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音楽と暮らし日記/チキンライス(浜田雅功と槙原紀之)

スーパーマーケットのオムライスをスプーンで割ると、中に見えたのはチキンライスだった。

たとえ世の中から切り離されたような生活を送っていても、外の世界の空気感はなんとなく流れ込んでくる。商品のパッケージには赤と緑が増えて、世界中に星屑が落ちてきたみたいに輝いて見える。

私たちは窓際に小さな木彫りのクリスマスツリーを飾った。隣にはしろくまのサンタクロースがちんまりと姿勢正しく佇んでいる。

世界で初めてクリスマスの物語を考えた人は天才だ。一年で一日だけ、見知らぬ太っちょのおじいさんがそりに乗り空を飛んで自分のためにプレゼントを届けてくれるなんて。サンタさんの袋には夢がいっぱい詰まっている。

「恋人」とか「カップル」とかいう視点をなくして見ると、クリスマスの前ほどワクワクする季節はない。日常に童話が入り込んでくるような、人生が物語化する不思議な一ヶ月。

『探偵ナイトスクープ』の局長が西田局長から松本局長に変わるというニュースは我が家を小さく震撼させた。

毎週欠かさず放送を観ているほどのファンではなくとも、関西に生まれし者としてナイトスクープには相応の想い入れがあり、期待するものがある。

ナイトスクープとはVTRの後に西田局長の涙を見て初めて成立する番組だ。私たちは局長の涙が見たいのだ。少しひねたジョークやツッコミを聞いてほくそ笑みたいわけではない。あえてまっちゃんと呼ぶけど、まっちゃんに局長の役割が務まるのか?大衆の側に、人情の側に降りてこれるのか?

『探偵ナイトスクープ』のCMに登場するまっちゃんは、口角が下がりすぎて「への字」を通り越し、かまぼこみたいな半円になっていた。またそんな顔して。カッコつけて。

今日はクリスマス
街はにぎやか お祭り騒ぎ
七面鳥はやっぱり照れる
俺はまだまだチキンライスでいいや

スーパーのオムライスを食べていると、頭の中に『チキンライス』の歌が流れ始めた。浜ちゃんが歌って、まっちゃんが歌詞を書いて、槇原さんがメロディをつけた曲だ。

今の時代は「聴きたい」と思った曲が本当にすぐさま聴けてしまう。それがいいのか悪いのか、憂いながらも、食後の音楽をAlexaにリクエストした。

「Amazon Musicで、浜田雅功、槇原敬之の、チキンライスを再生します」

この曲を聴いているとまあ面白いくらいに涙がだらだら出てきて、パジャマの袖で何度も何度も目頭を拭いながら、何度も何度も再生を繰り返した。

『チキンライス』にはクリスマスの魔法がかかっている。松本さんが真摯に自分の人生と向き合って書き起こした、物語のような素朴な歌詞と、マッキーが考えた美しいメロディとアレンジ。そして、一音一音、一文字一文字、間違わないように誠実に言葉を伝える浜ちゃんの歌。

浜ちゃんは歌が上手い。音程の正確な、芯の通った硬質な木のような歌声をしている。だけど歌唱技術がどうとかの話よりも大切なのは、表現に長けているということだ。浜ちゃんの歌い方はまるで語り手みたいで、歌を通して、一人の少年の昔ばなしを伝えられているような感覚になる。

そこに槇原さんのコーラスだ。柔らかくて透き通った歌声を作る喉はまるで新しい種類の楽器のよう。その美しい声で、浜ちゃんの真っ直ぐな声を、寄り添いながら包み込む。「最後は笑いに変えるから(変えるから)」の部分なんて、涙なしには聞けない純粋さだ。



親に気を使っていたあんな気持ち
今の子供に理解できるかな?

まっちゃんが思うところの「今の子供」に属する私には理解できないことがたくさんある。

『チキンライス』は時代の哀愁を切り取った、一つのエッセイのような素晴らしい作品だ。この曲が生まれたのは2004年、今から15年前のこと。その時私は16歳だった。

私みたいなペーペーが心配しなくても、まっちゃんは最初から大丈夫な人だった。かまぼこみたいなヘの字口も、変なおばちゃんの格好も、恥ずかしがりなだけなんだよね。って、そんなことを言ったら格好がつかなくなってしまうけど。

次世代のナイトスクープを、よろしくお願いします。


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HAPPY LUCKY LOVE SMILE PEACE DREAM !! (アンミカさんが寝る前に唱えている言葉)💞