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面白そうだと思ったらやってみる。徳島大学 西村亮祐さん

生化学若い研究者の会(生化若手の会)の代表山本さんにご紹介いただき3代前の生化若手の会代表西村さんにインタビューさせていただきました。

生化若手の会の3代前の代表の西村さん。
自分自身が楽しむよりも、その場に来てくださった人が楽しんでるのを見る方が喜びを感じて、どのコミュニティでも主体的に動いていると、いつの間にかリーダーポジションをすることが多くなったとのことでした。
リーダーは肩書きではなく、周りが決める。主体的に動く行動力を見習いながら、まわりとの信頼関係を築いていきたいと感じました。

癌細胞に興味を持つ。細胞の構造は不思議で美しい。

ー今、どんな研究をされていますか?

西村さん:細胞生物学の分野の研究をしています。
特に細胞の動きや組織の形作りに関わる所に興味を持っていて、普段は培養細胞を使って研究しています。
細胞の中にある細胞骨格という細胞を支える骨組のようなものや、細胞同士をくっつける細胞間接着の働き、また、細胞の制御に関わっている分子の機能が細胞のふるまいにどう影響を与え、細胞がたくさん集まった時の形にどのように反映されるのか。分子から組織までのつながりを知りたいと思ってやっています。

ー今の研究に至った経緯をお聞かせください。

西村さん:徳島大学に来る前の東北大学の学部の時から一貫して研究しています。
癌を始めとする、疾患に関わるような研究がしたいなと考えていました。その中でも、日本人には一般的な疾患である癌に興味を持ちました。癌の浸潤や転移には細胞の動きが関わっていると知り、どう関わっているんだろうと思いました。
実際に研究を始めてみると、単に細胞が動いているだけですごいな、不思議だなと感じました。その後、基本的なメカニズムを知りたいと興味がシフトしていきましたね。

一メカニズムの研究の面白さや魅力は何でしょうか?

西村さん:細胞の研究では、顕微鏡で細胞の様子を見ます。
タンパク質や脂質など、化学的な物質の集まりが、自分の意思を持ったかのように動いているんです。細胞の中の構造が率直にすごいな、すごく綺麗だな、不思議だなという印象です。
なぜ一つ一つの分子の働きが、細胞の振る舞いにつながっているかが知りたいです。

西村さんにオンラインでインタビューさせていただきました。

「面白そうだな」深く考えずに生化若手の会へ。携わること10年。

ー生化若手の会(https://www.seikawakate.org/)の3代前の代表とお聞きしました。そもそも入会のきっかけは何だったのでしょうか。

西村さん:当時Twitterでつながっていた先輩が、生化若手の会の運営や宣伝をしておられて、面白そうだなと深く考えず参加しました。

今は引退していますが、東北大にいた学部2年の夏に生化若手の会に初めて参加し、それ以来10年近くいました。企画、運営をやり遂げる達成感もありますし、元々人とつながって話をするというのが好きなんですね。気づいたら運営、代表もさせていただいて、長い間携わっていました。

ーなぜ生化若手の会代表に選ばれたと思いますか?

西村さん:生化若手の会の活動は、いくつかあります。生命科学夏の学校と、全国支部の活動、雑誌、実験医学のコラムを書いたり、高校で出前講座もやっています。
私は、会の中でも珍しく、全てに参加していて各方面の勝手がわかってたっていうのがあります。
修士2年の夏に生命科学夏の学校の代表、その後は前代表のご指名をいただき代表になりました。
もしかしたら生化若手の会愛が伝わっていたのかもしれないですね(笑)。

コミュニティでの人とのつながり。何でもやってみる。長く続ける。

ーメカニズムをひたすら見ていく事と、何かを企画して達成する事は相反するな、と思うんですが、どちらもお好きなんですね。

西村さん:そうですね〜。日頃研究は、真理の追究みたいな感じで黙々と作業をすることが多いので、他の人との交流を求めていたんだと思います。
基本、深く考えずにちょっと面白そうだな、と思ったら何でもやってみるスタンスでずっときてまして(笑)。
やり始めたら何でも長く続ける方だと思います。

ー何でもやってみる、やり始めたら長く続けられる方なのですね。

西村さん:長く続けてきたことはいくつかあります。
英語スピーチは、中学2年生の時から高専5年生までの7年間大会に出続け、全国大会に4回出ました。大学に入ってからも2年間やっていました。
陸上競技も中学、高専とやってました。陸上が好きだったので、大学に入ってからも何かの形で関われたらと思い、マネージャーや大会運営をやってました。

大学では、写真部、陸上部、英語部、登山サークルと、4つ掛け持ちでした。
何でもやってみることと、長く続けることを心がけてるわけじゃないんですが、結果的にそうなっています。

長く続くのは、活動自体が楽しいっていうのもありますが、やはり各コミュニティで人とのつながりが生まれることが好きなんですね。
ずっとひとつの場所に留まっているよりは、複数の場所に顔を出した方がいろんな話が聞けて新鮮で面白いというのがあります。

ーコミュニティを横断するのが好きなんですね。生物化学若手の会のメンバーは、今でも集まったりされているのですか?

