「使える人間に」なんてもう自分に言わせないために、ボロを出していくフェーズなんだ。
朝起きて珈琲用のお湯を沸かしながら、無意識に冷蔵庫を開けて日本酒の瓶に手が伸びている自分に気づく。おぉ、疲れているなと思った。
2ヵ月間、私はきっと行政の仕事に慣れることに必死だったんだろう。
隠しきれていたかどうかは別として、自分の粗を隠すことに必死だったように思う。
早く仲間と認められなくては。
使える人間だと思ってもらわないと。
そう強く思っていたんだきっと。
私よ。「使える人間」て何だよ。
これが「欲しがりません、好感度」の会を主催してきた人間のやることか。
これでは「根こそぎ頂戴いたしたく、好感度」の会ジャマイカ。
元気っちゃ元気だが、こんなくだらないギャグを堂々と書きたくなるほどには疲れている。
疲れているのを全部行政の仕事のせいにしたくなることもある。
行政の仕事の仕方のせいにしたくなることもある。
でも疲れているのは行政の仕事にじゃない。
行政の仕事の仕方にじゃない。
そもそも、
どれが行政の仕事でどれがそうじゃないとか、
これはまさに行政の仕事の仕方だとか、
まだ私は知らない。
これから先も、行政の仕事を分かったような気にだけはならないようにしたい。
きっと3年いても知ることは無いし、
もしも私が知った気になってしまったら、
そこからはスマートになることはあっても楽しくなることはないんだろう。
それでは、本を読んだり頭のよさそうなコメンテーターの言葉を聞いたりしただけで、世の中のことを知ったつもりになって斜に構えていたあの頃と変わらなくなってしまう。
今はアレだ。
同時期に入社したのに自分だけ結果が出ず、結果を出し始めている同期に焦り、自分が信じている上司が教えてくれた営業方法を疑い始めてアレコレ手を出したくなっていたあの頃だ。
信頼関係を0から築いて仕事をとりにいかなくてはいけなかった、個人事業主として駆け出しだったあの頃だ。
おじさんとコンビを組んで「ごめん、直ちゃんのツッコミのセンスってかなり謎」と悪そうに言われ持っていたマラカスと拳を強く握りしめた、あの頃だ。
違うか。
そうだ、必死な日々がきつくって楽しかったあの頃だ。
今、宝物となって自分を勇気づけてくれているあの日々だ。
幾度となく私を支えてくれた詩が、今また私に響く。
そうなんです、茨木先生。
何かのせいにすることが悪いことだとは思いませんが、
でも今の私が何かのせいにしてしまうのは、
わずかに光る尊厳の放棄になっちゃうんです。
僅かに光る尊厳を守るためには、ボロを出していかなくてはいけない。
あの時もあの時もあの時もそうしてきた。
そうだったよ。
情けないな、相当ダサいな、恥ずかしいな、申し訳ないな。
そんな誰にも見せたくない瞬間を見られてしまったときにこそ
仲間が増えてきた。
きれいなまま、そつなく、では何も起きない。
私は人の粗が好きだ。
人が恥をかく姿を見ることが好きだ。
まったく悪趣味なんだから、とか
まったく性格が悪いんだから、とか
苦笑いされるけれど(恥ずかしながら一切否定はできない!)、
本当に好きなのだ。
人の粗を見た時に一気にその人を好きになる。
自分も数え切れないほどの恥をかいてきた自覚があるからこそ、
人の恥をかく姿を見ると、
気まずそうに見なかったふりをするのではなく、
ねぇねぇ、私にもそういうことめちゃくちゃあるよ!ちょっと飲もうよ!
と声をかけたくなるし、心から笑い飛ばすことができる。
それが、普段そつなくこなす人ならばなおさらだ。
尊敬している人ならば、何なら安心するしさらに好きになる。
情けなさや、ダサさや、恥や、「いつも迷惑かけてごめんね」は
私の手持ちのカードの中でも強めのカードだったじゃないか。
そろそろ、ボロを出すフェーズなんだ。
もう出てるかもしれないけれど、今まで以上に。
そんなことを考えながら、うまく肌にのらないメイクにため息をついて甘めの珈琲を飲むことにした朝の時間。
「なんか私、疲れてない?」と夫に聞いたら、
「直ちゃんが疲れていなかったことはいまだかつてないよ。トイレに立っただけで疲れてるじゃん」と悪そうに返ってきた。
(トイレに立つと疲れるからって我慢して、膀胱炎になったこともあるね)
娘からは
「お母さん一昨日からつま先で歩き始めたからじゃない?」と返ってきた。
(ダイエットしようと思ってね)
息子からは
「お母さん昨日パソコンに向かっていっぱいしゃべってたからじゃない?」と返ってきた。
(1時間ほど友人とオンライン飲み会をしていたからね)
それに、昨晩家焼肉をした時に火災報知器がなったことも空腹の心身にこたえた。
私よ、疲れの原因はちょっと深く探らない方がよさそうだし、なかなかに元気そうだね…。
「ボロを出していくフェーズなんだ」
ちょっとかっこよさげにつぶやいて、恥をかく覚悟を決めた2か月目。
これ以上に!?とかはいったんおいておく。
とにかく、
「使える人間に」なんて、もう自分に言わせない。
帰ったらどうどうと熱燗を飲もう。
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