遺産になりそうでならない製本道具 その3-竹輪
指にはめて紙を折る道具「竹輪(たけわ)」
今回は遺産になりそうでならない道具「竹輪」を紹介します。
竹輪《たけわ》とか指輪と呼んでいる道具です。チクワではありません。念のため。
まさしく指にはめて使う竹製の道具です。今でも社内にいくつも残してあります。
写真の左は使い込んだもの。ちょっと割れてしまっていますね。右はまだ使っていない新品です。
使い込んだ方は、指になじんでいい具合に飴色に光っています。既に40年くらいは経っているのではと思います。
昔はカバーや帯の袖は竹輪で手折りしていた
機械のない頃は、この竹輪を使ってすべての書籍カバーや帯の袖折り加工を行っていました。
修業で働かせていただいた小石川の大手製本会社でも、当時はベテランの女性社員の方が専門で手折りしていたことを思い出します。
今では機械加工ができない紙折りに使います
今はどんな時に使うのかというと、渡邉製本では機械では加工ができない特殊な帯やカバーの袖、見返しなどを折るのに使っています。
写真では25mm幅の帯に竹輪で折り目をつけていくところ。こんなに細い帯は機械では折れませんので、この竹輪を使ってせっせと折っています。
竹輪で紙折り作業のショート動画もあります
30秒弱のショート動画です。
製本職人はマイ竹輪を持っている!?
昭和37年の製本テキストには中指にはめると記載されていますが、私の場合は、薬指にはめて使うのが一番なじみます。
素材が天然の竹ですので、太いのもあれば細いものもありますから、自分の指に合ったものが決まっていて、いわゆるマイ竹輪を机の中に保管しているんです。
出番は少なくてもまだまだ現役の道具・竹輪
他にも、B4ヨコ本用のカバーの折り返し作業にもこの道具を使いました。広げた状態で左右が1050ミリもある大物で、4000枚もあったんですけど、いや~、大変でしたよ。
この竹輪は、活躍の場がたまには出てきますので、細々と現役を続けてくれることでしょう。
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