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脱プラ素材を生み出す海外サステナブルスタートアップ

2020年から始まったレジ袋有料化の取り組みですが、私個人の実感値としてもエコバックを使う人が増えてきたように思います。

レジ袋有料化が始まってから、「脱プラ」という言葉を新聞やWEBのニュースで目にする機会も増えてきましたが、その一方で、家の中を見渡せば本当にいろいろなものがプラスチックで作られていることに気づかされます。


軽くて丈夫で長持ちする素材として、我々の生活のあらゆるところで使われているプラスチックですが、日本はアメリカに次いで世界2位のプラスチック消費大国となっています。

日本は分別廃棄が広く普及しており、多くのプラスチックが資源ゴミとして廃棄され、再利用されてはいるものの、適切に分別されていなかったり、森や海など自然の中に廃棄されていたり(落ちていたり)するのを見かけることも多いです。

近年、プラスチック製品の無計画な利用と廃棄が原因となり、海や土壌に流出したマイクロプラスチックによる生態系や人体への悪影響が問題視されているのはご存知の方も多いと思います。


そのような状況を改善すべく、日本でも、我々quantumも深く関わらせていただいている「TBM」をはじめとした多くの企業が、脱プラスチック社会に向けた様々な取り組みを進めています。


生活を便利にするために生産され、使われてきたプラスチックが自然環境に悪影響を及ぼしている状況を踏まえ、今後我々はどのようにプラスチックと関わっていくべきなのか。

今回は、世界を見渡して私が気になった、我々の身の回りにあるプラスチック問題に取り組む三社をピックアップし、未来の事業のヒントを探っていきます。


1. paper water bottle, US

paper water bottleは2009年にスタートしたケンタッキー州のスタートアップです。

現在、毎年800億本のプラスチックボトルが世界中で生産されていますが、その8割は土壌に残り、それが分解されるのに実に800年もの時間がかかると言われています。

Paper Water bottleはその状況を変えるべく創業されたスタートアップで、飲料や、洗剤、シャンプーなど既存のプラスチックボトルの代替として利用できる、生分解性のボトルを提供しています。

もともとパッケージデザインのディレクターをしていた創業者が、自分の息子から「パパはゴミを生み出す仕事をしているの?」と言われたことから、自分の仕事を振り返り将来の世代に残すべき事業をやりたいと一念発起してスタートしました。

ボトルの構造を構成する竹や砂糖きびから作られたパルプと内容物を保護するための薄い生分解性のプラスチック保護層によって作られており、自然の中で分解されると堆肥としても使用することができます。

堆肥を生み出す過程で、二酸化炭素の数十倍の温室効果を持ち地球温暖化の一因とされているメタンガスが発生するのですが、一方でメタンガスは燃焼性が強く、発電エネルギーとして利用できることもわかっています。

Paper Water Bottleでは発生するメタンガスを適切に捕集することにも取り組んでおり、地域の電気を賄うクリーンエネルギー源としての活用も期待されています。

代替プラスチックボトルの開発がこうしてエネルギー問題への取り組みとつながっていくように、一つの課題解決が、別の課題解決の後押しになることもあります。



2. SULAPAC, Finland

SULAPACは2016年に二人のバイオマテリアルの女性研究者によって創業されたヘルシンキ発のスタートアップです。

こちらも大量廃棄されているプラスチック問題を解決するべく、木材メーカーの商品製造工程で発生するバイオポリマーや植物繊維を使用し、強度が高く、様々な形に加工ができるプラスチック代替素材を提供しています。

製品の持つ高級感のある質感との相性がよいことから、多くの化粧品メーカーに利用されており、シャネルからも事業パートナーとして投資を受けています。

また、プラスチック製品の製造プロセスで加工できる素材であるため、多くのメーカーは新たな製造ラインを構築することなく、既存のアセットを利用して環境に配慮した商品を製造することができます。

今後ヨーロッパでは、2023年までに生ゴミ等バイオ関連廃棄物の分別廃棄が義務化される予定となっています。ヨーロッパ全体でリサイクルプロセスが確立されていく中、SULAPACのような植物由来のパッケージはますます普及していくと考えられます。



3. UBQ Materials, Israel 

UBQ Materialsは2012年に創業されたテルアビブのスタートアップです。

生ゴミや資源ゴミ、プラスチックゴミなどの様々な生活ゴミを分解して、既存のプラスチック製品の原料となる熱可塑性の素材を開発・提供しています。

生活ゴミは今なお地球上のかなりの場所で、生ゴミからプラスチックまで分別されずに廃棄されていることから、適正な化学処理をおこなうことができず、多くが埋め立て処理をされ、大気中に大量のメタンガスを排出しています。

先ほども述べたようにエネルギー源としても期待できるメタンガスですが、世界中の広大な土地に埋め立てられた生活ゴミから発生する大量のメタンガスは捕集されぬまま大気中に放出されており、二酸化炭素以上に地球温暖化に深刻な影響を及ぼしています。

UBQ Materialsでは、現在埋め立てられている生活ゴミを原料としてプラスチックを再生するため、生活ゴミを削減しながら、温室効果ガスの削減も同時に達成しています。

この再生プラスチックはすでに様々なところで利用されていて、南アメリカのマクドナルドでは、UBQの素材を使って製造されたトレイで商品が提供されています。

もちろん、技術開発により新たな代替素材を開発する動きも非常に重要ですが、今すでに大量に存在しているプラスチックをどのように活かしていくかというUBQのアプローチは、他の分野の事業開発においても非常に参考になるところでしょう。



分解されにくいというメリットを素材に持たせるべく、人類が石油から生み出したプラスチックですが、その性質が今ではデメリットとなって環境に問題を及ぼしています。

今回紹介した3社は、環境への影響を抑えるために、生分解性をもつ素材や、再生素材を生み出すことで、分解できないプラスチックゴミを少しずつ減らしながら、我々の生活に必要な「強度があり加工しやすい素材」の開発を行っています。

問題を発生するものを単純に除外してしまうのではなく、我々が享受している利便性を確保しながらも、問題の原因を解消しようとする商品開発のアプローチは、他の事業にも活用できるところがあります。


次回も引き続き、私自身の事業開発の参考にしたい意図も含め、世界のSustainability Businessについてリサーチしていきたいと思います。

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