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映画と車が紡ぐ世界chapter108

ジャックと天空の巨人 三菱 パジェロ ショート VR-II 3200DID 2012年式
Jack the Giant Slayer Mitsubishi Pajero VR-2 3200DID  2012

国道254号(川越街道)から農道に入る
あとは一本道
暦の上では立冬なのに 夏のような日差しを受けるパジェロ 
今日は 最高のドライブデート日和

ただ これから行く場所は・・・

都会派のカノジョに適切な場所? → → → No!

その後の発展性は? → → → たぶん No!

つまり 初デートとしては → → → Bad チョイス!
それでも 今日の体験が 
カノジョに 新しいトキメキを芽生えさせてくれると 信じていた

ところが・・・
ラガーシャツとGパンが必須と伝えておいたにも関わらず 
真っ白なニットのワンピースでやってきたカノジョを見た瞬間
僕の思いに抗う 見えない力を感じた
それでも 熱くたぎるパジェロと僕のハートは 止められない

真っ青な空と競うように 遠く続く平坦な土地の中に 
それは 突然現れた

「もしかして・・・ あれ・・・?」
助手席からの 
カノジョの痛い視線を感じながら 僕はそっと軍手を手渡した 

haaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaa
空に浮かぶ 羊たちをすべて 吹き飛ばすほど
カノジョが 大きくため息をついたとき 目的地に到着した

~ かわごえ いも ~

そう・・・ 秋と言えば 芋ほりだ

土に触りたくないと 駄々をこねたカノジョも
サツマイモが顔を出すと ホトトギスのように歓喜の声をあげた

1株から大ぶりのサツマイモを7つも採ると
当たり前のように 農場のスタッフに 2株目を申し出てるカノジョ
結果的に3株掘った僕たちは 20本の戦利品を手にした

ほんのり土の香りがスパイスされたカノジョは 
いつにもまして魅力的だった
初デートは大成功・・・と思ったのが フラグとなった
すっかり 芋掘りにはまった カノジョが
掘り出したサツマイモに そっとキスをしようとした瞬間・・・
サツマイモについていた土の中から ミミズが
ニョキっと顔を出した

川越の静かな農村の地に ソプラノの悲鳴が木霊した

帰りの道は 沈黙のロード・・・
「今日はありがとう」それだけ言うと 戦利品を置いたまま
カノジョは パジェロを降りた


僕には もう・・・ 声をかける勇気はなかった
目を閉じると 
サハラ砂漠の巨大な砂の山を 飛び越えて転倒クラッシュする
パジェロが浮かんだ

20本のサツマイモ・・・
一人で消費するには多すぎた 
駐車場横の庭に放置されたサツマイモは 
僕の心を写し出すように 木枯らしに さらされ しわがれていった

それから1年後・・・
立冬の日に カノジョから連絡が入った

「お芋掘り・・・しませんか」

週末14:00・・・
僕の指定した時間にやってきたカノジョは 
僕と同じ ラルフローレンのラガーシャツにGパン姿だった

「今から 川越に向かって間に合うの?・・・」
心配そうに つぶやくカノジョと共に パジェロに向かった
しかし・・・ 
僕の手は 車のキーではなく キンキンに冷えた缶ビールが2本・・・
丸目のヘッドライトに 
クエスチョンマークを浮かべた カノジョの顔が映し出された そのとき
僕とカノジョの 複雑な想いを養分にして 
ジャックの豆の木ように 柵を伝ってに天空に伸びた サツマイモが見えた

「パジェロ農園へ ようこそ!」

土まみれになりながら 
サツマイモを 満面の微笑みを浮かべて掘り出す  
カノジョを見ながら 僕は 缶ビールを空けた 

秋の空・・・
天空のどこかに存在する巨人に ウインクした僕は
カノジョの横にしゃがみ込み 一緒に芋ほりを始めた
 
部屋から流れる 
アートガーファンクルの声が やさしく僕らを包み込む中 

ありがとう・・・
カノジョの唇が 僕の頬に触れた

♪ This Is The Moment - Art Garfunkel ♪



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