映画と車が紡ぐ世界chapter141
ルーパー マツダ ロードスター NA8C型 1992年式
LOOPER Mazda MX-5 1992
地方都市の”道の駅”に夜行バスが停車した
バスの中には 小さなカウンターにトイレも完備されていたが
男は 道の駅の向いに見えたバーの
ネオンサインに引き寄せられるように バスを降りた
♪ Chuck & Mac - Powerful Love ♪
70年代のミュージックが流れる中
時おり通過する大型トレーラーのエンジン音がアンサンブルを奏でる
男はカウンター席に座ると ギムレットを注文した
「いつになったら結婚してくれるの!」
温暖気候の穏やかな店の中に 突然低気圧が発生した
窓際の席では
下を向いて ひたすらブラッドオレンジを チビリ チビリすする青年に
モスコミュールを一口で飲み干した女が グイと詰め寄る
その瞳は 一酸化二水素・・・ つまり涙が 溢れようとしていた
再び 音楽が流れ始めた
♪ Alone Again - Gilbert O'Sullivan ♪
淡いピンク色のワンピースを着た女が 化粧室に向かった
「そろそろだな」
男は 残りのギムレットをぐいと空けると
ブラッドオレンジの向いに座った
「なっ・・・なんですか・・・」
突然の出来事に 若者は驚いている
男は 彼の緊張をほぐすように 満面の笑みを浮かべて言った
「今日 告白しなければ 一生悔いを残すよ ボーイ」
そんなこと お前に言われたくない という目つきで睨む青年
「東京にいる もう一人の女性のことは忘れるんだ
彼女は 君のことを遊びだと思っている」
バーテンの手元におかれた ブルーラグーンのように
彼の顔が真っ青になった
「どうして それを・・・」
「そんなことは 重要じゃない」
男は カクテルを 3つオーダーした
ひとつは
彼のための ノンアルコールカクテル レッドソンブレロ
外に停められた 青年のロードスターと同じ赤色
そして カノジョが好きな色
二つ目は カノジョに・・・
ワンピースに合わせた淡いピンク色の シンガポール・スリング
最後は 自分のために ウィスキーベースのオールドファッション
「プロポーズには こいつが必要だ」
男は カバンの中から ルビーのリングを取り出した
「それは・・・ 家にあるはずなのに・・・ どうして・・・」
途方に暮れる青年
「いつか わかるときが来るよ ボーイ
ジョー(Joseph Gordon)のようにね・・・」
男が席を立つのと同時に カノジョが戻って来た
すれ違う男を 不思議そうに見つめる女
男は にこりと微笑みながら 会釈をすると店を出た
バスに戻った男は
車窓から 真っ赤なユーノスロードスターを眺める
店を出てきた 二人・・・
突然 青年が 助手席のカノジョに指輪を渡した
驚きのあまり 泣き出すカノジョ・・・
二人は きつく抱きしめ合った
ようやく あの指輪が あるべきところに届いた・・・
男を乗せた夜行バスは
深く霧の立ち込めた夜道へ ゆっくり走り出した
※1992年式 マツダロードスターはLooperでジョーが乗っています
未来と過去の物語と言えば楳図かずお作「漂流教室」がありますね
因みに、あの大和小学校が未来に転送されるのは6月28日のことです
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