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伝説のサンダーライフル

 奇妙な依頼だった。良家のお嬢さんらしき少女が突然現れて、古代銀河魔法帝国が遺した宇宙ステーション遺跡にはびこる敵を全滅させろと言ってきたのだ。彼女は自分の正体もクエストの意図も語らない。

 怪しいと思ったさ。普通は受けない。だが、前金をもらえるなら背に腹は代えられない。仲間から捨てられた俺は、今日の食事にすら困っていたからな。

 宇宙ステーション遺跡で待っていたのは無知性型ドロイドだ。俺は相手の先を読み、一発も外さずに倒す。

 床に転がるおびただしいドロイドの残骸。だが、俺に勝利の高揚感はなく、心にあるのは虚しさだけ。

 銃の腕に自信はあるが、魔法のほうが高威力で弾代もかからない。なのに銃を使ってるのは、俺に魔法の才能がないためだ。

 魔法が使えない宇宙冒険者など無能の代名詞だ。パーティーから追放されても文句は言えない。それでもあの夢を諦めきれないから冒険を続けている。

「一次試験は合格ですね」

 いつの間にか俺に依頼をよこした少女がいた。

「試験? お前は何がしたいんだ?」

「私はこのサンダーライフルの精霊です。私を生み出した魔法と科学の夫婦神は、強い人を自分のマスターに選びなさいと言いました」

 少女は神秘的な銃を俺に見せる。

「サンダーライフルだって? 単なる伝説じゃ……」

 少女のライフルから雷の弾丸が放たれ、俺の足元の床を穿つ。古代銀河魔法帝国の建築物は現在の技術では破壊不可能なはず。それに穴を空けるなんて。

「無駄話は結構! 二次試験は私との決闘です。一発でも当てたら、合格です。ただし……」

 精霊がサンダーライフルの銃口を突きつける。

「不合格なら死んでもらいます」

 精霊が引き金を引くと同時に俺は避ける。相手の目線と角度から射線を先読みしていなかったら、命はなかった。

 俺は反撃する。だが精霊も射線の先読みをして避けた。

 この試験。なかなか大変そうだ。

【続く】

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