海外に住むと決めた日の話。
2019年10月20日。
僕は、期待と緊張が入り混じった気持ちでカナダ・モントリオールに降りたった。
僕の海外生活が始まった日だ。
知らない土地、知らない人、知らない文化。
全てがわからなかった。
誰も知り合いはいなかった。
ひどく緊張していたが、それ以上に期待で胸が躍っていたのを今でも鮮明に覚えている。
家族の一声
2019年9月。
学生時代からお世話になっていた方々からシルクドソレイユのオーディションの話を持ちかけられた僕は、非常に悩んでいた。
詳しくは以下の記事を読んでいただくとわかるのだが、当時の僕は新体操競技の現役を引退したばかりで社会人としてうまくやっていけず路頭に迷いかけていた。
なんだかしっくりこない仕事。
支払いに追われる毎日。
傷ついていくばかりのプライド。
それまでの人生で味わったことのないどん底を歩いていた。
そんな中でのオーディションの話。
受けるかどうかを悩んだ僕は、まず妻(当時は彼女)に相談した。
妻は2つ返事で「受けてみなよ」と言ってくれた。
しかし、どうもそれだけでは決心がつかなかった僕は実家に行って母と兄に相談した。
進路について家族に相談したのは高校を決めた時以来のことだった。
自分の進路についてあまり他人に相談してこなかった僕が家族を頼ったのだから、相当悩んでいたのだと思う。
母と兄の意見は「GO」だった。
当たり前だ。
同じ立場だったら僕もそう言う。
だって、生きているうちに2度とこない機会なんだから。
客観的に見ると天秤にかける必要もないくらい簡単な「受ける/受けない」という2つの選択肢なのだが、自分の話となるとなぜだか判断ができなかった。
そんな中ではっきりと「行け」と言ってもらえたことで僕は気持ちを固めることができた。
あの日のことはよく覚えているが、それまでモヤモヤと霧がかかっていた自分の心がスッキリと晴れたような気がした。
言い訳を探す癖
当時の僕は、海外に行くかどうかではなく、オーディションを受けるかどうかを悩んでいた。
受かる確約なんてないのに。
"受かったら" 始めたばかりのバイトを全て辞めないといけない。
"受かったら" 借りたばかりの賃貸契約を切らないといけない。
"受かったら" 買ったばかりで支払いが残っている車を手放さないといけない。
"受かったら" せっかく自分の地元についてきてくれた彼女をひとりぼっちにしてしまう。
"受かったら"
"受かったら"
"受かったら"
やかましい。
受かってから考えろアホ。
当時の自分にそう言ってやりたい。
どうやら人間には、挑戦することから逃げる癖があるみたいだ。
勝手に2つ3つ先の世界を想像して、「こうなったらダメだから」「ああなったら大変だから」と言い訳を探して生きている。
その言い訳は誰のためだろうか?
その言い訳は何のためだろうか?
大半の場合、それは自分を守るためだ。
自分が慣れた環境に居続けるためだ。
このことから僕は思った。
本当に大事なのは「判断力」ではなく「対応力」だと。
どんな優れた判断力を持った人でも、その場の状況によって多少のブレが出る。
いい判断を下す時もあれば、悪い判断を下してしまう時もある。
しかし、対応力に優れた人は悪い判断を悪い判断としない力を持っている。
つまり、どんな判断であれ最終的にはいい判断に変える力を持っているということだ。
動き出す前に考えるのではなく、
動き出してから考える。
これはそう簡単にできることではない。
ただ、一度でもいいからやってみるとわかる。
判断をしてから本当に事が起こるまでには多少のタイムラグがあり、考える時間は十分に取れる。
今回の僕であれば、オーディションを受けると決めてからでも受かった後のことを考える時間はあるし、オーディションに受かってからでも海外に飛び立つまでにしなければいけないことを考え、実行する時間はある。
考えてみてほしい。
旅行に誘われたとして、その誘いに乗るかどうかを決める前に旅行の支度をする人がいるだろうか。
そんな人はいない。
みんな、旅行に行くと決めてから支度をする。
何なら前日の夜に荷物を詰める人だっているだろう。
それは、旅行に行くと決めてから実際に行くまでに時間があるからだ。
話の大小はあれど、どんな場面でもこれと一緒のことが言えると思う。
決めてから考えても遅くない。
決めてから準備しても遅くない。
であれば、前に進む判断をし続けた方がいいよね、という話なのだ。
井藤 亘(いとう わたる)
名古屋アクロバットスクール
20年以上続けてきた「男子新体操」というスポーツをより多くの人に知ってもらうため、日々活動をしています!! 頂いたサポートは、今後の活動費、またはその勉強のために使わせていただきます!🙇♂️✨ また、サポートとともに記事のリクエストも募集しております。