見出し画像

捨てるものの中から拾い上げたラブレター

最近やっていることに1つに「一日一断捨離」があります。
一日に最低でも1つ、何かを捨てるというもの。
これがやりはじめると実に良い。良いんです。
全然履いてない靴下や、Tシャツ。
「いつか売る日のために」ととってある商品の箱など。
ポイポイ捨てていきます。

やりはじめて約1ヶ月経っております。
少しずつモノがなくなってます。

で、だんだんと適当なものがなくなってきたので、何を捨てるのか悩む状況になってるんですね。

いや、小さいやつでも良いんです。キーホルダーとかね。
さらに言えば「データ」でも良いんじゃないか?って思ってます。
とにかく捨てること。1つでいいから。

そんな中、本日捨てるものをガサガサ探していたら出てきた古いUSBメモリー。

なんだっけ~?と思って確認すると、むかしロクディムのメルマガでワタリが連載していた小説「ロクディム島日記」が出てきました。

ロクディム島に住んでいるちびっ子ロクディムメンバーたちのお話。
これなんとかアニメ化したいんだよなぁって思っていたやつ。
改めて読んでみると面白い!(自画自賛)

少なくともワタリはこの小説のファンです。

一生懸命書いていたけど「ロクディムのメルマガ」限定コンテンツだから、他のメディアにいっさいでていない。かなり日の目を見てない感があるから、今日はその1つのお話を紹介します。お暇な時に読んでね。

───────

ロクディム島日記#006「小田篤史聖誕祭の最後」

誕生日パーティという文化が日本に浸透したのはいつからなのだろうか?

子供が望んでできたというより、「自分の子供はこんなに愛されているし、ワタクシの家はこんなにお金持ちざますのよ」というなんだか良く分からない見栄を満足させるために大人が開発したんだろう。と、タケシは思った。

だって、パーティに呼ばれるたびに何かおもちゃを買わなきゃいけない。
自分が貰うわけじゃないのに。親にお願いしなきゃいけない。自分が貰うわけじゃないのに。

今日はアツシの誕生日パーティ。

一ヶ月前にポストにハガキが届いた。

「小田篤史聖誕祭」と虹色で書かれたその字はタケシには読めなかった。
読めないけど、きっとあまり良くない意味なんだと思った。肌で感じた。

ハガキの最後には「気楽な格好で、何も持たずに参加ください。参加費無料」と書かれていた。


「こんなん書かれたら何か持たさないとアカンやないか」

と母がつぶやいていた。渡はその意味もよく分からなかった。「何も持たずに」って書いてあるのに何で?


父と母で話し込んでいる。
「お菓子でええんやろ?」
「あかんよ。皆おもちゃとかよ」
「いまどきに子らは皆そんなんか?」
「そうよ。あと、ほらファミコンのカセットとか」
「小田のぼんぼんやろ?いらんいらん」
「あんた。どこで誰に聞かれてるか分からんのに!」
「アイツにファミコンやるくらいやったら俺は犬に食わす!」
「あんた!」

どうしてアツシの誕生日のことで親が喧嘩をするのか?アツシめ!

いつからか、アツシの誕生日会は大きな規模のパーティになっていて、クラスの皆が参加していた。大半は「参加しないと何か次の日変な感じになる」といった理由であった。

参加だけでなく、チープなプレゼント、ましてや本当に何も持ってきてない人は軽い村八分状態になるのである。

去年の誕生日会で、バームクーヘンを持ってきた友人に小田アツシは

「なにこれ?ママー!佐々木くん犬の餌持ってきたー!」

と言い放ち、それ以降佐々木くんは「犬まんま」としか呼ばれていない。

年貢を納められない百姓一家の末は引っ越しである。佐々木くんは元気だろうか?

だから多少の無理をしてでもそれなりに見栄えのいいものをもっていく必要はあるのだ。

ピンポンを鳴らした渡の左手にはファミコンカセット「イーアルカンフー」が握られていた。渡だって持っていないのに!

「ははは。じゃちげーじゃん!あ、開いてるよー。ははは」

インターフォン越しにアツシの声が聞こえる。

すでに宵が始まっているようだ。うしろで女子の声が聞こえた。

クラスの大半の女子は「アツシの顎が急に開いてそこから機関銃が出てきて気に入らない人間は殺されてしまう」という都市伝説を信じている。

ドアをあけて中に入る。いつも顔を合わせる皆がいた。クラスの全員がいた。真ん中に小田あつし。テーブルの中央には大きなケーキ。小田の後ろにはたくさんのきれいに包装された箱が置いてある。

アツシ「いらっしゃーい♪」

完全に上機嫌なアツシ。立ち上がって渡のもとに近寄ってくる。

そしてハグ。

アツシ「はーい♪ハグだよーこれがアメリカのハグだよー♪」

皆「はははははは」

乾いた笑いが部屋を包む。

渡「あ、あっちゃんおめでとう。これ」

渡は左手にもってたイーアルカンフーを渡した。

アツシ「あーりがとー、なにこれ?」
渡「イーアルカンフー」
アツシ「あーカンフーね。アチョー!(いきなりチョップ)」
渡「いたたた」
皆「はははははははははは」
アツシ「ありがとありがと」

