【2024年1月】オススメ書籍31選!プラトンからプロダクトマネジメントまで
今年からX(Twitter)で毎日オススメの本を紹介しているので、その紹介文を以下に整理し引用します。目次が紹介対象の本の一覧となっているので、ぜひ気になった本があれば読んでみてください。
今回紹介するいくつかの書籍はKindleやAmazonオーディブルに対応しています。個人的にAmazonオーディブルは激しくオススメのサービスなので、ぜひそちらもチェックしてみてください↓
①Thomas Kranz『サイバーセキュリティの教科書』Smoky・IPUSIRON訳、マイナビ出版、2023年
「セキュリティについて予備知識ないけど勉強したい!」といった方におすすめなのが、Thomas Kranz著『サイバーセキュリティの教科書』(2023年)です。この本は「ハッカーとは何者で、どういった攻撃をするのか」「セキュリティリスクとは何か」「ソフトウェアに潜む脆弱性とは」といったサイバーセキュリティの基礎について丁寧に説明しています。
最初の1,2章を読むだけでも勉強になります。休日の読書にぜひ↓
②プラトン『パイドン──魂について』 納富信留訳、光文社古典新訳文庫、2019年
死の直前、「”死後魂はどうなるのか?”を弟子たちに語るソクラテス」を描いたプラトンの『パイドン』。本書は魂の不死についてのソクラテスの論証が主題ではあるものの、「哲学者(知を愛し求める者)は死に対して恐れてはいけない」、「言論嫌い(ミソロゴス)が生まれてしまう理由」といった、哲学に携わる者が遭遇しうる問題に対するソクラテスなりのコメントも大きな魅力となっている。
個人的に『パイドン』は、「魂の不死の論証そのものを厳密に解釈する」というよりも「死の前のソクラテスの話を聞く聴衆の一人としてまずは読んでみる」といった態度のほうが楽しく読めるのではないかなと思います↓
③西山茂『「専門家」以外の人のための決算書&ファイナンスの教科書』ダイヤモンド社、2019年
サラリーマンだけど「やっべ会計のこと全然ワカラン」といった方におすすめなのが、西山茂『「専門家」以外の人のための決算書&ファイナンスの教科書』(2019年)です。(2019年発行なのでちょっと情報は最新ではないものの)知識・用語解説の後に具体的な企業の数字を見に行くといった構成になっているので、理解しやすい構成になっています。
④植原亮『自然主義入門:知識・道徳・人間本性をめぐる現代哲学ツアー』勁草書房、2017年
高校倫理で哲学にハマって「よし哲学やるぞ」と思った人が直面するのが、哲学の一部講義で「”自然主義”とか”心の哲学”ってなんやねん、なんか使ってる用語が理系だし、やたら立場を明確にして論証したがるしよくわからん...」といった問題です。本書はそんな人が専門的な議論についていくためのレールを敷いてくれています。現代で「心とは?」「モラルとは?」といったトピックに関心のある人が、古典的文献の解釈にとどまらず自然科学的な知見も援用しつつ考えるために必読の書です。トピックはイカついですが入門書なので笑、知識ゼロでも(哲学に馴染みがなくとも)読めるように丁寧に解説してくれています。
⑤辻村深月『傲慢と善良』朝日文庫、2022年
「婚活」という言葉に、何か思うところのある人にはぜひ本書を勧めたい。「婚活」の嫌なところ、どうしてあなたが「婚活」を嫌と思うのかということが解明されているような本だからだ。登場人物たちの発言には、自分が過去どこかで誰か言われたことのある響きを感じるはずだし、また自分もしたことのあるような内省の言葉を反芻することになるかもしれない。オチは賛否両論ありそうな内容だが、読んできっと何かは得られるはずです。
⑥中畑正志『アリストテレスの哲学』岩波新書、2023年
元京大の中畑先生が出したアリストテレスの新書。けっこう濃密な内容なので学部3年生以上くらいのリテラシーがあるほうがおもしろいかもです。アリストテレスを研究対象として読みたいという人に特におすすめの本です。個人的には、最近発売される哲学系の書籍は古典的な哲学書の要約に終始せずトピックベースで書かれている解説書が多く(この本では論理学、心の哲学、形而上学に対応するような章立てになっているので)、専門領域と関連づけやすく嬉しいなという気持ちです。
⑦千葉雅也『エレクトリック』新潮社、2023年
1990年代の高校生のリアルな心情や生活が、そのままの状態、空気感で再生されているような印象を受けました!約160ページであり、流れるような文体なので頭に入りやすく「“一気読みが当然だよね?”というスピードで最後まで読める」ような本です。
⑧奈良由美子・稲村哲也『レジリエンスの諸相-人類史的視点からの挑戦-』放送大学教育振興会、2018年
