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映画と車が紡ぐ世界chapter124

P.S. アイラヴユー フォルクスワーゲン ビートル タイプ1 1976年式
P.S. I Love You Volkswagen Beetle Type1 1976

高校1年のとき ポニーテールの先輩に恋をした
テニス部の花型だった彼女と
どうしたら 付き合うことができるのか
僕はクラスメートのアイツにアドバイスをもらった

♪ P.S. I Love You - Nellie McKay ♪

「先輩は ポニーテールで有名だけど
 あれは テニスのためで ホントはストレートが好きなの!
 他の人たちと 同じところを見てちゃだめよ!」

”先輩にはストレートヘアが 似合うと思います”
その一言で 僕は友達以上の関係を手に入れた
ただ・・・
先輩が卒業するまでの 半年間だけの関係だったけど・・・ 

大学生になり 僕は本屋でアルバイトを始めた
そんな僕を茶化すように アイツはよく本屋に現れた
その実態は ラーメン屋の娘だったアイツが 
僕のバイト先で 週刊誌を仕入れに来るということだったが

「あぁ~あ せっかく 先輩との仲を取り持ってあげたのに! 
 そんで 大学ではカノジョできたの?」

彼女なんているはずもないことを 知っているくせに 
こういう嫌味を言うやつだった

日本中を 気ままに旅するために 車が欲しかった・・・
だから 授業以外は 脇目も振らず ひたすらアルバイトに精を出した 
そして3年目・・・
走行メーターが何周したかわからない 
1976年式 ビートルtype1を 手に入れた

よし! 行くぞ!
夢の実現に向けて 第一歩を踏み出そうとしたとき・・・
優柔不断な僕は 候補地が多すぎて 
東・・・西・・・南・・・北・・・ どの方向にも進むことができずにいた

”Batan!”

サイドミラーが 落っこちそうな ものすごい勢いで 
助手席にアイツが乗り込んできた

なんだ・・・ なんだ・・・
思考が追い付いてこないうちに

「それじゃ箱根に行こうか!」
そう言うと 
アイツは 缶コーヒーを僕に手渡しつつ
格闘ゲームの必殺三連コンボのように
サンドイッチが入ったバスケットを後部座席にすとんと置き 
持参のマイMapを広げた

用意周到・・・知恵才覚・・・勤倹小心・・・
ホントに どこまでも気の利くやつだ
ビートルは 西に進路をとった 行先は箱根神社

ここで一つ言っておく!!
決して! 
アイツが 提案したからではナイ!
僕も 箱根が最有力だと思っていたのだ!

そうビートルに 言い聞かせながら アクセルを踏んだ

社会人になって
夜遅くまで先輩につき合わされ べろべろに酔った日は
最後に 必ずアイツの店に立ち寄った
そんな時のラーメンは ものすごく酸味が効いていた
後で知ったことだが 二日酔いには お酢が良いらしい

おふくろが病気で倒れたとき
アイツは 僕よりも先に 病院の待合室にいた・・・

毎年 バレンタインになると・・・
「ほらっ!」
と 放り投げるように チョコレートをくれた・・・

でも・・・

今年の2月14日・・・
チョコレートは届かなかった
男友達から アイツが見合いをしたと聞いた

見合いだって・・・
おかしくもないのに 僕は笑った 
気が付けば
僕の記憶装置には アイツとの思い出ばかりが 詰まっていた

人生初めてのマイカードライブ 行き先は箱根神社
目的は・・・
神社近くのポストから 手紙を出すこと

手紙は 苦手だ・・・
取り留めもない これまでの僕の人生と 日常を綴った

そして・・・
最後に  P.S. I Love You

一週間後・・・
アイツから 届いた小包には 
ハートのチョコレート そして・・・

P.S. Me too

と書かれた 桃色の一筆箋が入っていた


※ 箱根神社は 縁結びで有名ですね!

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