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映画と車が紡ぐ世界chapter109

ナイトメアー・ビフォア・クリスマス トヨタ MR2 SW20型 1999年式
The Nightmare Before Christmas Toyota MR2 SW20 1999


「一人で大丈夫かい?」

ジャック・スケリントンが言った
彼は 10年前から僕の愛車 
MR2のバックミラーにぶら下がっている
カノジョよりも長い付き合いだ

「あぁ 今夜はバトルになりそうだけどね・・・」

そう言い残して MR2の運転席を出る
車内に残された 
ジャックが両手をブラブラさせながら ヤレヤレというポーズ

「分相応をわきまえないと 痛い目に合うよ!」
背中に向かって ジャックがつぶやいていた

「お父さんは なにかと お酒を薦めてくるから 気を付けてね」

カノジョの両親への初めて挨拶  
人生最大のイベントにおける 
コーチ(カノジョ)からのアドバイスは たったそれだけだった

ワインの輸入を生業とするカノジョの実家は洋風の一軒家 しかし・・・
僕には それがノイシュヴァンシュタイン城がに見えた
僕の住む世界とは異なる香り
大脳の中で ジャックの呟きが木霊した

分相応・・・

ところが 思いがけず 異世界の住民カノジョの両親は 
僕を暖かく向か入れてくれた
世間話で和やかに時が過ぎると
僕のセキュリティモードは 
いつしか オールフリーの未警戒状態になっていた
ごく自然に メインイベントである カノジョとの結婚について切り出した

♪ MAGIC! - Rude ♪

その時・・・空気が変わった・・・

「君が好青年なのは よくわかった 
 しかし それと これは別だ
 大切な娘を 簡単に譲るわけにはいかない 
 どうだ 酒で勝負しようじゃないか!」

「いい青年なんだから そんなこと しなくていいじゃない」
お母さんの 心にしみる 援護射撃 
しかし・・・
お父さんの瞳は
つくばサーキットで せめぎ合った 仲間たちと同じ目をしていた
デッドヒートになると 冷めてしまう僕は 常に一番が取れない二番手
周囲の人は 僕の愛車に引っ掛けて ”No2(エヌオーツー)”と呼んだ 
そんな僕に 線香花火ほどの闘志が湧いた

カノジョのお父さんの提案はワインを5本空けられるか というものだった
出された酒を 
飲み干せない 軟な男には 娘を渡せるか! ということらしい・・・

「少しだけ 時間をください」

娘をほしいという青年は 
家を飛び出していった
薬局にウコンでも買いに行ったのだろうか
まぁ その程度で飲に切れるなら許してやろう そんなことを思っていると 青年は 15分ほどで帰ってきた
走ってきたのか 顔がほんのり赤かった

「それでは はじめましょう」
そう言うと青年は いとも簡単に5本のワインを空けた
あまりにも見事だったので 薬に頼った彼が腹立たしく思えた
ワイングラスを一気に空けた私は 青年に向かって いきり立った

「さっき出て行ったときに 何をしてきた!
 薬に頼るような小細工をしたのなら 無効だぞ!」

酒の勢いで 少し口調が強くなってしまった 
娘の額から 角が飛び出してくるのが見えた 少し言い過ぎたか・・・

!!

ところが 彼は どこまでも にこやかに言った

「ワイン5本も一気に飲み干す経験は 
 さすがになかったので 向かいのコンビニで 試してきました!」

!!

その日 僕は エムオーツー改め エムアールツーの称号と共に 
カノジョとの未来を手に入れた


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