レジリエンスとは、あえて訳すとすれば「頑健さ」「回復力」といった言葉になる。この日常的にはなじみのない言葉が近年、ストレスに対する耐性、企業におけるリスク管理、災害からの復興といった様々な観点と結びつけられている。今後ますます使用されるであろうレジリエンスについては本書が参考になるだろう。
⑨高橋哲哉『デリダ 脱構築と正義』講談社学術文庫、2015年
「西洋思想の最高到達点はジャックデリダだ」と認識している方も多いのではないでしょうか。デリダは、古代ギリシャから20世紀の哲学者までのテクストを様々な角度から読み解くことで、私たちに西洋哲学史をたどり直させるかのような体験をさせてくれます。西洋哲学史がある程度頭に入っている人ほどデリダの凄みを感じられるのではないでしょうか。すなわち、「ロゴス中心主義」や「脱構築」といったキーワードをもとにすると西洋史はまったく違った姿で立ち現れてくるのです。そんなデリダの思想を丁寧に解説しているのが高橋哲哉『デリダ 脱構築と正義』(講談社学術文庫)です。
⑩グレッグ・イーガン『しあわせの理由』山岸真訳、早川書房、2014年
「幸せとは脳内物質の作用にすぎないのではないか?」といった問いを浮かべたことはあるでしょうか?そのような問いを考えたことのあるアナタは、グレッグ・イーガン『しあわせの理由』をぜひ読んでみてください。もしこの作品がおもしろければ、SF小説で言えば伊藤計劃の小説を、学術研究では心の哲学の論文や書籍をおすすめします。(逆に言えば、伊藤計劃や心の哲学が好きな人には本書をおすすめしたいです。)
⑪宮口幸治『ケーキの切れない非行少年たち』新潮新書、2019年
2020年のベストセラー新書である『ケーキの切れない非行少年たち』。もう読んだ方もいらっしゃるとは思いますが、まだの方はぜひ読んでみていただきたいです。本書の主張とは端的に言えば、「物事を捉える認知が”歪む”と、行動もまた歪んでしまう」ということです。主観を生きる私たちも経験や知識を頼りにして”自分なりの認識”をしていると考えれば、私たち自身も"歪み"を持つのであり、所属している共同体にたまたまその"歪み"を許されているだけはないでしょうか。そうだとすれば、いわゆる「境界知能」の人々と私たちは決して無縁ではなく、むしろ同じ「主観を生きる主体」としていわば反省的に(自己を振り返る視点として)関わりうると言えるのです。
⑫國分功一郎『目的への抵抗』新潮新書、2023年
「現状分析、理想の把握、ギャップの抽出、ネクストアクションの決定」みたいなビジネス論理で、日常生活も含め「すべてを”最適化”しよう」みたいなノリにうんざりしている人にはぜひおすすめしたい本。ヒマ倫を読んでおもろかった人は100%楽しめる内容だと思います。
個人的には、ハイデガーやデリダの存在神論と類似した議論だと感じました。
⑬立川武蔵『ヨーガの哲学』講談社学術文庫、2013年
ヨガは単にポーズをとる運動ではなく、実は思想と深く結びついているんです。本書『ヨーガの哲学』では、ヨガの成立、受容、意味といったことが解説されます。インド思想は考え方がぶっ飛んでいるので、西洋哲学の思想書ばかり読んでいる人は知的興奮があると思いますし、またマインドフルネスブームなどで普段瞑想しているといった人が、「瞑想には意味や背景があることなのだ」ということが知れるという意味で良書だと思います。
⑭脇本平也『宗教学入門』講談社学術文庫、1997年
「宗教」を体系的に分類し、それによって人間にとっての宗教の意味を明らかにすること。「宗教」という極めて主観的・神秘的な領域を冷静に体系的に記述しアーカイブすること。そんな宗教学の難しさと”おもしろさ”を本書からは感じられます。以下紹介文の引用です。「宗教学とは何か。これについて本書は、次の3つの観点から考察する。1つは、事実を客観的に取り上げて主観的な価値判断を避け、2つは、宗教を人間の生活現象の1局面として捉え、3つは、特定の一宗教ではなく複数の多宗教を資料として取り扱う。」現在はライトな宗教学の入門書もいくつか出版されていますが、個人的にはゴリゴリに硬派な本書が好きです。
⑮松尾豊『人工知能は人間を超えるか ディープラーニングの先にあるもの』角川EPUB選書、2015年
GPTも登場し、非常に盛り上げっているAI。既にAIツールを利用している方も多いのではないでしょうか。しかしそもそもAIとは何でしょうか。実はいまのAIブームは「第3次AIブーム」なのであり、1900年代からAI研究は進められてきたのです。本書を読めば、AI研究の発展史や基礎理論を概観することができます。予備知識ない”文系”の人でも楽しく読めるおすすめの本です↓
⑯池谷裕二『進化しすぎた脳──中高生と語る「大脳生理学」の最前線』講談社ブルーバックス、2007年
僕はいつも、「脳科学気になるけど何から読めばいいんだろう」と言う方には『進化しすぎた脳―中高生と語る「大脳生理学」の最前線』をおすすめしています。神経科学の用語自体に馴染みがない方でもスラスラ読める本だからです。そんな”池谷本”で新刊が出るというのはかなり楽しみです!
