映画と車が紡ぐ世界chapter162
スパイダーマン:ジープ・グランドチェロキーSRT8 2018年式
Spider-Man:Jeep Grand Cherokee SRT8 2018
「私のこと スキ?」
「もちろんさ」
「それじゃ ”お前が好きだ!”って 言ってほしい・・・」
「それは・・・また今度ね・・・」
そんな会話を 何度繰り返してきただろう・・・
いつも 曖昧な理由をつけて 逃げてしまう
ピーター・パーカー(Tobey Maguire)のように
スーパーヒーローとしての使命でも抱えているの?・・・
親友のMikiに 相談すると
「それは 二股かけられてるねぇ~」
人の悩みを 自分の楽しみにする
それ以来 私は この悩みを 誰にも打ち明けることをやめた
その結果・・・
私の身体の中に抑え込まれた悩みは
彼の行動一つ一つを 疑う瞳を作ってしまった
和菓子派の彼が 最近よく 口にするのは
私も密かに好きだった マグノリアベーカリー のパンプキンチーズケーキ
あれだけ ”スウィーツといえば 双葉のたい焼きでしょう”と
譲らなかった 和風専門だった彼が・・・
音楽の趣味も コブクロから
ブルース・スプリングスティーンに・・・
極めつけは
先月買い替えたグランドチェロキー
4ドアセダンばかり 乗り継いできた彼が・・・
趣味を ことごとく塗り替える その背景には 間違いなく女性がいる
私の直感は いつもあたるのだ
だから・・・
私は 今日も彼に言う 「私のこと スキ?」と・・・
もしかして・・・ それが重荷だったの・・・
街と私のハートに 木枯らしが 吹き荒れた
そんなとき
「実家の模様替えの手伝いに行くから 一緒に来ないか」
軽いノリで 彼に誘われた
はじめて会う 彼のお母さんは
世界中の全てを 丸くする能力を持っているような
真ん丸の 暖かい女性だった
私は・・・
いつの間にか 初対面だというのに 心の内に秘めた悩みを吐露していた
お母さんは 庭にある 木製のガレージに 私を誘った
「ここには あの子のお父さんの車が 停まっていたの」
お母さんの瞳は 遥か昔にタイムトラベルしているように見えた
「お父さんも 一度も愛してるなんて 言ってくれなかったわ
お父さんが いなくなって お父さんの物も少しずつなくなって・・・
思い出も 少しずつ薄れていった
この がらんどうの ガレージのようにね」
そう言いながら お母さんは ガレージの一番奥の壁を指さした
「・・・ でもね 私は これを見つけたのよ」
板壁には 彫刻刀のようなもので 文字が刻まれていた
『明日 大好きなMariと結婚する
いつまでも カノジョと一緒に ドライブができますように』
「このうちの男たちは 本当にシャイなのよ
でも 間違いなく あなたを守ってくれるわ」
そう言うと お母さんは 刻まれた文字を
手をつないでいるように 優しく撫でた
「どうしたの!二人とも」
彼がやって来た
「何でもないわよ!」
そっと 瞼に手を当てながら お母さんが言った
「ほら 君が大好き チーズケーキだぞ
模様替えも ひと段落したから
君の大好きな アメリカン方式の おやつタイムにしよう
俺も いつの間にか アメリカンスタイルに染まっちまったな!」
!!
私は・・・私は・・・
どうやら 私は自分の影に嫉妬していたようだ
お母さんに
ポンと 背中を押されたとき
ハートに ミュージックが流れた
今日が 彼と私の本当の始まり・・・
♪ Bruce Springsteen - Dancing In the Dark ♪