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機動想念ガランドウ

『エンプティ1、応答してください! エンプティ1!』

 頭の中で響く声で私は目覚める。
 私は戦場の真っ只中にいた。どうしてこんなところに?
 ……思い出した。私は伽藍洞楚良。東日本民主皇国のRGパイロットとして西日本共和国の部隊と戦っていた。

 RG、正式名ロボティクスジャイアントは人の5倍以上のサイズを持つ搭乗式人型ロボットで、現代戦における主力兵器だ。
 私は機体を起こす。RGは操縦システムとパイロットの意識を接続するので複雑な手順はいらない。
 視覚も頭部カメラとリンクしているので、主観的にはこの機体こそが今の私の体だ。

「こちらエンプティ1。応答が遅れて済まない。状況はどうなってる?」

 私は通信で味方に問う。

『敵軍が撤退をはじめました。速やかに基地へ帰還してください』
「了解、これより帰投する」

 今回の戦いは激しかったが、どうにか生きて帰れるようだ。
 私がホッとしたのもつかの間、撤退中の敵機と遭遇してしまった。
 相手は私を見て妙に動揺している。まるで幽霊を見たような様子だ。
 混乱した敵機は銃をデタラメに撃ち、弾丸はあらぬ方向へ飛ぶ。

 私は冷静に狙って引き金を引く
 放たれた弾丸は敵機のコックピットを貫く。中のパイロットは生きていまい。
 その後、基地へ帰還するのだがどうも様子がおかしい。
 皆、信じがたいものを見るような目を私に向ける。

「一体何があった?」

 外部スピーカーで問いかけるが誰も答えない。それどころか味方機が銃を向けてきた。

「本当にどうしたんだ!? 私は味方だ!」

 この時、私は自分が被弾してたのに気付く。だから戦場で気絶してたのか。
 被弾箇所はコクピットだった。深い銃痕が穿たれている。
 銃痕から何かがこぼれ落ちた。
 死体だ。損壊は激しいが顔は判別できる。間違いなくこの私、伽藍洞楚良だ。
 私は機体の手と自分の死体を見比べる。

「なぜ」

 すでに私が死んでいるなら、この機体に宿る”私”は誰だ?

【続く】

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