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歌舞伎初心者アナウンサーのひとりごと。~人間国宝が作り出す至極の時間『義経千本桜・渡海屋大物浦@歌舞伎座』~

初めまして。こんにちは。こんばんは。
歌舞伎が大好きなアナウンサーの渡邉唯です(*^^*)

突然ですが、【一世一代】と聞くと何を連想しますか?
一世一代の大勝負、一世一代の晴れ姿、一世一代の恋。。。などなど、生涯で一度きりの特別なシーンで使われますよね。

歌舞伎で一世一代というと、
その役の演じ納め。つまり、この役を演じるのは最後ですよ。という意味があります。
その”一世一代”と銘打たれた一幕を、今月の歌舞伎座で見ることができるんです!
二月大歌舞伎第二部
「義経千本桜 渡海屋・大物浦
 ~片岡仁左衛門一世一代にて相勤め申し候~」。

人間国宝の片岡仁左衛門さんが、主役の平知盛を、一世一代にて勤める。
つまり、仁左衛門さんの平知盛を見られるのは今月で最後ということ。
チケットを取った時から、すっと、ずっと、楽しみだったこの一幕。
今回は二月大歌舞伎第二部をnoteしていきます(^^)

桜のように散りゆく、去り際の美。

そもそも「義経千本桜」とは、源平合戦を題材とした作品。
史実では、戦で命を絶ったとされる平家の勇将、平知盛(とももり)・維盛(これもり)・教経(のりつね)がもし生き延びていたとしたら・・・・?という、言わばパロディ作品です。
今回の「渡海屋・大物浦」は、そのうちの1人、平知盛が主役
平家再興を目指し、源義経への復讐に燃えるさまを描いた非常にドラマティックなお話です。
通称”碇知盛”(いかりとももり)のもととなるラストシーンは圧巻・・・。
再び義経との戦に敗れることになった知盛。全身血まみれで息も絶え絶えのなか、大きな碇を担ぎ上げながら入水し。自ら壮絶な最期をとげます。

この「義経千本桜」。
面白いのが、題名に”義経”とありながら、義経は全編をとおして脇役。
復讐できぬまま滅んでいく平家の武将の最期が、散りゆく桜のように、儚くも美しく描かれています。

自己流で。

仁左衛門さんが初めて知盛を演じられたのは、2004年4月の歌舞伎座。
今回で通算6度目にして、知盛を演じられるのはこれで最後となります。
来月ホワイトデーの3月14日で、78歳になる仁左衛門さん
知盛の衣装はおよそ20キロもあるそうで、年齢と体力を考慮して今回で演じ納めようと決断されたそうです。
歌舞伎は年齢も性別も凌駕する美しさがあるので、役者さんの年齢について話すのはナンセンスかもしれませんが、実際問題、重い衣装を着て3時間近く舞台で演じ続けるには体力が必要ですもんね・・・。
個人的に、歌舞伎役者さんはアスリートだな。と、思っています・・。

仁左衛門さんは最初、知盛を演じるにあたり、二代目尾上松緑さんと三代目實川延若さんの映像を見て、自分なりの型を作り上げました
銀平扮する知盛の揚幕からの登場。
大阪はラストシーンをにおわせるような、碇を担ぎながらでの登場ですが、東京はおしゃれに傘をさしての登場です。
仁左衛門さんは”カッコよくお客様を引き付けられるように”傘をさしながら登場する演出にしています。

アイヌ文様のアットゥシ風の羽織衣装を着て、颯爽と登場する仁左衛門さん、かっこよかったな~・・・(*´ω`*)
平日に見に行ったのですが、割れんばかりの拍手でした。
余談ですが、北海道出身の私としては、伝統文化である歌舞伎の衣装に、アイヌ文様のものが取り入れられていることが嬉しいっ!
このアットゥシ風の着物は、当時、水運業に携わる人たちのファッションだったそうです。
その時代の流行ファッションを衣装として取り入れるところも歌舞伎のおもしろさの一つですね☆

壮絶で美しい最期。

義経への復讐叶わず、再び戦に敗れることになった知盛。昨日の敵は今日の友のごとく、それまでかくまっていた安徳天皇を義経に託し、自ら入水し堕ちていく・・・。
文字だけで見ると、何と荒唐無稽なんだ。と思いますが(笑)そんな理屈なんかどうでもいい!と思わせるのが歌舞伎の魅力のひとつですし、まさにその魅力が今回もぎゅぎゅぎゅっと詰まっています。

歌舞伎をみるときは基本的に、1階席以外ではオペラグラス常備の私。
今回は3階席だったので、いつもどおりオペラグラスを使いながら観劇していました。いつもと違ったことが、オペラグラスを放せなかった・・・。
とくに後半は、オペラグラスで仁左衛門さんを終始、追っかける、追っかける。。。まるで、1人野鳥の会でした(/ω\)笑

オペラグラスを手放せなかった理由。その一つが、仁左衛門さんの表情
復讐の鬼と化したかのような鬼気迫った表情。敵陣にやられてしまい白装束は血まみれ状態で、息も絶え絶え。喉の渇きを少しでも潤すために、自分の体に刺さった矢の血を舐める瀕死の表情。
一番印象的なのが、安徳天皇から「仇に思うなこれ知盛」と言われた場面。
それまで背負ってきた様々な想いがふっと降りたかのような、柔らかくもどこか悲しげな表情にぐっと来て、思わず涙が溢れました。

そこから、ふらふらの状態で崖を登り、大きな碇を掲げて自ら入水する。
この一連のシーンの、知盛の一挙手一投足を見逃せない!!!
そんな気持ちで、息を飲みながら、涙を流しながらオペラグラス越しに知盛の最期を見届けました・・・(´;ω;`)ウッ…
まさにその姿は、儚くも美しく散っていく桜のよう。
また知盛という1人の人間が命を絶つ場面に実際に立ち会ってしまったかのような気持ちにもなり、幕が下りたあとしばらく呆然としてしまいました。

人間国宝の片岡仁左衛門さんが、一世一代にて勤める平知盛。
これを見て歌舞伎の魅力にハマらないわけがないっ!!!!
歌舞伎を見たことがない方、ぜひ、今すぐ歌舞伎座へ!!!!


来月は、京都南座へ三月花形歌舞伎を見に行く予定です☆
若手役者さんが、新歌舞伎の名作「番町皿屋敷」を演じられます。
歌舞伎では初めて見る作品なので、とても楽しみです(^^♪

渡邉唯でした~☆

Instagram
https://www.instagram.com/watanabeyui.0108/

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