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バレーボール 2022男子世界選手権 フランス戦まとめ

※この記事は2022年9月6日に作成されたものです

2022年9月。
男子バレーボール日本代表、龍神NIPPONの夏が終わった。
6月に開幕されたネーションズリーグでは決勝トーナメントに進出し、過去最高順位の5位と大健闘するも、今回の世界選手権はベスト16で敗退。
当初目標に掲げていたベスト8入りは惜しくも叶わず、彼らの2022シーズンは、これにて締め括りとなる。

2大会どちらでも日本の勝ち上がりを阻んだのは、東京オリンピック金メダリスト、そして次のオリンピック開催国であるフランスだった。
ネーションズリーグでは、予選と決勝トーナメントどちらも、1セットも奪うことができずに2連敗。
しかしリベンジを誓った今回は粘りに粘ってフルセットに持ち込み、ラストはタイブレークの大接戦。
一時マッチポイントを握るほどにまで、現世界王者を徹底的に追い込んだ。
直近の戦績で言えば、紛れもなく0勝3敗。
だが私は今回の日本に、これまでにないほどの恐怖を感じた。
それは、まるで『ハイキュー‼︎』第1話さながら。
格下の日向(日本)の凄まじい精神力と集中力に、格上の影山(フランス)が焦りを見せた場面があったのだ。

出典: ハイキュー‼︎名言集

両者2セットずつ取り合って迎えた、ファイナルセット後半。
西田のライトからの攻撃でブロックアウトを取り、9-9に追いついた時や、髙橋藍の攻めたサーブが大きくアウトになり、12-10とリードされた時。
画面上でクローズアップされる日本の選手たちの表情を見て、おや?と思った。
相手の勝利まであと数点という瀬戸際に、なんだこの異様な落ち着きは…と。
得点時も失点時も表情に何ら変化はなく、あたかもたった今試合が始まったかのような平常心が見てとれる。

その勘は正しかったようで、続くポイントはヌガペトの豪快なバックアタックがノータッチでラインの外に出てしまい、日本へと入って12-11。
思いきり悔しがるヌガペトを横目に、フラットに喜びながらハイタッチを交わす日本。
ここで私は気がついた。今のミスは、確実に焦りによるものだ。
王者フランスが今、日本に心を乱されている。

その後ルアティのサーブミスがあり、関田のサーブから始まったラリーでは、クレヴノのレフトからの攻撃を西田・山内の2枚ブロックで華麗にシャットアウト。一際甲高くなる実況アナウンサーの叫び声。
これはひょっとしたら、ひょっとするかもしれない。
次の西田のブロックはアウトになり、フランスが14-13でマッチポイントを握った時には、今度は見ているこちらが心穏やかに。まあ次では終わらんわな、と謎の自信が芽生える。
その期待を裏切らない形で、髙橋藍がパトリィのサーブを綺麗にレシーブ、関田がトスを上げてライトからの石川のスパイクがクレヴノの手に勢いよく弾かれ、ボールはコートの外へ。これで14-14のデュース。
今度は石川のサーブで始まり、フランスのバックライトからの攻撃をラインアウトギリギリのところでもう1度石川がディグ。
1回でフランスコートに返ってしまうピンチの中、バックセンターから切り込むヌガペト。しかしトスが合わず、フェイントのように柔らかい打球はネットを越えない。すかさずシヌニエズが足で掬うも上げ切れず、ボールはフランス側のコートに落下。
14-15、日本の逆転マッチポイント。
この時、確かド平日の朝5時か6時だったように思うが、私は全国民を叩き起こしたい衝動に駆られた。

日本!!!今すぐ男子バレーを見てくれ!!!

しかしこの次に石川が勢いよく放ったサーブはアウトに。「あああ〜〜〜〜」と大声を出して頭を抱える私と、叩き起こされた全日本国民。
一方、悔しがるジェスチャーをしたはずの石川の表情は晴れやか。
無我の境地に達したかのような気迫で果敢に攻めてきたここまでの日本が、世界王者を追い詰めたという事実は、揺るがない。
ただこの失点がフランスに流れを引き戻したようで、その後は西田の怪物スパイク炸裂も虚しく、ファイナルセットは16-18、セットカウント2-3でフランスに軍配が上がった。

惜しい!!!!!!!

春高でもインカレでもVリーグでも他の国際試合でも、何度もこの感想を抱いた。
ただこれまでは割と、負けたチームへの労いとリスペクトの意味を込めた惜しいだったのに対し、今回は「マジで死ぬほどリアルガチ絶対ゴリ勝てた」という意味の惜しいである。
しかし、次の勝利に繋がる大きな手応えを掴んだ。
最後まで戦い抜いた選手たちはもちろん、その試合を見届けた誰もがそう確信した、非常に意味深い試合だったと思う。
勝った試合で覚えているものは新旧問わず数多くあるが、正直負けた試合でここまでラリーの状況が印象に残ったのは、初めてだった。

大阪で見たネーションズリーグのブラジル戦は、必死に喰らいつくも、贔屓目無しで言うと、どのセットもあと一歩及ばずという印象。
「あと一歩及ばず」が3セット続くということは、実質の差は残念ながらあと一歩というわけではないのだな、と悔しくなったのを思い出す。

だが今回はフランス相手に怯まず乱れず、僅かにだが怯ませ、乱し、とうとうラストでひっくり返した。
次に日本がフランスと当たるのは、恐らくパリオリンピックの出場に大きく影響する2023年夏のネーションズリーグ。
そこでただ追い詰めるだけではなく、ちゃんと追い越し、リベンジを果たすことができるのか。
ますます期待に胸が膨らむ。

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