見出し画像

告白。母子相姦が他人に知られる時。

部屋に入ってきた母は寛子さんを見て、えっという顔をして驚き、
そして軽く会釈をしました。

寛子さんも不審な顔をしながら会釈を返す。

私は胃が痛くなりながらもこの場を乗り切る方法を模索し、
必死に頭を回していましたが正解と呼べる答えは浮かびません。

沈黙の時間を作る訳にもいかず私は仕方なく話を切り出しました。


「母です。」


寛子さんに向けて母を紹介する。
相手が誰なのか分からない母は戸惑いながらも、


「渉の母です。息子がお世話になっています。」


と続けた。

寛子さんがギョッとした顔で私を見るのが分かりました。
母のことを私が関係を持つ女性とでも疑っていたのかも知れません。
(それは正しいのですが)
それが母親と分かり、疑いや怒りから戸惑いに表情が変化していきました。

母は母で私に、それでこの人は?と促す視線を送ってきます。


「寛子さん、バイト先の社員さん。」


母の表情に更なる疑問が拡がっていくのが分かります。
同年代の同僚ならまだしも母と同年代の同僚が息子の家に居る、というのは不自然です。
世代を超えた友人というのもありえるでしょうが、
母親の立場から見れば一般的には非常識な取り合わせに見えることは私にも分かります。

寛子さんもそれがゆえにどう説明して良いのか戸惑っているのでしょう。


「どうもお世話になってます。」


それだけ言うのが精一杯のようでした。

少しの沈黙が流れます。
喋らなければならないのは私でしょう。
ただ、私自身も何をどうしてこの場を取り繕うべきか直ぐに次の言葉が出て来ません。


「申し訳ないので、そろそろ失礼しますね。」


寛子さんが席を立って帰ろうとしました。
母親が遠くから尋ねてきたので気を遣って帰る。
私達の関係の不透明さを置いておいてこの場を離れる理由としては自然です。

後は私が母にどう説明するのか、それ次第。
私は救われた思いで寛子さんを見送ろうと立ち上がろうとした時、


「ちょっと待ってください。」


母が寛子さんを呼び止めました。
その顔に少し怒りの色が見えました。


「初めてお会いして・・普段息子がお世話になっていながらですけど・・・」
「ちょっと非常識じゃないですか?」


「ああ、ええ、そうですね、」


困惑、というより本当のことを説明できずに生返事をする寛子さん。
母は更に言葉を続けます。


「いくら仲が良くても・・・不健全じゃありませんか?一人暮らしの大学生の家に・・」


「はい、そう思います。」


「失礼ですけど、ご家族はいらっしゃるんですか?ご結婚は?」


「旦那と、娘がおります。」


「でしたら!尚更ですよね、もし誰かに見られたら誤解されることだってありますよ!」


母は段々ヒートアップして寛子さんを責め立てます。
何も言い返せない寛子さん。

もう限界でした。
寛子さんには愛情はなくなっていたけれど、こうして責められるのは見ていられません。
それに母にも嘘をつき続けるのはすごく心苦しいことです。


「お母さん、ちょっと待って。」


腹を決めて切り出しました。


「渉、あなたもこの方の立場をちゃんと考えなさい。迷惑かけることになるんだよ!」


「違う、お母さん誤解してる。あのさ、」
「俺、この人と付き合ってるんだ」


興奮しているに私は真実を話しました。
その言葉を聞いてハッとなり母に動揺が走るのが分かりました。


「渉くん、やめて!言わないで!」


止める寛子さんを無視してそのまま私は話を続けました。

バイト先で寛子さんと仲良くなり、いつの間にか好意を抱いていたこと。
一緒にご飯や飲みに行くようになったこと。
私から家に誘ってこういう関係になったこと。

全て話し終える頃、寛子さんは泣いていました。
泣きながら母の方を見ずに「ごめんなさい」「申し訳ありません」を繰り返していました。


「俺から誘ったんだ。だからそういう風に言わないで。」


母は動揺した表情のまま何も言わず全てを聞いていました。
そしてポツリと、


「なんで・・・」


とだけ言い母もまた泣き出しました。。


息子の私が家庭ある年上の女性と関係を持っていたことが悲しかったのか。
それとも・・・そういう女性がいながら母とも関係を持ったことを悲しんでいるのか。

母親として女としてその両方にショックな告白だったのかも知れません。


結局2人を悲しませてしまった。
私がハッキリしないせいで。

今日までに何としても別れておくべきだった。
いや、そもそも母への想いや欲望を寛子さんに転化して関係を持ってしまった。
私の弱さが引き起こしてしまったんだ。

岩手を離れるあの日。
勇気を出して母と向き合い、母への気持ちをちゃんと伝えられていたなら。


いくら後悔を重ねても時間は戻りません。
泣いている2人の姿を見て、
もう嘘や取り繕うようなことをするのは止めようと思いました。


「お母さんが居るところで話したいんだけど・・」
「今、俺と寛子さんは別れようって話をしてたんだ。」


寛子さんが被せるように続けた。


「渉くん、分かったから。もう別れよう。私、本当に駄目なことしてたって・・こうなって分かったから」


母に言われたことが響いているようで別れを渋っていたはず寛子さんは別離の言葉を口にした。
このまま話を終えてしまえば一旦丸く収まるかも知れない。
でも、それでは私一人がズルい気がして。
本当のことを言いたかった。


「一番悪いことをしたのは俺だから。誘ったのは俺。」


「ううん、私が大人としてきっぱり断らないといけなかった。家庭もあって・・」


再び涙ぐむ寛子さん。
母はずっと俯いて黙ったままだった。


「俺、今好きな人が居るって言ったよね?」


「ええ・・うん・・」


「好きなだけじゃなくて・・、もう・・・その人に告白して・・セックスもしてる。」


「・・・・・そう・・、そっか・・・」


「ごめん。本当にごめん。」


寛子さんが諦めたような、遠くを見るような目で頷く。
私は大きく息を吐いて言葉を続けた。


「その人っていうのは、」

「渉っ!」


伏していた母が急に顔を上げ抱き着くように私を制止しようとした。
私はそのまま母を抱きしめて最後の一言を言い切った。


「この人なんだ。」

#エッセイ
#恋愛
#体験談
#不倫
#近親相姦
#浮気

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?