見出し画像

キムタク主演連ドラに登場「ニールセンローゼ桁橋」

テレビ朝日系で毎週木曜午後9時から、連続ドラマ「Believe-君にかける橋-」が放送中。5月16日に第4話が放送されましたが、思いがけぬ展開に次回の放送が待ち遠しい限りです。

個人的に、井上由美子さんが脚本を手がけるドラマはいつも引き込まれます(「白い巨塔」、「緊急取調室」シリーズなどのほか、朝ドラ・大河ドラマ多数)。木村拓哉さん主演ドラマということで世間から関心が集まっていることと思いますが、私にとってこのドラマ最大のポイントは「橋梁の建設現場が舞台」ということにほかなりません!

警察や医療、教育関係などに比べると主役を張る機会が全然ない建設業界。そんな中、ゼネコンを舞台にしたドラマが「キムタク」主演でこの世に産み落とされるなんて! 普段から建設産業の方々をお仕事のパートナーにさせていただいている私にとって、こんなに喜ばしいことはありません。


前置きが長くなりました。

そんな「Believe」で物語の鍵を握っているのは「龍神大橋」の建設現場。ストーリー上は東京都のプロジェクトですが、三重県志摩市に実在する「志摩大橋」(橋長234メートル、2004年完成)がロケ地になっています。

養殖真珠の産地である英虞あご湾に架かっていることから、「志摩パールブリッジ」という愛称で地域のランドマークを果たしているとのこと。透き通った青い海に白いアーチが映えますね。日本橋梁建設協会の「橋梁年鑑」によると、実際の施工は鋼構造物メーカーの宇野重工(三重県松阪市)などが手がけたとのこと。

アーチ橋にもいろいろな種類があり、この橋は「ニールセンローゼ桁橋」という形式に分類されます。

「ニールセンローゼ橋」と呼ばれることもあり、桁とアーチリブの間をトラスのように交差させたロープやケーブルで結んでいるのが特徴。たわみに強く、部材が視界を邪魔しないため走行性が良いと言われています。美観にも優れるため、都市景観の観点を含めて採用されることもあります。桁とアーチリブの間を鉛直方向の部材で支えるローゼ桁橋の一種に当たります。

ニールセンローゼ橋は,1922年スウェーデンのO.F.Nielsenにより提案された橋梁形式で,アーチ橋の腹材にロッドあるいはケーブルによる斜材を用いている点に特徴がある.(中略)腹材に鉛直材を用いた形式に比べ,力学的特性,特にたわみ特性に優れている

土木学会第57回年次学術講演会(平成14年9月)
「30 年を経過したニールセンローゼ橋の調査」

ニールセンローゼ橋は,構造的に優れているだけでなく,斜材にケーブルを用いていることから軽快なイメージを与え,景観上優位

大阪市立大学大学院都市系専攻修士論文梗概集2004年3月
「新しい構造形式を有するニールセンローゼ橋の耐荷力特性に関する研究」

そんなニールセンローゼ桁橋は当地でも各所で目にすることができ、ドラマの話題と絡めてこんな記事を…。

2024年5月17日付「北海道建設新聞」3面

十勝管内の豊頃町にある「豊頃大橋」、札幌市の豊平川に架かる「水穂大橋」という道路橋のほか、石狩湾新港へ工業用水を供給している「伏籠川ふしこがわ水管橋」について取材しました。

この投稿のトップ画像にあるのが伏籠川水管橋です。高知県高知市で1979年に「鏡川水道橋」が完成してから、ニールセン形式は水管橋としても採用されているとのこと。

ただ、水管橋にニールセン形式を使う利点を突き止めることができず、このあたりお詳しい方がいらっしゃいましたらご教示いただけると幸いです。


ところで「Believe」以前も、建設関係が舞台のドラマはありました。

例えば、高畑充希さん主演の「同期のサクラ」。私が知る限り、建設会社に勤めている方々も結構見ていたようです。故郷の島に本土とを結ぶ橋を架けたい思いでゼネコンに就職した純真な主人公が同期入社メンバーと共に成長していく姿を描いた作品。主人公の奮闘に心奪われながら興味深く視聴していましたが、もうちょっと建設のテクニカルな部分をストーリーに組み込んでほしかったな…と欲深かった私です。

波瑠さん主演「魔法のリノベ」も、依頼者の考えの先を行った、工務店が成せる空間設計の技がすごく面白かったです。ただ、どうしても土木技術にフォーカスした物語がなかなか出てこなかった…。

そんな中、颯爽と姿を現した「Believe」。要所要所に土木工学的なシーンが差し込まれている上、キムタク演じる建設技術者の狩山がクサいほど「橋屋」なのもある種すがすがしく、「これだよ、期待していたのは」と茶の間でほくそ笑んでいます。都市計画のエッセンスが垣間見えたのも好印象です。

サスペンス的な要素が強いので、現場の事故が発端となるストーリーなのは割り切っています。あくまでフィクションであり、現実なら粛々と安全第一で工事を進めているのというのは紛れもない事実ですから…。

医療ドラマだっていつも患者が亡くなるし、刑事ドラマも殺人事件がベースですし。それでも医療従事者や警察官を目指す人たちが大勢いますから、こうしてテレビドラマで特定の職業が取り上げられるという影響力は計り知れないと思います。これを追い風に建設業界を盛り上げていかなければ。

細かいところを突けばストーリーに対する指摘はいろいろあるかもしれませんが(橋の設計はゼネコンではなく建設コンサルだ、鋼橋なら鋼構造物メーカーの施工だetc…)、さまざまな事情や可能性を踏まえて考えた緻密な計画の下で大きな橋が出来上がるんだなーという面白みが伝わってほしいと願うところです。


テレ朝の回し者ではありませんが、「Believe」は第3話まで「TVer」で無料配信中。5月18日現在で最新の第4話は、第5話が放送される直前の5月23日午後9時まで配信しています。まだ見たことない人は急いで!!

この記事が参加している募集

#ドラマ感想文

1,454件

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?