女カイリキー日記「ポケモン自己診断」
「ポケモン自己診断」をした。結果はカイリキーだった。
???
頭の中がクエスチョンマークでいっぱいになった。
私が期待し求めていた結果はメタモンでありニャースでありコダックだった。かわいいポケモンを見て癒やされたかった。
なんでカイリキー?
全然かわいくない……
一番かわいくない……
あのワクワクを返してくれ。屈辱を胸に診断結果を読むと、すべてが当たっていた。そうだった。私はカイリキーだった。すっかり忘れていたけど、私はカイリキーだったのだ。
重さ130.0kg。
「パワフルな行動力で結果を出すキミ!ただ他人のペースも気にしてみよう!」とある。ヘタなりに他人に気を遣いまくって気疲れだけを生業にしてきた人生なのにこんなのってないわ。
しかしまあ、カイリキーが好きな人なんている?という話だ。そりゃあ強いし(重さ130.0kgだし)使い勝手はいいかもしれないけど、カイリキーが大好きでたまらない人なんている?しかも女カイリキーを?
女カイリキー。
女カイリキーは一人で泣く。
私だって好きでカイリキーなわけじゃない。カイリキーにならなきゃいけない人生があったからカイリキーになってしまっただけだ。カイリキーでいいわけない。
本当はイーブイになりたかった。
本当はラッキーになりたかった。
本当はカビゴンになりたかった。
カイリキーってこんな気持ちだったんだ。
カイリキーにはカイリキーにしかわからない苦しみがあった。
カイリキーは孤独な戦士。誰にも愛されることのない、屈強なだけの孤独な戦士。
私は誰にでも心を開く性格ではないし、パッと見では静かだしボケもしないので大人しく見られやすい。だから舐められやすい。なんでだよ。カイリキーなのに。なんで?
女が舐められやすいと人生に不具合が生じやすい。変な人も寄ってくるし、赤の他人に舐めた態度を取られると非常に不愉快である。私がもっとマイルドなポケモンなら気にならないのかもしれないが、中身はカイリキーなので普通に怒りが込み上げる。でも他人に気を遣いまくるので何も言えない。これではエラーが多すぎる。
かつてかわいい系の服が好きだった私は、防犯のために外見を強そうにした。舐められにくくはなったものの、代わりに誰も寄り付かなくなった。見た目も中身もカイリキーだから。シンプルにカイリキーだから。ただのカイリキーだから。私は見た目通りの女カイリキーとして生きていくしかなくなった。
女がカイリキーでいると生意気だと思われやすいのは言うまでもないが、仕事の場においては女がカイリキーでも許されることに気が付いた。強いしちゃんとしてるから。女カイリキーが輝ける場所ここにありという感じだった。
しかし女カイリキーが謎の奇病になると厄介だった。生来の性分によりひんしの割には理路整然としてしまうので、ポケモンセンターの人たちには本当にひんしだと信じてもらえなかった。こんな不利益はない。カイリキーは合理的思考に基づき一時的にひんしのキャタピーを装うことにした。ポケモンセンターの人たちには優しくしてもらえた。フワッとして、従順な、ひんしのキャタピーを見捨てる人はいなかった。カイリキーだって死にかけたら同じなのにね。
やがて私は自分がカイリキーだったことも忘れ、ひんしのキャタピーのまま生きるようになった。時が経ち、少しだけ元気を取り戻し、やがてトランセルに進化した。すべての感受性を捨て、悲しまないように、苦しまないように、サナギとしてただ日々を静かに耐えることにした。
だけど見抜かれてしまったのだ。サナギの硬い殻の中身がカイリキーであることを。
オーキド博士へ
私、本当はカイリキーでした。
今まで黙っててごめんなさい。
これからはカイリキーとしての人生を取り戻します。
カイリキーより
おわり
HAPPY LUCKY LOVE SMILE PEACE DREAM !! (アンミカさんが寝る前に唱えている言葉)💞