真実は二つ、嘘は一つ【本掲載版】
本作は逆噴射小説大賞2020年に投稿した作品の本掲載版です。
俺は警官の言葉が信じられなかった。
「真美子が存在しない?」
「事実です。来亜誠さん、あなたは電脳をハックされ、偽の記憶を植え付けられました」
「そんな馬鹿な。現に彼女と撮った写真がスマホに……」
真美子の写真はなかった。一枚も。
着信履歴やメッセージログなど、彼女を示すものは一切ない。
このスマホは生体認証式だ。所有者以外にデータの削除はできない。大切な思い出を消すわけがないから、つまり最初から写真