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映画と車が紡ぐ世界chapter120

ゼロ・グラビティ ボルボ V40 T5-R B420型  2015年式
Gravity Volvo V40 T5-R B420 2015

会社を出て15分
西湘バイパスに入ると
スカンジナビアスポーツのV40は軽快にスピードを上げる

身体が熱い・・・

10年前 WRCにはまり
週末レーサーだったころに感じていた 熱さに似ていた

「最近 スポーツ走行していないから 欲求不満かな・・・」

そう思うと 
フワリと浮かんだデビル心が アクセルを踏み込ませる

正式名称 V40T-5 Rdesignの
直列5気筒2リッターターボエンジンが一気にRedゾーンへ振れる

!!

その瞬間・・・ 反対車線で 
パトランプが点滅した ・・・危ない 危ない

悪魔のささやきを 初期消火した僕は 
いつもの安全運転で 家路についた

「おかえりなさーい」

扉を開けると 
ユーカリの香りと共に・・・ カノジョの声・・・
今日の疲れも一瞬で癒してくれる

「ご苦労様でした 食事にしますか?」
カノジョの優しい声が続く

「とりあえず 風呂に入るよ・・・」
そう言おうとしたが 声が出ない
我が家が アクシデントに遭遇したソユーズのように ぐるぐる回り始めた
いきなり 無重力空間に転送された僕は
よろめきながら 
ラベンダーのドライフラワーが飾られた 寝室のベッドに転げ込んだ

まるでマット・コワルスキー(George Clooney)だな・・・
そんな思いが浮かぶと カノジョの声が聞こえた

「熱があるわ そのまま休んで・・・
 貴方は いつも2月になると インフルエンザにかかるんだから・・・
 ホントに子供みたい! 私がいるから ゆっくり休んで」

カノジョに甘えて 目を瞑ると お気に入りのCDが流れてきた・・・

♪ Gary McFarland  And I Love Her ♪

「ごめん・・・  うつるといけないから 近くに来ないで・・・」

布団にもぐりながら 弱弱しく言う 

「あなたの インフルエンザなら
 うつっても構わない
 あなたが辛いときに 近くにいるな なんて言わないで・・・」
カノジョの 泣きそうな声が聞こえた

「ごめん・・・」

「なんでも あやまるのは 貴方の悪い癖よ!」
カノジョの言葉に 思わず ごめん あっ・・・!!

「ほらっ・・・」

Hahahaha・・・ 

Fufufufufu・・・

可笑しくて 切なくて 涙が止まらない・・・

もう一度逢いたいよ・・・

ベッドの中で 涙する僕の手を 懐かしい温もりが触れた

1年前・・・
遠い世界に旅立った アロマセラピストのカノジョが残した
ユーカリ・・・ ラベンダー・・・ そしてティーツリー
部屋のあちこちに置かれた植物たちが 
僕の夢の中に カノジョをエスコートした


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