続するに足る価値を提供する」ということに他ならない

  • データ活用やツール導入の前には、「自社ビジネスにおけるデータ活用の可能性」について、できる範囲で考察してみる

以上となります。
これから顧客データ活用を始めようとする方、ぜひご参考にして頂けたら幸いです。

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