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多様性を活かす組織作り:効果的なダイバーシティ研修の3つのポイント


はじめに

私は米国公認会計士であり、監査・財務報告アドバイザリーを担当しながら、Big4のDE&I(ダイバーシティ、エクイティ、インクルージョン)の戦略人事を担当していました。企業内での研修開発やカルチャー浸透のための戦略・実行を担ってきた経験から、今回はダイバーシティ研修の重要性と選び方についてお話しします。

ダイバーシティ研修とは?

これを読まれている方の中には、アンコンシャスバイアス研修などのダイバーシティ研修を受けたことがある方もいらっしゃるかもしれません。

今でさえダイバーシティ&インクルージョン(D&I)、I&D、DE&Iなど様々な呼ばれ方をしますが、もともとは女性活躍推進から始まりました。
そして、ダイバーシティ研修を提供する組織開発系企業も増える中、実際に受けてみると「なるほど!」と納得する半面、「モヤっと」するのがダイバーシティ研修です。研修って受講したらプラスに働くものですが、マイナスにも働くリスクがある、というのが特徴です。

ダイバーシティ研修は、参加者に多様性の重要性を理解させ、職場の文化を改善するためのものですが、研修が適切に行われないと、逆効果になるリスクもあります。そこで、効果的なダイバーシティ研修を選ぶためのポイントをご紹介します。

よくあるダイバーシティ研修のパターン

よくあるのが、女性の働きにくい環境を改善しましょう!障害者の立場になって障壁となるものを考えましょう、といったいわゆるビジネスにおけるマイノリティの苦悩を研修で長時間に渡りインプットし、最後にはディスカッションで「辛い思いをしている人がいるから、変わりましょう」と締め括られます。

いざアンケートの結果を見ると。。。

研修の流れ自体は鉄板の流れがあるので問題ないのですが、いざ終わってみると、

◆マイノリティ側(少数派):
「自分の声を代弁してくれた!」といってアンケート結果は良好
◆マジョリティ側(多数派)(ここでは主に健常者の男性):
「自分(たち)は意図して差別をしているわけではないのに、なぜ責められなければいけないのだ。」「なぜ俺たちだけが変わらないといけないのだ」

と拒否感を示します。挙句の果てには「逆差別だ!」という強烈な一言を残す参加者もいます。

そうなると、組織のDE&Iを推進するために研修を実施したのに、参加に積極的でなかったり、DE&I推進に否定的なスタンスを取る方が出てきます。研修自体がビジネスを阻害するリスクとなる、という難しいテーマを扱っているのがDE&Iです。おそろしい。。。

ダイバーシティ研修にはこの3点をいれるべし。

人事担当者、経営企画室などの方でダイバーシティ研修を開発したり、外部委託する際は、以下の3点が出来ているか、もし出来ていなければ研修に入れてもらえないか打診をお勧めします。

DE&I研修企業を選ぶ際に注意すべき3点

①事前・事後アンケートを実施し、詳細に分析すること。

起案者は主に企画職やマネジメント層となりますが、マネジメント層から見ているDE&Iの課題感と現場の課題感には乖離があります。
そのため、事前アンケートでは組織のカルチャー変革に対する質問項目等を追加し、現場の声を拾っておきます。
また、その結果は研修の冒頭に共有し、組織の課題を共通認識として参加者に認識させます。

②ダイバーシティ研修を受ける際の「心構え」を伝えること。

前述のとおり、ダイバーシティ研修はプラスにもマイナスにも働く難しい研修です。

多様性を扱うものの、マイノリティの障壁を参加者に問いかける過程で、「これは男性が変わらなければならないです」「女性が活躍できるように子育て世代には柔軟に対応しましょう」「みんなでケアしましょう」というメッセージが必ず入ってきます。
でも、ここで問題なのは、誰もがそのメッセージに共感できないということです。
だって、変わる必要がないと思っているのに変われと言われたり、ケアしてほしくないのにケアしてと言われ、子どもがいない人にとっては業務負荷が高まることがわかっているわけですよね。
そんなことはわかっている」というのが正直な気持ちだと思います。

ですので、ネガティブな印象を持たないように、目的を明確にし、ダイバーシティ研修で不快感を感じたり拒否感を感じたら、その感情に気づくこと(Awareness)が重要、ということを伝えてください。その一言を添えるだけで、「気づくこと」が目的となり、研修の趣旨にそう結果が得られます。

③DE&Iのメリットをマジョリティに伝えること。

DE&Iのメリットって何でしょう?
よくWell-beingの文脈でメリットがあるといわれ、働き方の柔軟性向上やモチベーションアップ、なんて言われますが、正直マジョリティとしては現状働き方もモチベーションも上がっている状態なので、興味を持つことがありません。

DE&Iを学ぶことでのビジネス上のメリット=新たなソリューションを生み出し競争力を高める事(★)をインプットすることが重要です。
そうすることで、マジョリティも参加する意義がわかり、前向きに取り組むきっかけになります。
★今後記事を書いていこうと思います。

まとめ

いかがでしたでしょうか?

DE&Iの推進には必ず研修がつきものです。しかし、その研修の場づくりは非常に難しいものです。ダイバーシティ研修を企画される人事の方や、研修開発者、講師の方々には、今回のポイントを参考にしていただけると嬉しいです。

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