西村さん:生物化学若手の会のメンバーとは今でも付き合いが続いています。オンラインで飲み会したり、学会をオンサイトでやってた頃は、学会各地に行くと集まっていました。
アカデミアや企業で研究を続けている人が多いので、悩みを共有できるのがいいですね。

西村さんの研究の様子(細胞の構造観察)

いつもリーダー的ポジション。生物化学若手の会、廃部の危機を乗り越える。

ー印象的だったエピソードをお聞かせください。

西村さん:学部3年生の時、生物化学若手の会の東北支部、支部長を任されました。

私を入れて3人しか部員がいなくて、人手不足で廃部の危機でした。
メンバーを募集してもなかなか集まらず、何とか人を集めたいなと考えました。
東北大で活動していた生命科学系の他団体の代表の方々にアプローチして、乗っかる形で一緒にセミナーや懇親会や宣伝をさせていただいて、徐々に部員が集まり出しました。

一番多い時で50人以上セミナーに来ていただきました。
支部はその後何代か代替わりしてますが、セミナーは続いているそうです。

ーすごいですね。場作りが好きなのはいつ頃からですか?

西村先生:どの場所でも、いち参加者として参加し、すごい人がいっぱいいるな、居心地がいいな、から始まります。
でも、いち参加者で終わるよりは、主体的にいたい。そして、自分自身が楽しむよりも、その場に来てくださった人が楽しんでるのを見る方が喜びを感じるんです。

小中学校の時は、学級委員長や、生徒会長、部長などリーダー的なポジションにいました。
いつでも好きでやっていました。
大変なこともあり、何回か懲りてやらんぞってなるんですが、気づいたらまたやっています(笑)。

ーリーダー気質で頼まれたら断れないんですね。

西村さん:そうですね。基本断らないスタンスで何でもやってみる。チャンスを他の方から頂いたら、自分の為にもなると思うんで。

生物化学若手の会では、運営までするつもりはなかったんですが、先輩に強引に引き込まれてですね。
ちなみに実行委員会に入れた先輩っていうのが、私の妻です(笑)。
運営をやっているうちに仲良くなりました。

奥さんも研究者。研究者同士の結婚の現実。

ーえ!奥さんも研究者なんですか?

西村さん:奥さんも研究者です。妻は、もともと徳島大学出身で、民間で働いて、その後ドクターから徳島大学に戻っています。
つい先月までは徳島にいたんですが、今は神戸大学でポスドクやってます。
私は東北大学出身で、ドクターから徳島大学にいます。徳島に来たタイミングが彼女と同じでした。

ー西村さんは今、博士課程学生、次のポジションはポスドクですよね。
研究者同士の結婚って実際どうですか?

西村さん:よく聞かれます。学生結婚して今、3年目です。
先が不安定っていうのはお互いわかっているし、どうせ一緒にいるんだったら結婚してしまったほうがいいな、現実的にお金の事や何かとメリットがあると思いました。
ちょうど夫婦ともに学振が取れて、生活も何とかなりそうだということもあり、勢いで結婚しました(笑)。

ー今、奥さんは単身赴任中ですか。

西村さん:週末は帰ってきてますが、別居になってしまいましたね~。
私、ポスドクをシンガポールに予定してまして。当初は奥さんもシンガポールでポストを探してたんですが、研究分野が盛んでなく、ポストがそもそも少ない。今の社会情勢も考えて国内で、と落ち着いています。別居になっちゃうけど仕方ないですね。
これが現状で、生の声ですね。

「好き」を大事に。苦手なことも、何とかなる。

ーここからどんなことに挑戦していきたいですか?

西村さん:研究室をPIとして運営して、自分の興味を追求しながら次世代の研究者を育てていきたいです。
場所は国内にこだわってないんですが、どこかの研究機関でラボを持てたら、と思っています。

ー理科系に進みたい中高生や若手研究者に一言お願いします。

西村さん:私は高専の化学工学科出身なんですが、数学や物理が大の苦手でして…。
大学に進学するにあたって、自分の好きなことや得意なことを活かそうと思いました。実は生物学や、応用よりも基礎をやりたいと思っていました。
たまたま行きたいと思った大学の編入試験が、得意な英語と生物だけで、それを機に、工学系から理学部に移りました。

理系といっても色々で、専門分野や求められる知識も変わってきます。
情報を幅広く集めてみて、その中から自分の得意なこと、適性との兼ね合いを見極め、進路を選んでみたらいいんじゃないかなって思います。

また、適性も大事ですけど、苦手だったとしても好きなら何とかなるんじゃないかな、と思います。
無責任に言えないですが...やってみたい、好きだな、面白そう、って気持ちがあればきっと何とかなるんじゃないかと思うので、自分の「好き」を大事にしてもらえたらいいなと思います。

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