というか、2冊目の『単純な脳、複雑な「私」』からもう10年も経ってるんすね。。。
⑰西山茂『「専門家」以外の人のための決算書&ファイナンスの教科書』ダイヤモンド社、2019年
ITプロダクトの開発・販売・運用に関わるビジネスパーソン全員におすすめなのが、『プロダクトマネジメントのすべて』です。本書の直接の対象読者はプロダクトマネージャーを志す人、現にプロダクトマネージャーですが、プロダクト開発・販促の一領域を担うエンジニア、マーケター、デザイナー、営業やカスタマーサクセスといった職種の方も”プロダクト”の周辺領域の知識を獲得できるという点で有益な内容です。約400ページと分厚い本ですが、各専門領域の重要点がまとめられているからこそ分厚いんです!
⑱現代位相研究所編『本当にわかる社会学』日本実業出版社、2010年
社会学の入門書って、クセのあるものが多い(大御所著者のエッセイ的なものが多い)と思うんですよね。そんな中で本書『本当にわかる社会学』は、社会学の重要用語を概観できる内容になっており、一冊読めば主要用語は押さえたことになるかなと思っています!
⑲亀田達也『モラルの起源──実験社会科学からの問い』岩波新書、2017年
⑳松本卓也『創造と狂気の歴史 プラトンからドゥルーズまで』講談社選書メチエ、2019年
㉑木部智之『プロジェクトのトラブル解決大全 小さな問題から大炎上まで使える「プロの火消し術86」』KADOKAWA、2022年
㉒千葉雅也・二村ヒトシ・柴田英里『欲望会議 性とポリコレの哲学』角川ソフィア文庫、2021年
㉓長谷川眞理子『生き物をめぐる4つの「なぜ」』集英社新書、2002年
㉔上田閑照『私とは何か』岩波新書、2000年
㉕熊代亨『人間はどこまで家畜か:現代人の精神構造』ハヤカワ新書、2024年
「建前上は自由とされているけれど、科学的知見からしたら、また実際送っている生活からしても、自分は家畜みたいだな」といったことを考えてしまう人が、面白いと思うような内容なんでしょうか?
こんな内容の本を読んで、自分の家畜性を自覚して生活を変えることができなかったら、「満足な豚」から「不満足な豚」になってしまうのではないでしょうか?
不安です!
㉖佐伯啓思『自由とは何か──「自己責任論」から「理由なき殺人」まで 』講談社現代新書、2004年
㉗フリードリヒ・ニーチェ『道徳の系譜学』光文社古典新訳文庫、2009年
㉘鈴木隆美『恋愛制度、束縛の2500年史 古代ギリシャ・ローマから現代日本まで』光文社新書、2018年
㉙國分功一郎『はじめてのスピノザ──自由へのエチカ』講談社現代新書、2020年
㉚宮田善孝『ALL for SaaS SaaS立ち上げのすべて』翔泳社、2021年
㉛千葉雅也『現代思想入門』講談社現代新書、2022年
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おまけ:2024年1月に度んだ本の振り返り
筆者個人は、今月は以下のような本、ジャンルの書籍を読みました。やっぱ哲学ないし現代思想おもろいということと、IT奥深いな~(各領域で専門的な知識が求められる)といった感想です!
サイバーセキュリティ
『純粋理性批判』
『創造と狂気の歴史』
プロジェクトマネジメント(特に計画立てのためのWBS作成)
最後までお読みいただきありがとうございました!
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