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「聖地巡礼」はファンにどう親しまれているか【連載5・オタク視点で見るアニメ】

私の趣味は、旅行がてらの「聖地巡礼」です。

聖地巡礼と言えば、『らき☆すた』の鷲宮神社に始まり、『ラブライブ!』シリーズの秋葉原や沼津、『ガールズ&パンツァー』の大洗町などが有名ですが、ファンにとっての聖地は、現実の場所を舞台にしている作品の数だけ存在します。

アニメ作品で現実を舞台にした作品が増えた理由は、大きく2つあると考えています。
ひとつは、技術・制作的な側面。
作り手側の技法として、デジタル化が進んだことにより、現実にある風景写真を取り込んで背景や線画として利用することが可能になりました。

そしてもうひとつが演出的側面。
現実にある風景を使うことで「キャラクターがいる世界にリアリティを持たせられる」という考え方です。
現実(に似た)場所を舞台にした作品からは、メッセージが感じ取れます。
ほっこりとした日常系アニメであれば、“このキャラクターはあなたの身近に居るよ”。
シリアスな物語ならば、“この現実はあなたの側にある”。

私のようなアニメファンにとっては、演出的な理由がとても大事です。架空の2次元のキャラクターを、「現実にはいない」と片付けるのではなく、「本当に居る」と描いてほしい!
聖地があれば、そこに行くことでキャラクターの存在を感じ取れるので、現実にある場所を入れてくれる作品は、とてもありがたいです。

聖地巡礼の仕方は人それぞれですが、旅は調べるところから始まっています。
「このキャラクターが△△をした場所はどこにあるのか?」。
これは公式が作品の舞台を明かしていればわかるのですが、ファンタジー感を優先するために、あるいは現地に迷惑がかからないようにとの配慮によって「あくまで架空の場所」としている場合もあります。それでも私たちファンは、美術設定などがリアルに作り込まれていると「モデルになった場所があるのではないか?」と想像したり独自に調査したり情報を交換したりするのです。

私が聖地巡礼した『血界戦線』の舞台も、「かつてニューヨークと言われた街が、突如、異界と人界が交差する〈ヘルサレムズ・ロット〉という街になった」という設定の架空の場所です。けれどもアニメでは「ここがモデルかも?」という描写が多かったことで、どうしても行きたくなってしまったのでした。

●NY「血界戦線」聖地?巡礼+旅行記とハウツー
https://togetter.com/li/895249

たとえば、主人公とヒロインが良く会話する病院の裏庭。そこには墓地がありました。ネットで探していくと、とあるNY旅行記のブログに「マンハッタンで墓地のある場所はここだけ」という言い方で教会が載っていました。確かに似てる! 似た場所がわかると嬉しいものです。

行ってみたい場所をピックアップしたら、映像をキャプチャーした画像のサムネイルをプリントアウトする。ここ大事! 
なぜ出力した紙を持参するかというと、現地ではスマホでも撮影してSNSに上げるため、スマホはカメラとして使用されている最中で、画像を入れていっても撮影時に構図を付き合わせることができないからです。やっぱり行ったからには「映像そっくり」にしたい!

「聖地巡礼者は、なぜ映像と同じ構図で撮影することが多いのか?」
私も質問されたことがあります。私にとって、そして一部ファンにとって「そっくり」は結構大事。自分に限って言うと、作り手ではない自分がカメラのフレームを通して作品世界を再現する手段……とも言えます。

作品世界トレース派は、たとえば「キャラクターが通学に使っている電車の車内」を撮るだけでなく、「駅から電車が発車するところ」を撮影するために、一日に数本しか無い電車を一本見送るなどします。半日待つことになるのに! そこまでやるのはコアなファンだと思いますが、同好の士として尊敬します。

聖地巡礼に関しては、近年、作品を提供する側、もしくは企業や自治体が、あらかじめ特定の街や企業とコラボをすることで、集客や地域活性化を目指すケースも増えてきました。

作品の数だけ聖地はありますが、巡るファンの数には違いが出たりします。
次回で「ファンが聖地巡礼に行きたくなる理由」について考察を上げてみようと思います。

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