といいながら、イーアルカンフーをプレゼントが密集したところにポイッと投げた。

アツシ「皆―飲んでー食べてーららららら♪はい」

皆「らららららら」

例えば誰か一人の命と引き換えに世界を救えるとして、僕は誰かが名乗り出るのを持っているだけの男だ。

どこかのミュージシャンの歌詞みたいな文章が出てきた。

ヒーローなんていないんだ。。。誰もこの独裁政権を止める人間はいないんだ。。。

その時だった。

ピンポーン

インターホンがなった。

誰だろう?クラスの全員がいるのに。皆も静まり返った。

アツシ「んー?誰かなー?はーい」

と、アツシがインターホンの受話器を上げた。

ディスプレイ越しに映ったのは

LEEだ。

誰もが忘れていた。忘れるというより絶対この会にはこないだろうと皆が思っていた。

冬でもランニング。短パン。

「このスタイルの方が風邪ひかないんだって」

とLEEは言う。

いつも丸坊主。

「この髪型が一番自分にあってるから」

とLEEは言う。

給食は食べない。

「昼抜いた方が体にいいんだって」

とLEEは言う。

でも本当の理由を皆知っていた。

LEEは小学生の想像力では到底たどり着くことのできないほどに貧乏だった。

学校が終わったら即親の畑仕事の手伝い。朝は新聞配達。昼休みは7人の弟たちのご飯づくり。

睡眠は授業中する。

そんなLEEがこの会にくるなんて誰も想像してなかったのである。

アツシ「あ、、LEE」

LEE「。。。。。」

アツシ「開いてるよ。。」

LEE「。。。。。。」

無言でディスプレイからフェードアウトするLEE。

数秒後、ドアが開いた。

ランニングで短パンのLEE。

いつもより服が汚れていた。土がついていた。

皆がその勇ましい出で立ちを見る。

いつもより眼光鋭いLEE。

アツシ「あ、LEE今日はどうも~」

LEE「おめでとう」

その声には気迫しか感じられなかった。お祝いをするという気持ちは全く感じられなかった。

そしてずいっと前に出た。

これが決闘ならばアツシはいま斬られていただろう。

それほどにLEEには全身からみなぎる殺気のようなものが出ていた。

ズイッと出たLEEはアツシの両手を掴んだ。そして自分の右手をアツシの手の中に入れた。

そしてそっと手を離した。

その動作には一切の無駄がなかった。

皆息を飲んだ。それほどに美しかった。

アツシも動けなかった。

そして動けないアツシの手の中にあるものは

消しゴムだった。

アツシ「あ。。。えと、、、、これは?」

LEE「消しゴムだ」

その潔さ。消しゴム以上でも以下でもない。後ろめたさも卑屈な精神もない。真実を彼はただ言っている。

アツシ「消しゴム。。はい」

LEE「きゅうりが売れた」

アツシ「え?」

LEE「そして消しゴムになった」

アツシ「は、はぃ」

LEEはまたズイッとアツシの眼の前に近づいた。すでにアツシは二度斬られている。

そして両手の手でアツシの肩をつかんだ。

LEE「世の中には考え付かないほどの苦しい出来事や悲しい出来事がある」

アツシ「は、はい」

LEE「身を引き裂かれそうなほどの後悔もきっと経験するだろう」

アツシ「。。。。」

LEE「誰かに騙されたり、また復讐のため相手を騙したり」

アツシ「。。。う」

LEE「でもそんな気持ちじゃ何やったってダメなんだ」

アツシ「。。。。うわーん」

LEE「泣くな」

アツシ「うぐっ。。。はい」

LEE「自分の中に消しゴムを持つんだ。何ものにも囚われてはいけない。すっと悪の感情を自分の消しゴムで消すんだ。いいな」

アツシ「はい!はい!うわーん!」

LEE「泣くのは死ぬ直前でいい」

アツシ「はーい!!!ごめんなさい!!」

LEE「じゃあまた明日。学校で」

そういうとLEEは華麗に踵を返し、ドアを開けて姿を消した。

アツシ「うわーん!!!うわーん!!!!!!うわーん!!!!!!!」

アツシにもLEEの眼に見えない刀が見えていたのだ。そして自分が二度切られたことを体で実感していたのだ。

アツシが泣きやまないため、パーティはその後すぐにお開きになった。

「この、、誕生日会もぉお、、ひぐ、、、消しゴムで消してー!!皆忘れてーうわーん!」

と泣きながらもうまいことを言おうとしたアツシ。

でも誰も空笑いをしなかった。無言で帰った。

LEEだ。

皆LEEに感化されたのだ。

ヒーローが現れたのだ。

誰もがすがすがしい気持ちでアツシの家を出た。

後日、学校でLEEがアツシに「こないだあげた消しゴム半分かして」と言っていたのを誰もが見たけれど、皆自分の中の消しゴムで消したのだった。

めでたしめでたし。

───────

これをどんな想いで書いたのか?なぜアツシがこんなに悪モノみたいに描かれているのか?10年以上前のワタリに聞く方法はもうないんだけどね。

これを容認しているロクディムたちに感謝(読んでいないという説が有力だけど)。

「こういうものを書いていったら良いんじゃないかい?」

過去の自分から今の自分へ届いたラブレターに近い感覚。

捨てるものの中に改めて拾うものがあるんだね。そういのも含めて一日一断捨離。おすすめです。

JAM TARI LABの活動を応援したい!という気持ちになったあなた! ぜひサポートをお願いします。こちらで集まった支援金も全額JAM TARI LABの活動費にまわします。